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一期一会 第三部  作者: ヤルターフ
第三編 天馬行空
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テキサス席巻 6

「申し上げます。ヒューストンに欧州軍は皆無、市民は歓迎して我が軍を迎えると」

「そうか、ワトリックに伝えろ。全ての騎兵は先に行って、入城しろとな」

「はっ!」


 斥候が敬礼して飛んでいくと、入れ代わり通信兵がやって来た。


「マルロー参謀からの電文です」

「読み上げろ」

「はっ! 昨日、欧州軍はダラスを撤退、南下してウェーコーに向かった模様とのこと」

「わかった、マルローに打て。こちらもたった今ヒューストンに入城した、と」


 そう下知した後、馬上の人は天を仰ぎ見ては流れる雲を見つめていた。


 レウレト率いるテキサス軍はヒューストンに入城した。同時にダラスを陥落させ、アーリントン、フォートワースを手中に納めた。それが四月二十日のことだ。三月十六日に進攻を開始してから、一ヶ月と一週間も経っていない。レウレトはテキサーカナ、シュリーヴポート軍併せて十万をフォートワースに配置し、五万を残した。やはり消耗が激しかったために兵を休ませるのとオクラホマからの攻撃を警戒するためである。もちろん、監視所と砲台を配置して要塞化するのを忘れていない。電文を打ってマルローを司令官とし、その防備を任せた。彼の緻密は遺憾無く発揮されている。そうしてスラタニをヒューストンに呼び寄せて自軍に編入させた。将に卒たるは易く将に将たるは難し、いずれはワトリックとスラタニも将軍になるのだから、少しでも経験を積ませようと別々にしていたのだ。ワトリックには自身の振るう指揮を通して用兵や兵法を教え、スラタニにはマルローの客観して戦略を練る要諦を教えさせた。これが彼が二十二年間戦い続けることが出来た要因の一つになるだろう。


 四月二十三日、レウレト率いるテキサス軍三万五千はヒューストンを進発、一路カーヴィルに向かう。迎える欧州は二十万をウェーコーに、さらに十万をカーヴィルに置いた。ウェーコーには本陣があり、フォートワースからの進攻に備えてのものである。方やカーヴィルの十万はヒューストンを取り返さんとするものだ。


 数の上では倍以上と圧倒しているが、欧州軍の状況は逼迫ひっぱくしていた。兵站へいたんのほとんどをダラスに置いてきてしまったのである。というのはレウレトがボーモントを抜いてヒューストンに進軍するの報を知った欧州軍は態勢不利と判断して撤退を計った。ここまではよかったのだが斥候に兵站を調べさせていたマルローがその混乱に乗じて奪ってしまったのだ。テキサス首都オースティンにも余力は残していたが、とても三十万という大軍を支えきれるものではない。援軍を待とうにも間に合わないという状況だ。その上カーヴィルまで取られたらいよいよ詰んでしまう。それで両軍は衝突するのだが、ワトリックが一当てするだけで欧州十万は粉砕されてしまった。敗因は単純に兵糧不足によるものである。


 欧州軍に兵糧が無いのをレウレトは知っていた。加えて欧州の援軍が来るにも、オクラホマは兵を割いてまでの援軍を送るは出来ず、ニューメキシコからの援軍は高地を経由しての行軍に時間がかかる。それゆえヒューストンに三日滞在し、欧州軍の弱体化を計っていたのだ。彼にしてみればいかに十万と言えど弱り切った敵軍を倒すのは赤子の手を捻るより造作も無い。ただワトリックに一当てするだけに止めて、追撃はさせなかった。そして捕虜に停戦の意を認めた書簡を持たせ、特使として送った。その内容は降伏か犬死にかという峻烈なる文辞である。さらに返答期限は一日だけ待ってやるというものだ。そうして待ったのだが、うんともすんとも返事が来ない。苛立つワトリックをなだめつつレウレトはおかしいと思った。それでもう一度だけ捕虜に書簡を持たせて送った。果して帰ってきた捕虜からにわかには信じられない報告がされた。欧州軍を指揮していた上級将校等が夜半、大量の兵を残してニューメキシコに逃げ出してしまったのだ。指揮官を失った欧州軍は完全に沈黙、かくしてテキサスにおける戦いは米英の圧勝に終わった。

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