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一期一会 第三部  作者: ヤルターフ
第二編 前進!
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オーランドの武勲 4

 エンパイアステートから南下してフロリダを経由して西に大陸を横断するこの鉄道はテキサス共和国にまで及び、大量の兵站を運ぶことから重要な輸送手段となっている。作戦開始の六時間前、オーランドの北に位置するジャクソン・ビルに軍専用車両が到着し、いまや着々と準備が進められていた。


 高さ十二メートル、幅十メートル、全長五十五メートルの威容を誇るこの車両は全体を深緑色で擬装し、甲板上部の装甲は厚さ一メートルの鋼板が五枚重ねられていて、まさに堅固といった感がある。側面には銃眼が十ずつ開いており、それぞれ二十ミリ砲のガトリング銃が装備してある。さらに天井部には半径百十キロを射程圏内とする超長距離射撃を可能としたカノン砲が実装されている。この超弩級の列車砲はテキサス共和国を陥落させるべく米英軍が用意した切り札である。そしてこの列車砲の薄暗い指揮官室には一人の男が臨時司令官の号令を今や遅しと待っていた。


「状況は?」

「風も無く、明朝は晴れとの予報です。作戦に支障はないかと」

「よし、各自最終確認」

「電力安定してます」

「こちら機関室、問題ありません」

「薬室内圧異常無し!」

「台座固定されてます、問題ありません」


 状況報告を聞いている時、ふとマルローが洩らした。


「"ピースメーカー"とは、皮肉ものだな」


 一方、オーランドの戦況はどうなっていたか。米英軍がオーランドの街道を通過すると判断した敵軍は西にあるタンパ港に一千、オーランドを拠点として二千五百の兵で待ち構えている。ではレウレトはどこにいるのだろう。彼は二千ある兵を二つに分けた。驍勇無比ぎょうゆうむひのワトリック率いる一千をタンパ近郊に、レウレト率いる一千はタンパとオーランドを結ぶ街道の中間に伏兵の形で陣を取っている。そして日の出の二十分前になると兵卒達に彼自ら作戦内容を伝えていた。


「諸君、我々はいまオーランドとタンパを結ぶ街道の中間地点にいる。これより二十分後にはオーランドの北に火柱が上がるだろう。そして敵軍はこの街道を南下してタンパ港に合流する可能性が高い。我々はこれを追撃する形でもって叩く。なにか質問は?」


 一人の兵卒が恐る恐る質問した。


「もし、来なかったら?」

「その場合は簡単だ、こちらはそのままタンパに向かい、これを叩く。そのあとワトリック隊と合流して敵を迎撃する。他に?」


 そう彼が兵卒達を睥睨へいげいすると、やにわに音声震わせてげきを飛ばした。


「兵士よ! この一戦は単にオーランドを救うにあらず。米英の、ひいては虐げられたる民衆を救う闘いである。もし我々が敗れれば、たちまちにして米英は瓦解し、夢は水泡に帰すだろう。一切全ては我々の働きにある。諸君、奮迅すべし、用意あれ!」


 レウレトが獅子吼するや、兵達は一斉にサーベルを抜き放ち、頭上に掲げてときを上げた。


 千剣月光を受けて銀波となる。満天の星、燦として彼らの頭上に輝かん。


 兵達はめいめいそれぞれの部隊に分かれ、所定の位置に着いた。


 街道を挟んでタンパを左手にした位置にスラタニ率いる歩兵と騎兵が、オーランドを右手にした位置に砲兵とレウレト麾下きか精兵二百が草木に埋もれている。一陣の風が舞い降りて健児らの髪を揺らしていく。辺りはただ寂として音の発つる物はなし。そうしてとうとう空が白み焼け、日が昇り始めた。やおらにレウレトが通信兵の傍に寄って受話器を取る。


「はい」

「マルローか、準備は出来たか?」

「問題ありません」

「わかった、作戦開始だ」


 そう受話器を置くとレウレトは両腕を組んで佇立していた。

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