オーランドの武勲 3
そんな矢先のことである。
レウレトの駐屯するオーランドにて、米英の独立をよしとしない民兵組織が蜂起するという、のっぴきならない事件が起こった。オーランドは本国イギリスを結ぶ交通と交易が盛んな要衝で、しかも兵站や兵器を置く最重要拠点の一つである。それが今や雲霞の立ち上るがごとく三千五百もの反乱軍で溢れ、街と港はあっという間に占拠されてしまった。さらには欧州を手引きして艦隊を港に受け入れようと画策している情報が飛び込んできた。これには陸軍省並びに大本営を統括する元帥府、指揮系統を管轄する参謀省は肝を冷やした。なにせいきなり喉元に銃剣を突き付けられたようなものだからだ。加えて逼迫した状況にあるのは、オーランドに駐屯する一個連隊を指揮する司令官並びに将官が休暇のために不在だ。もはや米英の命運は風前の灯火である。いかにすべき。
この時、一人の若獅子が立ち上がるや轟然と咆哮した。
――好機到来! 我が功業を達するに今を於いて他になし。
かくしてこのオーランドに風雲児レウレトの活躍する舞台が出現した。
まず、レウレトは早急に陸軍省に反乱分子討伐の指揮を振るう旨を志願した。果して彼を臨時司令官とする通達が届くと、それを受けて部隊長を召集して作戦会議を開いたのち、敵軍の兵装及び構成と総数を調べさせ、自身は戦場と想定した現地を視察した。そうしていまレウレトは司令室にて斥候の報告を受けつつ広げた地図に紅黄白紫のピンを刺してはうなずいている。
「おい、新しい参謀を呼んでこい」
レウレトに呼ばれて長身痩躯に褐色の髪を全て後ろに流した男が司令室に入ってきた。
「おまえがマルローか?」
「はい」
「司令官を勤めるレウレトだ、よろしく頼む」
それで二人は握手を交わすのだが、たまたまフロリダで休暇を取っていた、参謀省出仕のマルローが得た第一印象はあまり良いものではなかった。なぜならマルローはレウレトより六つも年上で、階級も二つ上の中佐で、さらにマルローは平民で、レウレトは貴族だからだ。このチビで生意気なボンボンがどんな指揮を執るのか、そんなふうにマルローが冷然と見下ろしている。そうしてこの小人島の高い鼻っ柱をどうやってへし折ってやろうかと考えている。
机の上に広げてある地図を見ながらレウレトが口を開いた。
「この戦、おまえはどう思う?」
言われてマルローが地図を覗いては、わざとらしく当たり前の回答をする。
「短期決戦が望ましいでしょうな」
「ふむ……、ピースメーカーの進捗はどうだ?」
「いましがたエンパイアステートを出発してこちらに向かっているところです。しかし、あれはようやく実用段階に入ったばかりで……」
「そのテストをしてやろうというのだ、問題あるまい。それに海から来るネズミ共の威嚇にもなる。おまえにはピースメーカーの指揮を任せる、ぬかるなよ」
「はい」
「よし、市民及び非戦闘員に避難勧告と厳戒令を敷け。現時点に於いて第一種戦闘態勢を発令する。日の出と共に作戦開始だ、全兵に伝えろ」
こういったやり取りをして、マルローはすっかりレウレトへの偏見を改めてしまった。彼が着いていた上官の誰よりも即決即断するレウレトを見て、ルクレールの金看板は伊達ではないと舌を巻いてしまったのだ。そのレウレトが言うのを聞いていると、いかに敵が数で勝っていようとも倒すのが容易に思えてくる。今まで面子を気にして責任転嫁と派閥争いばかりしている軍内部に辟易としていた彼にしていかにレウレトの存在が新鮮であったか。直ちにマルローは列車砲の配置されている現場へと急行した。




