過去の事件
「さて……と。こいつらは何だったんだろうな」
そう言いながら俺はヤクザどもの懐を漁る。
財布の中にあった免許証を見て名前を覚えたあと、廃墟の中に転がっていた縄や鎖等で全員を縛り付ける。
そして縛ったうちの一番偉そうな奴の頬を叩いて起こす。
「で、お前らどこの組の誰さん達なんだ? ちゃっちゃと教えろ」
「狩罪さん! 脅迫なんてしちゃ駄目ですよ!」
ヤクザ共から情報を聞き出そうとしていると、澄音がいきなり俺に言ってくる。
「……はあ? こいつらは俺たちをひどい目に合わせた奴等だぜ? それにこいつらは俺達が巻き込まれてる事件に間違いなく関わってる」
「どこにそんな証拠があるんですか! 私達に関係ないかもしれないじゃないですか!」
澄音は俺の言葉を聞き分けることさえせずに言う。
まあ、知らないのも無理が無いような情報だとは思うんだがな。
「本来ならこの県にはヤクザなんていない」
「……え?」
「まあ、唯のパチンコ屋だけで満足してるような所はともかく、薬扱ってんだったらなおさらこの近くに組なんて構えられない」
「な、何でですか?」
「俺と他何人かで全部潰したからだ」
そう俺と『Mars 』という何でも屋が組んでヤクザを全部ムショ行きにしてやった事がある。
事の発端は俺がいつも通りに冤罪をかけられて原因を探っていた事から始まる。
俺はその時は誘拐の疑いをかけられていて逃げ回ってたらあいつ等『Mars』の奴らと出会ったのだ。
その結果犯人を捕まえて冤罪を晴らそうとしていた俺と、仲間の復讐を果たそうとしていた『Mars』の奴らと協力して俺は冤罪を晴らした。
そしてそのヤクザ共はかなり大きい組織で、傘下をいくつも抱えていた上に支配していた地域も馬鹿でかかった。
そのせいで後釜に座ろうとする別のヤクザも倒していたらいつの間にかこの県に関わってくるようなヤクザは居なくなり今に至るのだ。
……あの時は凄かった。
まさか冤罪で連れていかれまくって怨んでた警察なんかと共闘したんだぜ? この俺が。
まあ、それなりにでかい戦いだったし、それからはあまり大きな冤罪をかけられることは少なくなった。
大抵の元凶が消えたんだからな。
とりあえずこの事件のあらましを澄音に伝えると、一応納得したようで口出しはしてこなくなった。
いないはずのヤクザが麻薬を交換していて、丁度よく俺に冤罪がかかっているなんて事はほとんど無いだろう。
ちなみにこの話を聞いていたヤクザは顔を真っ青にして震えている。
おそらく俺や『Mars』の奴らには手を出すなとでも言われていたんだろう。
「そんで? もう一度聞くぞ? お前らはどこの誰なんだ?」