七変化
大分止まってましたが更新再開!
あっ、ちなみに『コレでも俺はヒーロー目指してます。』の世界と同じ世界なんで、もしかしたらあっちのキャラも出るかもしれません!
まあ、雪で電車止まってるので時間があっただけですが、コレからも少しづつ更新できたら良いなと思います!
「おい。お前名前は?」
俺はうなだれている女に話しかける。
しかし女は膝をついているだけで反応がない。
内心舌打ちしたい状況だが、女の状況を聞かなきゃいけない。
ここまでうなだれているということはこの女は俺に濡れ衣被せやがった犯人でもないだろうし、何か情報を持っているかもしれない。
そう思い今度は肩を叩いて話しかける。
「おい。お前名前は?」
「はい?」
「だから名前だよ」
「え……あっ、はい。澄音 聖歌です」
「やっぱりか。俺は刈罪 優駿。お前と一緒に人殺したことんなってるやつだよ」
これが澄音 聖歌とのファーストコンタクトだった。
∮∮∮
俺は、とりあえず澄音を人目につかないところにつれていく。
澄音は俺を怪しんでいたが、俺が冤罪で追いかけられていることを言ったら話だけは聞いてくれるようだ。
だからとりあえず近所の公園に行って話し合うことにした。
この公園は駅に近いから人気はそれなりにあるが、大きい公園なので奥の方に行けば人は来にくい。
ここなら話しててもおかしいと思われにくく、何かあった時逃げやすい。
「んで、今の状況どうなってるかわかるか?」
「えーっと。私たちが二人とも冤罪で警察に追いかけられてるということはわかりましたけど……」
「そうだな。んで、俺たちは警察に捕まったら冤罪なんか証明する暇もなくつかまっちまうってことは理解しているか?」
澄音は体を一度強張らせる。
一般的な正義である警察が冤罪の証明もさせてくれない。つまり自分たちの都合で犯人をでっち上げるということだ。
おそらくそんな事は予想出来なかったのだろう。
いや、出来ていたとしても信じたく無かったのだろう。
俺は前に似たような事をされたので、体制が出来ている。もし体験していなかったら驚愕で動けなかっただろう。
「俺は今まで何回も冤罪にかけられてんだ。そんな俺が言うんだ。間違いねぇよ」
「そう……何ですか……」
声も絶え絶えに返すが、もう頭なんて回って無さそうだ。
これ以上何かを言って人を落ち込ませる必要は無い。
「とりあえずここから離れるぞ。ここは人目につきにくいとはいえ、夜には冷える。俺はともかくお前は風邪引くぞ」
「……はい。どこに行くんですか?」
「ああ、町外れの廃墟にな。あそこなら誰も近寄らないからな」
「それはいいんですが……。あの……」
澄音が不安そうに聞いてくる。
おそらく俺がこいつを襲うのか不安なのだろう。
「安心しろ。そんなことで俺は能力を失いたくない」
「えっ? 能力者何ですか?」
いきなり声を張り上げて聞いてくる。
まあ、その気持ちはわかる。能力者になる条件はトラウマだ。
つまり心に傷を負ったものがなる。
そして心に傷を負ったものが犯罪に走るケースなんて腐るほどある。
つまり能力なんてもんは復讐のためか再発を防ぐためにしか使えない。
そして人間なんてもんは恨んでいるやつがいて、力があるなら大抵のやつは復讐に走る。
しかもそれだけならまだしも力を持ったからといって、何の関係もない人間に対して力を振るうような馬鹿も多いい。
だから能力者は危険なものとして扱われているし、俺もそれは間違っていないと思う。
中には『MARS 』なんていう、人助けのために能力を使ってる集団もいるがそんなのは極々少数。
全体の一割にも届かないだろう。
その他の割合としては六割が復讐のために使い、二割が再発を防ぐために使い、残り一割が自分の娯楽――つまり犯罪なんかも含まれるようなことに使っている。まあ、娯楽の中には別に無害なのも居るけどな。
でもまあ、基本はろくなもんじゃないんだ。
引かれるのも当たり前だろう。
しかし澄音は俺が能力者だと知った瞬間は驚いていたものの次の瞬間には安心したように肩を落とした。
「実は、私も能力者なんですよ。あ、でも犯罪なんて一度もしてないですから!」
澄音は一気に緊張でも溶けたのか元気になり始める。
さっきの絶望しきった顔からのほっとした顔、さらにその次に自分の発言に驚いたように慌てるような顔へと七変化をしだす。
俺は一瞬事態が飲み込めずポカンとするが、真っ白な頭のなかになぜか笑いが込み上げて来て頭が動き出す。
ここしばらく動かしていなかった表情筋も緩んでいるのがわかる。
こりゃ明日には顔面筋肉痛かなぁと思っていると、澄音が何で笑うんですか! と怒るがそれすら今は面白い。
そんな時間がしばらく過ぎた。