遭遇と逃走
正直いうとこういう事態には慣れている。
といっても俺が犯罪を犯し慣れてるとかじゃない。
冤罪で追いかけられる事が多々あるのだ。
例えば、誰かの物がなくなった。なんて時には間違いなく俺が疑われる。
ほら、給食代が無くなった時とかにいつも疑われてる奴が居るのを見たことないか?
そういうやつのハイエンドが俺だ。
誰かの家に強盗が入ったと言われれば俺で、誰かが自殺すれば俺のせいで、誰かが行方不明となれば俺のせい、なんてことを言われてきた。
その関係で俺は警察に追われることには慣れている。
……こんなことに慣れたいなんて思ったこともないのにな。
まあ、唯一の救いは今までで逃げ続けて入れば真犯人が見つかってきたと言うことだ。
だから今回も逃げているのだが、いつもとは毛色が違う。
――俺が真犯人だと告げるニュースをテレビが繰り返すように言っているからだ。
だから警察は俺を血眼になって探している。
今までで一番長く逃げ続けた時でも最長3日だ。
しかし今回はそれを大きく上回る三週間だ。
この世界が十五年前に変わってなければとうに捕まっている。
十五年前にはあることが起こっている。
心的外傷者――つまりトラウマを持つ人間に異能の力が目覚めるようになったのだ。
それが発表されたのはつい最近だが、能力に目覚めた人間には各国の政府から知らされていたことだ。
そして俺は冤罪で捕まるとことをトラウマとした能力に目覚めているのだ。
今はなんとか耐えられるようになったが、小さい頃は大変だった。
冤罪で親に捨てられ、学校に行けば嘲られ、外に出れば警察に職質だ。
何度も何度も一人で泣いていた。
まあ、そんなだから俺は能力を持っている。
俺の能力は一つの大まかな原則を元にいくつかの能力が使える。
その大まかな原則は『冤罪対抗』だ。
これは冤罪に関わり、状況を打破したいとき限定で使える能力だ。
能力の効果は冤罪が関わる事に限りいくつかあるが、今使用しているのは逃げ足の強化だ。
これのおかげで警察という国家権力から逃げきれているのだ。
ちなみに能力が複数ある理由は冤罪に関わるトラウマがいくつもあるからだ。
この逃げ足の場合は、昔逃げ切れなかった時に酷い尋問を受けたせいだ。
その時まだ小学生だぞ?
そんときに警官から怒鳴られたり、殴られたり、揚げ句の果てには冤罪の事を謝りもしないってどういうことだよ。
その時以来俺は警官なんて信用せず逃げる事にしている。
この逃げ足の能力の主な効果は、単純に足が早くなるのと、疲れない事、腹も減らないし、眠くもならない。
走って逃げきれないなら透明化も出来るし、自分の音を消すことも出来る。
非常に使い勝手がいいものだ。
(もう追ってきてないか。うまく撒けたみたいだな)
俺は一人呟くが、それも能力が消してくれる。
もう、後ろを振り返っても警察は居ないし作戦会議にでもしに行ったのだろう。
そんじゃあ俺も一休みしますか。
俺は人通りの少ないところから、比較的栄えている繁華街まで出てきてテレビがある近くに行く。
このときには透明化も解いてある。
こんだけ人がいるなかでぽっかりと人がいないところがあったらおかしいし、ここなら人が多すぎて見つかんないだろうからな。
いわゆる木の葉を隠すのは森の中。人を隠すのは人の中だからな。
俺は繁華街の中のビルにテレビがくっついている場所まできた。
(とりあえず情報収集一択だな。もう一つの能力は少なくともどんな事件かだけ知らなければ発動もできないからなぁ)
『○月○日。午後四時ごろ五人の少年をかばい、一人の少年がお亡くなりになりました。
加害者は、会社で三日間連続で働かされて疲れていたと供述しています。続きましては――』
俺はビルに張り付いているテレビを見やすいところまで行くと虐められていた少年が、虐めていた少年たちをかばって死んだというニュースが流れた。
テレビの中の被害者を悼みつつ、俺の巻き込まれている事件の情報が流れるのを待っていると、三十分ほどでそのニュースが流れ始めた。
『三週間の間逃走を続けている刈罪 優駿容疑者は、いまだ逃走を続けております。なお本日判明いたしました情報によりますと、刈罪容疑者には協力者の女性がいる可能性が示唆されております。協力者と思われる女性は任意同行を拒否して逃走をしたもようです。協力者と思われる澄音 聖歌容疑者も罪刈容疑者と同じく逃走を続けており、自宅にも帰宅していないようです。容疑者を見かけた方は警察に連絡をお願いします』
協力者?
誰だよ澄音って。
聞いたことすらねぇよ。
三週間たっても事件の真相はつかめず、か。
気分転換に飯でも買いに行くか、と思い振り向くと嫌に落ち込んでる女がいる。
そしてギリギリのところで保っていた精神が耐えきれなくなったのか、orzのポーズになる。
そして一言。
「○○○○○○」
俺は耳を疑うが、もし俺の聞き間違いでなければこういっていた。
『私が容疑者?』