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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
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第79話

[こ、これ……]


[こんなの……本当に……?]


[……]


燼天討伐戦は、災厄の終わりではなかった。

むしろ、それは――

十年に及ぶ戦争の中でさえ、

最も凄惨な戦いですらなかった。


配信画面のコメントは、突然少なくなった。


あまりにも残酷な映像に、

人は本能的に目を背けたくなる。


逃げたい。

これ以上見たくない。


そう思ってしまうほどの光景だった。


「逃げたいって思ってるんだろ?」


白夜は空を仰ぎ、大きくため息をついた。


「俺も同じだ。俺だって、この映像を見たとき……もう途中で耐えられなくなった」


そして声を強める。


「でもな――これが、これから俺たちの身に起こる現実なんだ!」


「俺は、直視することすらできなかった。

だけど……それを実際に体験して、全部背負った人間がいる!」


「俺は……」


言葉が詰まる。


だが白夜はすぐに息を整え、続けた。


「俺には、皆の代わりに何かを決める資格はない」


「だけど一つだけ、忠告しておきたい」


「今見ている映像は――まだ前菜にすぎない」


「この先の映像は……見た人の中には、もっと強い生理的な拒絶反応が出るかもしれない」


「耐えられない人は、いつでも配信を閉じていい。誰も責めない」


そして静かに言う。


「ただ、これだけは覚えておいてほしい」


「今この瞬間、あなたにはまだ――逃げる権利がある」


「嫌悪を感じる自由もある」


「……映像の中の骸骨になる前の、今ならな」


 


[SEEKER融合進行度:100%]


 


その日。


本当の戦争が、始まった。


それは――


人類と魔物の戦いではない。


正義と悪の戦争でもない。


生存資源。

領土。

そして、種族が生き残る資格。


それらを巡る、

純粋な生存競争だった。


この戦争は、十年続いた。


その間――


地球上の誰一人として、

無関係でいられる者はいなかった。


 


[緊急速報!旧インド地域で大規模な流血衝突が発生!

死者はすでに五万人を突破。その半数は老人と子供!]


 


映像には――


瓦礫の中に立ち尽くす子供の姿が映っていた。


その腕の中には、


血にまみれた、

切断された腕が抱えられていた。


 


[緊急速報!旧美洲地域で“地球人狩り”開始!

王が地球人の頭蓋骨を積み上げ、百メートル級の骸骨の山を建造!

攻略者は直ちに当該地域から離脱せよ!]


 


百メートルの骸骨の山が、

太陽を覆い隠していた。


 


[通報:余火攻略チーム、SEEKER融合事件の最終原因を確認]


 


[緊急速報:世界規模の大飢饉発生。

人類の30%以上が日常の栄養摂取を満たせず]


 


[緊急速報:世界各地で人肉食事件が多発。

各フォーラムで“人類料理ガイド”が流行]


 


[緊急速報:アルセイン帝国のネクロマンサーが

地球人専用の致死性疫病を開発。

現在、旧東京地区で感染拡大中]


 


[通報:余火攻略チーム、災厄の源の情報を公開。

全人類に攻略参加を呼びかけ]


 


[通報:今週、七チームが災厄の源攻略に参加――全滅。

“第一魔法使い”羅星(元中国攻略者)、

“第一戦士”ランスロット(元英国攻略者)戦死。


長年人類を支援していた異世界住民“エギル”も戦死]


 


[緊急速報:疫病感染者数、幾何級数的に増加している。

世界各地で巨大埋葬地の建設開始]


 


[通報――]


 


そして――


それからの数年間。


こうした通報は、

ほぼ毎日のように流れ続けた。


 


果ての見えない巨大な穴。


そこには、


腐敗した死体が、

ぎっしりと詰め込まれていた。


すでに死んでいる者。

死を待っている者。


それが――


十年後、

地球人の七割が辿る

最後の場所だった。


 


[通報:今週、16チームが攻略参加。

死者80名。

一隊が第二フェーズ到達。

攻略映像と情報は余火公式サイトに公開]


 


[通報:今週、7チーム参加。

死者35名。

新情報なし]


 


[緊急速報:〈新・夜明〉ギルドと〈復讐者〉ギルド、

原住民都市を襲撃。


都市を占領し、72万市民を皆殺し。


報復として、地球人ギルド拠点に

魔法爆撃が開始]


 


[通報:各ギルドは防衛戦に追われ、

災厄の源攻略は進展なし]


 


[……]


 


もう、

誰もが麻痺していた。


最初は恐怖だった。


吐き気を伴う生理的不快感だった。


しかし――


あまりにも多くの残酷な情報が、

あまりにも密集して流れ続けた結果、


観衆の心に残った感情は、

ただ一つ。


 


麻痺。


 


血流の音が、

頭の奥で低く唸り続ける。


これは、


人類が圧倒的な恐怖を前にしたとき、

本能的に起こる反応だった。


対策を考えるのではない。


現実を――


否定する。


 


もし。


もし本当に、


これが人類の未来なのだとしたら。


 


今の努力に

何の意味がある?


 


生きる意味とは何だ?


 


ただ、

終わりのない苦痛を


味わうためだけに、


生き続けるのか?


 


[通報:人肉配信が新たな人気産業に。

映像には、母親が生まれたばかりの赤子を食べる姿]


 


[今週の自殺者数3644人。

遺体はすべて資源として再利用]


 


[……]


 


「……」


 


[ありえない……]


[こんなの嘘だ……!]


[人類は何千年も文明を築いてきたんだぞ!

こんな簡単に崩壊するはずがない……!]


[いやだ……食べられるなんて……いやだ……]


[いやだ……う……いやだ……!]


[この詐欺師が!]


[信じない!信じないぞ!!]


 


崩壊していた。


画面の光景は、


人の精神を完全に破壊するのに

十分すぎるものだった。


生きる意味さえ、

奪い去るほどに。


 


だが――


白夜は笑った。


 


声が、


急に軽くなる。


 


「そうだな。俺も信じてない」


 


「でも安心しろ!」


 


「はははは――

俺、白夜はな!


ただ不安をばら撒くだけの

クソ配信者じゃないんだよ!」


 


「この配信のタイトル、

みんな覚えてるか?」


 


「映画鑑賞は、ただの前座だ」


 


「今日の本番は――」


 


「攻略生配信だ!!」


 


次の瞬間。


画面が切り替わった。


 


地獄の映像は、

跡形もなく消えた。


 


視聴者に

考える時間すら与えない。


 


次の瞬間、


世界の向こう側から、


巨大な爆発音が轟いた。


 


その戦闘音は、


視聴者を――


乱暴に現実へ引き戻す。


 


恐怖から、


無理やり引き剥がすように。


 


「召喚されたエリート魔物は任せた」


 


「了解」


 


短い会話。


だが、


その呼吸は、

何度も共に戦った者のそれだった。


 


二つの影が、

交差する。


 


小さな背中が、


巨大な歪んだ神像の前に立つ。


 


それは、


あの十年の絶望の記録の中で、


何度も見た光景だった。


 


動かぬ絶望。


 


絶対に倒せない敵。


 


それでも――


 


彼女のマントが、

炎の中で翻る。


 


弓が引き絞られる。


 


その矢は、


まるで――


十年の時を貫くかのようだった。


 


「SEEKER最終戦!」


 


「災厄の源攻略戦!」


 


「放送――」


 


「開始!!」

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― 新着の感想 ―
真実だろうが拒絶するだろう悍ましさだな… 資源を最強のプレイヤーが独占し続けた理由と意味を見せる時か、楽しみだな
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