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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
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第74話

燼天のブレスが、地上から天へと噴き上がる。


それはまるで――激怒した火山。

惑星そのものの怒りをぶつけられているかのようだった。


あらゆる生命を灰へと変える灼熱が、正面から押し寄せてくる!



「……あれは」


黒樹迷界の外。


集まっていた攻略者たちが一斉に足を止め、空を見上げた。


恐怖に目を見開きながら、その光景を見つめる。


「これが……燼天の力なのか?!」


冗談だろ!?


こんな力、何人突っ込んでも灰になるだけじゃないか!


俺たちは――一体、何と戦おうとしてるんだ!?


もしもう少し早く来ていたら。


あの竜のブレスは、今頃自分たちの頭上に降り注いでいたかもしれない。


そう思った瞬間――


冒険者の半数が、思わず後ずさった。


「……それより」


「いったい誰が燼天と戦ってるんだ!? あんな化け物と……!」


そのとき。


空が、ふいに暗くなった。


星々の光が天から降り注ぎ、やがてそれは――


星光で編まれた巨大な樹へと収束していく。


参天に届くほどの星樹。


そしてその梢には、いつの間にか一つの影が立っていた。


肉眼ではほとんど見えないほどの存在。


だがその影は、静かに弓を引いている。


無数の星の光を束ねて作られた巨大な弦を。


まるで――


天地そのものを弓として引き絞るかのように。


満天の星々が、そのまま矢となって燼天を狙う。


無数の光の糸が、ただ一点へと収束する。


ジィィ――ッ!


弦が、放たれた。



一粒の星が、地上へと落ちてくる。


淡い星光が、燼天の吐き出す灼熱へと突き進む。


瞬間。


その光は烈火に飲み込まれた。


だが――


燼天の表情に勝利の色はない。


それどころか。


竜だけが理解していた。


自分のブレスを貫きながら。


圧倒的な存在感を放つ何かが、確実にこちらへ迫っていることを。


どれだけ火力を上げても。


それは、ほんのわずかも止まらない。


「……ありえん」


「吼ォォォォ――!!」


「消えろォォォォ!!」


炎が空を真紅に染め上げる。


燼天は喉の奥から火炎を吐き続けた。


まるで世界そのものを焼き尽くそうとするかのように!


その光景は百里の彼方からでも見えた。


天を貫く竜のブレス。


燃え上がる空は、まるで巨大な穴が開いたかのようだった。


――だが。


次の瞬間。


ほんの一瞬で。


すべての炎が、ぴたりと止まった。


「……汝」


燼天は口を開けたまま。


竜息は完全に消えている。


呆然と、空を見上げた。


「……まさか……」


小さな孔。


それが燼天の上顎から後頭部まで、一直線に貫いていた。


そこに血はない。


あるのは――


宇宙のような虚無だけ。


「……時……」


「……」


轟音。


燼天の巨大な身体が地面へと崩れ落ちた。


やがてその竜体は光へと変わり、富士山の深部へと吸い込まれていく。


震えていた大地も。


荒れ狂っていた溶岩も。


すべてが一瞬で静まり返った。


残ったのは、風の音だけ。


《世界公告:……燼天討伐成功……初回討伐報酬……》


私は無造作に通知ウィンドウを閉じる。


燼天のドロップした宝箱を、そのままアイテム欄へ収納した。


この一年で、私はあまりにも多くのボスを倒してきた。


燼天は――ただ、少し強かっただけの敵。


討伐成功そのものに、もはや喜びはない。


ただ。


目標に、また一歩近づいただけ。


私は周囲を見渡す。


暗闇の中。


いくつもの目が、ぎらりと光った。


貪欲な視線。


さっきの血族の刺客も、その中にいる。


動かないのは、躊躇しているからじゃない。


燼天を瞬殺したあの威圧。


それに完全に怯えきっているのだ。


私は必死に表情を押し殺す。


体内の毒。


MPの枯渇。


すべての疲労を、魂の奥へ押し込める。


「……消えろ」


絶対に。


弱った姿を見せてはいけない。


森で弱みを見せた獣は――


すぐに食い殺される。


「……お前」


私は血族の刺客を指さす。


「来い」


「わ、私……ですか?」


彼女は泣き出しそうな顔をしていた。


「ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい! もう二度としません! 暗殺なんてしません!」


必死に謝り続ける。


完全に怯えきっていた。


脚は震え。


その場に崩れ落ちている。


逃げることすらできない。


「殺さない」


私は彼女の前に立つ。


「ただし――これを飲め」


手首を切り裂く。


血が、泉のように溢れ出した。


私は杯にそれを受ける。


満ちた血を、彼女の口元へ差し出す。


「飲め」


「……」


理由は分からない。


それでも彼女は、震えながら一気に飲み干した。


私は天秤の瞳で状態を確認する。


異常なし。


むしろ――


《満腹》バフ。


HPが継続回復している。


「……暗夜血族」


「本当に吸血制限はないの?」


「ありません! 本当にありません! もし嘘だったら雷に打たれて死んでもいいです!」


――轟!!


次の瞬間。


天から雷が落ちた。


血族の刺客は一瞬で灰となる。


私はゆっくり顔を上げた。


雷が落ちてきた空を見つめる。


そこに立っていたのは。


人喰燈里。

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