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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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第65話

「しっかり掴まって……! 道具にロックされた!」


背後から、ロケットのような噴射音が響く。


振り向いた瞬間、巨大な火球が後方の船から放たれ、私たちの船尾へ一直線に迫ってきた。


防御系アイテムの効果時間は、すでに切れている。

この状況での急旋回は不可能。


――受けるしかない。


轟。


火球が炸裂し、衝撃波が船体を直撃。

船はその場で激しく回転した。


千夏は必死に大太鼓へしがみつき、

私と燈里は船縁を死に物狂いで掴む。


かろうじて海へ投げ出されるのは免れたが――


推進力は完全に断ち切られた。

再加速には時間がかかる。


しかも。


九隻もの船が、露骨な攻撃意思を隠そうともせず、こちらへ急接近している。


「まずい! クレイジーフォックス選手が大ピンチだ!」


実況席の白夜の声が一気に緊迫する。


「現在座標193・225! 〈天堂〉の船九隻に包囲されました! 狙いは体当たりでの撃沈――! 誰か援護できる者はいないのか!?」


「おい!?」

衡平が実況席を睨みつける。


「実況で座標を言う必要があるのか!? 通報するぞ! それは完全にルール違反だろうが!」


だが、白夜は大声で状況を暴露し続ける。

その結果、〈天堂〉の動きは全参加者に知れ渡った。


こちらへ向きを変える船影が、いくつも見える。


「もう遅い! 今さら援護しても間に合わん!」


その通りだ。


援軍が方向を変えるには時間がいる。

だが〈天堂〉の襲撃船は、すでに射程圏内。


ほとんど動けない私たちに向かって、一直線に突っ込んでくる。


職業スキルは使用不可。

手元に道具もない。


反撃手段は――ゼロ。


迫り来る船を見据えながら、私はチームボイスを開いた。


「作戦がある。三人同時でやらないと成功しない」


「言って」


燈里が即答する。


「衝突の瞬間、こう動く。準備して……」


念には念を入れてか、九隻のうち六隻が異なる方向から突進してきた。


減速なし。

全滅覚悟の封殺布陣。


「死ね。ゲームセットだ」


衡平は振り返りもしない。

勝利は確定したと信じている。


「衝突まで、3、2、1――」


その瞬間。


六隻の船が私たちを粉砕しようとした刹那――


船内から、私と燈里と千夏は、まるで海鳥のように跳躍した。


衝撃によって生まれた上昇気流を利用し、

狙いを定めていた一隻へ、一直線に飛び込む。


慣性が、拳に凶悪な威力を与えた。


三つの拳が、ほぼ同時に三人の敵へ叩き込まれる。


そのまま海へ吹き飛ばす。


「きゃっ、ちょ、引っ張って!」


体勢を崩した千夏を私は掴み寄せ、鼓槌を手渡す。


ドン――


ドンドンドン――!


再び鼓音が轟く。


聖火が消える寸前で、私たちは完全に船の乗っ取りを完了させた。


「なにぃぃぃぃ!?」


岸からどよめきが爆発する。


白夜のあからさまな贔屓実況により、カメラは常に私たちを追っていた。


ゆえに――


観客は、その奇跡の瞬間を目撃してしまったのだ。


一瞬の沈黙。

次の瞬間、絶叫。


「うおおおおおおお!! 奇跡だぁぁぁ!!!」


白夜が先頭で吼える。


「なんという勇気! なんという信頼! なんという精度!! 奇跡としか言いようがない!」


「船乗っ取り戦術だと!?」


「さすがクレイジーフォックス!」


「カッコよすぎるだろ!!」


すべては二秒以内。


他の襲撃船が異変に気づいた時には、もう遅い。


六隻は互いに衝突し全滅。

さらに、私たちが吹き飛ばした三名。


残る追撃は二隊のみ。


「道具回収!」


燈里が海面に浮かぶ小箱を掬い上げる。


加速。


蒼い巨龍の双翼が、再び船体に展開した。


咆哮とともに、風が耳元を裂く。


前方集団との距離が、一気に縮まる。


「逆転だ! 追いつくぞ! クレイジーフォックス選手と衡平選手の差が急速に縮まっている!」


「は……?」


衡平の脳裏が軋む。


「これでも倒せんのか……!」


「電球ギルド会長、顔色が悪いぞー! ざまぁ見ろ!」


白夜の煽りに、衡平は歯を食いしばり、大太鼓を力任せに打ち鳴らした。


「自爆突撃は無効化されたか……ならば排除ではなく、妨害に切り替える」


即座に指示を飛ばす。


「七、九、十五隊は干渉陣形を組め。二隊前衛、一隊後衛。ローテーションで道具を撃て」


「追いつかれなければいい」


「他の隊は道具回収を続行。『無敵』と『加速』を確保しろ。それだけ揃えば一気に勝負を決める」


戦術変更。


飛来する火球を避けながら、私はその意図を察する。


「駄目……」


燈里が低く言った。


「これは三人だけで勝てる試合じゃない」


「人数差で囲まれたら、道具は避けきれない。私たち三人だけじゃ、無理」


時間は刻一刻と減っていく。


その通りだ。


加速効果が切れれば、機動力は激減。


その瞬間、飽和攻撃で叩き落とされる。


三人では勝てない。


轟――


また火球が爆ぜる。


……ん?


今の火球、ずいぶん逸れてない?


なぜか〈天堂〉の船が吹き飛んだ。


「〈天堂〉のクズども! 前から気に入らなかったんだよ!」


海の向こう側で、無数の火光が天へ立ち上る。


海面が一気に照らされた。


援軍だ。


「電球ども! 相手は――俺たちだ!!」


轟轟轟轟――!!


流星群のように、無数の道具が〈天堂〉へ降り注ぐ。


「〈余火〉、参上!」


「〈夜明〉、参上!」


「〈鉄牙団〉、参上!」


「〈黄昏トラベルギルド〉、参上!」


「クレイジーフォックス応援団、参上!」

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