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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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第64話

 ドン――


 ドンドンドン――ドン――


 大太鼓。


 海岸を埋め尽くす。


 八千基もの大太鼓が、海龍湾をぐるりと取り囲み、奇跡のような統一感で打ち鳴らされていた。


 まるで太古から歩み出た巨人が、海辺の山々を踏み鳴らしているかのように。

 その一歩の余波だけで、波涛すら従わせる。


「海神祭・第二段階――聖火戦せいかせん・撃鼓進軍!」


「正式開始!」


 鼓動が心臓を打ち鳴らす。

 私は海岸に立ち、目の前の小舟を見つめていた。


 第一段階の軽やかな熱狂とは違う。

 第二段階の祭典は、荘厳で、張り詰めた空気に満ちている。


 総数八千艘。

 八千の船に、八千の大太鼓。

 その鼓の内には――聖火が宿る。


「撃鼓――火起こし――!」


 千夏が撥を受け取り、力いっぱい鼓面を打ちつけた。

 半透明の鼓面が、灼けつくような火光を放つ!


 打撃に合わせ、炎が脈打つ。


「鼓を上げろ――乗船――!」


 私と燈里で大太鼓を抱え上げる。

 千夏は打ち続けながら、私たちはそのまま船へと駆け込んだ。


「止めるな!」


 隣のNPC参加者が焦った声で叫ぶ。


「鼓面を叩き続けろ! 叩きが止まれば聖火が消えるぞ! 持ちこたえろ!」


 ドン――


 ようやく鼓を船に積み、鼓架に固定する。


 千夏はそのまま撃鼓位置へ。

 私と燈里は操舵席に座り、櫂を握った。


 喧騒に満ちた世界が、申し合わせたかのように一瞬だけ静まり返る。

 全員が撥を高く掲げた。


 大祭司が海面へと腕を振り下ろす――


「撃鼓――進軍!!!」


 ドン、ドンドンドン、ドン。

 ドン、ドンドンドン、ドン!


 リズムが再び鳴り響く。

 ゆっくりと――そして、加速する!


「まずい!」


 私たちの構成は弓手、暗殺者、魔法使い。

 誰一人としてパワー型ではない。


 櫂を漕ぐ体力も筋力も、どうしても劣る。

 船速は明らかに他より遅い。


 スタート直後から後方に置いていかれた。


 しかも――


 一隻の船が、進行方向を完全に無視していた。


 開幕早々、真っ直ぐにこちらへ突っ込んでくる!


「〈天堂〉だ! あいつら……まだ懲りてないのか!?」


 避けられない!

 旋回も減速も間に合わない!


「死ねぇ!」


 速度も狙いも迷いがない。

 完全に――私たちを脱落させるための突撃。


 第二段階では転職スキル使用禁止。

 私たちはただ、全速力で迫る船を見ているしかない。


 抵抗手段がない。


 もう終わり……?


「……」


「どけぇぇぇ――!!!」


 轟音。


 ドォン!!


 二隻が激突した。


 一隻はその場で百八十度回転し、乗員も鼓も海へ投げ出され脱落。

 もう一隻も船体が大破、航行不能。


 私は呆然と振り向く。


 突如現れた――援軍の船。


 〈天堂〉の襲撃船を体当たりで弾き飛ばしたが、記憶を探っても彼らの顔は思い出せない。


 船上の壮年の男が親指を立て、真っ白な歯を見せて笑った。


「天堂のクズどもに、家族を殺されかけた!」


「お前が仇を取ってくれた!」


「これを持っていけ!」


 びしょ濡れの小箱が投げられる。


「さっき海面から拾った加速アイテムだ。俺たちはもう使えない。」


「クレイジーフォックス!」


「何でもいい……」


「奴らを止めてくれ。勝ってくれ!」


「頼んだぞ!」


「行けぇぇぇ!!! 突撃だぁ!!!」


 振り返ると、彼の船は完全に沈み、身体は白光となって岸へ転送されていた。


 胸の奥で、久しく忘れていた熱が湧き上がる。


 私は櫂を握りしめた。


 はは……いいだろう。

 また一つ、負けられない理由が増えた。


 箱を開ける。


 光が船体へ溶け込む。


 次の瞬間、船の両脇に蒼い光が凝集し、双翼の巨龍のような翼を形成した。


 ばさり、と一振り。


 船体がふわりと海面を離れ、一直線に前方へ突撃する!


「なにっ!?」


 衡平が振り返る。


「くそ……仕留め損ねたか。あの無能ども……」


「お前ら行け! 止めろ!

 他はアイテムを回収して俺に回せ! 急げ!」


 号令と同時に、三隻が隊列を離脱。

 こちらへ向けて迎撃コースを取る!


「小狐ちゃん! 受け取ってぇぇぇ!!!」


 声の方を見る。


「!?」


 一人の船員がアイテムを投げてよこした。


「ファンです! 頑張って!

 あのハゲ電球どもに負けないで!」


 ……ファン!?


「ほらね! これが配信の力ってやつ!」


 千夏が笑いながら受け取り、アイテムは紙人形へと変化。

 彼女と共に鼓を打ち始める。


 鼓音が一層高まり、聖火の輝きが極限まで増幅。


 やがて炎は光の障壁へと転じ、戦船全体を包み込んだ。


 ドガン! ドガン! ドガン!


 〈天堂〉の三隻が結界に激突。


 卵が岩にぶつかるように粉砕し、自壊する。


 私たちは無傷。


「またアイテムか!?

 馬鹿かお前ら! お前らも使え!!」


 距離が一気に縮まる。


 衡平の顔色が変わった。


 転職スキル禁止。

 数と筋力が絶対的優位。

 それで押し切れるはずだった。


 ――甘かったな。


「十六、十九、二十七小隊は左翼から攻撃!

 三十五、三十七、四十二小隊は右翼!

 五十五、六十小隊は速度を落として後方から追尾!

 ロック系アイテムで妨害、同時攻撃だ!」


 声が海上に響く。


「今度こそ……貴様らを逃がすものか!」

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― 新着の感想 ―
まぁ、天堂共への恨み辛みで敵の敵は味方理論や、天堂が苦しむならなんでも良い精神での協力者も居るだろうし クレイジーフォックスが面白いって純粋なファンも居るよな(笑) 天堂の妨害した人達が後で報復され…
外道ドカス野郎の仲間に入った人間多過ぎだよな。
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