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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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63/84

第63話

「衡平――出局!!!」


実況席から白夜の声が高らかに響き渡る。

その瞬間、会場の外にいる観客たちから大歓声が巻き起こった。


「一矢でヘッドショットとか、かっこよすぎだろ! 狐ちゃん!」


「うおお〜! 最高!!」


「そのまま強盗どもをぶちのめせー!」


衡平が倒れたことで、《天堂》陣営は一気に統率を失った。


周囲で様子を窺っていた他の参加者たちも、ここぞとばかりに一斉に襲いかかる。


もう私が手を出す必要はない。

鬱憤を溜め込んでいた攻略者たちにとって、これ以上ない絶好の機会だ。


「それじゃ……」


私は空の上にいる燈里を見上げる。


「試合、続行!」


 ◇


「それでは正式に発表いたします。今回の海神祭・飛魚部門優勝者は――」


私は背伸びをして、わざとらしく顎を上げ、燈里を見下ろす姿勢を取る。


勝者なんて考えるまでもない。

さっきまで私と燈里は第十層でひたすら大物を狩っていたのだ。


当然、この勝負の覇者は――


「白石千夏!!!」


「え???」


大祭司が杖で地面を打つと、空中にスコアの柱状グラフが映し出される。

そこには、デフォルメされた千夏のアイコンがぶっちぎりの一位で表示されていた。


表彰台の上で、千夏がトロフィーを掲げる。


「みんなありがと〜! 応援ありがとう〜!

 特に燈里と“クレイジー狐狐”のおかげだよ! 二人が落としてくれた魚がなかったら、こんな点数絶対無理だったもん。


 二人のおかげで地面で魚拾いまくり! はぁ〜疲れた〜」


疲れたって言うな!


くっ……!!!


まさかの漁夫の利……!


「うはははは、誰が想像できたよ!」


「狐ちゃんブチ切れ案件!」


しかも、配信はすぐ人が減るはずじゃなかったの?


なんでむしろ増えてるのよ!?


「はい。」


花火が夜空に咲き誇る中、千夏が表彰台から降りてくる。


私の手に小瓶を置き、燈里には小さな箱を手渡し、自分はメダルだけを首に掛けた。


「……これは?」


「私一人じゃ絶対無理だったし。

 だから《海神の加護》はあなたに。謎の礼箱は燈里に。


 メダルは……もらうね! 初配信の記念だもん!」


「ふん……少しは良心あるじゃない。」


私は瓶の蓋を開け、一気に飲み干した。


「――うぇっ!!」


視界が暗転する。

膝から崩れ落ちそうになる。


「……これ、本当に“加護”?

 三日停電した冷蔵庫の中身が溶けて腐って混ざった黒水じゃないの?」


「……あ、あはは……あげて正解だったかも……」


千夏がほっとしたように呟く。


断言する。

私は二度の人生で、これほど不味いものを口にしたことがない。


匂いは普通なのに、どうして味は地獄なの……?


《通知:海神の加護を獲得

 水属性耐性+10》


……本物だった。


この海神、絶対クトゥルフ系でしょ?!


「第一段階、飛魚競技はこれにて終了!


 続いて第二段階へ移行する!


 ――松明競走!」


「第二段階ルール説明――


 三人一組で小舟を操縦。

 岸に置かれた松明を海神像まで運び、最初に像の火を灯したチームが勝利!


 優勝者は第三段階にて、祭司と共に真なる海神へ謁見する権利を得る!


 なお、本段階では転職スキルの使用は禁止。ただし海面に浮かぶ攻撃アイテムの取得は可能。安全には十分注意せよ!」


「……っ」


胸の奥が、きゅっと締め付けられた。


まるで心臓に見えない糸が絡みついたような違和感。

私は胸を押さえる。


「どうした?」


燈里がすぐに気づいた。


「大丈夫……たぶん――え?」


突如、目の前にホログラムが浮かび上がる。

他の誰にも見えていない。私だけに。


《世界樹より通知:


 警告。アンカー任務発生。》


アンカー任務……?


呼吸が止まる。


海神祭第二段階が、大阪降臨区のアンカー任務?


第一段階のアンカーは、黒樹迷界の鍵任務だった。

鍵を挿し、世界の錨を再固定し、空間を安定させた。


では第二段階は、海神祭……?


海神の異常。祭典の異常。

全部、アンカーと関係している?


でも――


前世にもアンカー任務はあったはず。

なのに、なぜ今、こんなに早く?


変数は……どこから?


何が世界線を動かしている?


――ならば。


この第二段階、絶対に勝つ。


そう決めた。

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