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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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第62話

 どうやら、〈天堂〉の雑魚どもを片付けない限り、まともに競技を続けることはできなさそうだ。


 怒号を上げながら飛びかかってくる六十名の大男たちを前に、私はわずかに膝を沈め、弓を背へと収めた。


 指先に魔力を凝縮する。


 生み出されたのは、矢。


 ――ただし、矢じりのみ。矢羽も矢軸も存在しない。


 手首を、ひと振り。


「なにっ!? 矢じりを投擲武器に?!」


 実況席の白夜の声が、ひときわ高く跳ね上がる。


「弓使いにとって接近戦は本来、不利! 弓を引く隙なんてない!」


「普通の弓使いなら、これだけ囲まれた時点で終わりだ! だが彼女は――あらかじめ対策を用意していた!」


「矢羽を排したことで射程は激減! だがそれが、近距離戦闘において最適解となる!!!」


「天才か!!」


「……え? なぜ俺が実況してるかって? そんなの決まってるだろ。あんな怪物と戦うくらいなら、解説席のほうが安全だからだ!」


「見ろ! 反撃が始まった!」


 矢じりは、もはや飛び道具というより刃の雨。


 一度に大量の魔力矢じりを投擲できる。


 MP消費は激しいが、至近距離では破壊力が跳ね上がる。


「くそ……盾を上げろ!」


 衡平が即座に命じる。


 だが命令は、刃の雨よりわずかに遅かった。


 わずか一秒で、五名が戦線離脱。


 衡平は拳を強く握る。


「前列押し上げろ! 行動空間を圧縮しろ! 後衛は上空の飛魚を排除! 踏み逃げさせるな!」


「完璧な封鎖指示!」白夜が緊張した声で叫ぶ。「悔しいが、指揮は的確だ!」


 四方から盾壁が押し寄せる。


 隙間なく、逃げ場を削る。


 さらに上空の飛魚が次々と撃ち落とされ、退路が塞がれていく。


 完全な人数圧殺。


「狐さん、危ない! どう出る!?」


 このまま中央で包囲されれば、確実に詰み。


「残された道は一つ……だが……」


 盾壁が閉じる前に、越えるしかない。


 白い影が盾の上を跳び越える。


 追い詰められた末の突破に見えた。


「今だ! 撃て!」


「――衡平はそれすら読んでいる! 盾上空を遠距離職に狙わせていた! 突破の瞬間に一斉射撃! まずい――


 狐さん、これは失策か!?


 ――いや?」


 乾いた音がひとつ、戦場に響いた。


 空中で逆さまになる白い影。


 矢と魔法がその細い身体へと殺到する。


 だが――


「主公! 属下、参上!」


 巨大な陸行鳥が、白い流星のごとく人群を突き破り、全力跳躍!


 爆風とともに、次の瞬間――


 巨大なガウが、完璧な位置で私を受け止めた。


「――ガウ!?」


「――まさか、契約してるのか!?」


 配信は完全に沸騰する。


 地球側の冒険者で、騎乗契約を公に見せた者は、これが初。


 しかも、極限状況で。


「かっこよすぎるだろ!!!」白夜の声が裏返る。「女武将の如き威容! 相棒のガウが決死の突撃! 流れが変わった!


 これはもはや六十の卑劣な灯台頭が一人の少女を囲む図ではない! 荒野を駆ける遊撃騎兵の反撃だ!!」


 衡平の額に青筋が浮かぶ。


「おい! 誰が卑劣な灯台頭だ!?」


「震えろ、卑劣な灯台頭! 反撃開始だ!!」


「……おい! この実況、偏りすぎじゃないか!? 大祭司は何を基準に解説を選んだ!?」


 私は長弓を構える。


 ガウが空を裂きながら疾走する。


 敵の遠距離職が再ロックするよりも早く――


 私は、振り返り、引き絞る。


 人群の中心。


 衡平と視線が絡む。


 その瞬間。


 死に照準を合わせられた感覚が、彼の背筋を駆け上がった。


 ――指揮官を狙うつもりか!? 正気か……!


 弦が鳴る。


 矢が放たれる。


「ま、待――」


 速すぎる。


 照準、射出まで、わずかコンマ数秒。


 防御も、指示も、間に合わない。


 衡平は、ただ見ているしかなかった。


 矢が視界いっぱいに迫る。


 降臨以来、彼はここまでの無力を味わったことがない。


 もし、これが模擬戦でなかったら。


 もし、これが本物の戦場だったら。


 ――その先を、彼は想像できなかった。

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― 新着の感想 ―
愛すべきお馬鹿な狐さんの手により卑劣な灯台頭のリーダー散る! いや、真面目なときはカッコイイんだけど… 電球作り上げたイメージが強くてね…
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