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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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61/84

第61話

 視線が交差する。


 雲海の上。風は低く唸りをあげている。


 六十を超える禿頭が、陽光を反射して眩しく光った。


 私はゆっくりと弓を構える。


 ……どうやら今日の第一陣の飛魚は、陸棲種らしい。


 呼吸が静まる。


 風速、弾道、着弾点――すべてが数値へと分解されていく。


「敵は三名。周囲に遮蔽物なし。遠距離職……一斉射撃!」


 衡平の号令と同時に、弾幕が空を覆い尽くし、私たちへと降り注いだ。


 判断自体は正しい。空中戦場は一枚板のような平面のみ。中央に遮蔽物はなく、引き撃ちの余地もない。人数差はそのまま圧殺的優位になる。


 ――けれど。


「攻撃、ありがとね〜」


 私は空へ跳ね上がる。


 弾幕は角度を上げ、追尾するように追いかけてきた。


 空には無数の飛魚。


 裾を翻しながら、私は一匹、また一匹と踏み替え、舞うように跳躍する。


 飛魚の群れを縫って走る。


 ――最高の遮蔽物だ。


 弾幕に巻き込まれた飛魚がHPを削り切られ、ぱちぱちと音を立てて地上へ落ちていく。


「わははっ、儲かる儲かる〜! ハゲのお兄さんたち、もっと頑張って〜!」


 千夏は自動回収をオンにして地面を全力疾走。


 少し離れた場所で燈里が無表情のまま親指を立てている。


「ぷはははは――!」


 配信のコメント欄は大爆笑だった。


『こいつら自分がタダ働きしてるの気づいてない!』


『ちょっと待って、狐ちゃんの身のこなしやばくない!?』


『あの光る電球たちのおかげで魚の雨だ〜』


「撃つな! 魚を狙うな!!」


 衡平の額に青筋が浮かぶ。


「本体をロックしろ! MPを無駄にするな!」


「無理です! 全然捕捉できない! 速すぎる!」


「……馬鹿な。飛魚を踏んで空を走っているだと? 人間に可能な動きか……?」


 真似しようと跳び上がった者もいたが、踏んだ瞬間にバランスを崩し、真っ逆さまに落ちていく。


 飛魚は常に遊泳している。次の瞬間の位置を予測するには、極めて高い動体視力と先読みが必要だ。


 一度立てても、重力で魚が沈む前に次へ移れなければ終わる。


「常軌を逸した平衡感覚と運動能力だ……」衡平の目が鋭くなる。「前回も違和感はあった。六十人で警戒していたのに、全員の髪を焼かれた。こいつは……桁外れに強い可能性がある」


「そんなはずない! ただの女子高生にしか見えないだろ!」


「現実を見ろ」


「怪物じゃないか……まあ、他に真似できる奴はいないだろ――」


 言い終わる前に。


 黒い影が、空へ駆け上がった。


「え? なんで上がってくるの?」


 振り返る。


 燈里だ。


「インベントリが満杯。捕獲した魚を海神像へ供えに行く。地上は混みすぎている。空のほうが速い」


 風が耳元を裂く。


 ――速い。


 私とほぼ同速。


 ……やっぱりこの子、怪物。


「それと」


 跳躍の最中、燈里が太陽を背に私を見下ろす。


 あの見慣れた、わずかに吊り上がった口元。


「この競技、団体モードはない」


「……だから」


「私たちは敵」


 シュッ――


 苦無のように放たれた短剣が、私の足場の飛魚に突き刺さる。


 足場が崩れる。


「はぁっ!?」


 不意打ち!?


 さすがだな!!


「望むところ!」


 落下の瞬間、弓を引き絞る。


 燈里の次の着地点が消える。


 支えを失った彼女は三層下へ落下し、辛うじて体勢を立て直した。


 空の飛魚はおよそ十層構造。上層ほど魚体は大きく、得点も高い。


「うわー、神様同士のケンカ〜。私は魚拾い〜」


 千夏が真下を駆け回り、落下した飛魚を次々回収する。


 私は第五層の大魚を抱え込み、気絶させてインベントリへ放り込んだ。


「無駄」


「?!」


「弓は両手が必要。攻撃すれば捕獲時間を失う。捕獲すれば反撃手段を失う」


 耳元。


 燈里の声。


 ――いつの間に?!


 ドンッ!


 捕獲の隙を突かれ、背に重い一撃。


 視界が回転する。


 地面へ叩き落とされる。


 くそ……錯覚か? 前世より強くないか?!


 いや、そんなはずはない。まだ降臨初期だ。成長の時間はない。


 考える暇もない。


 下では、六十の光る電球が歯を剥いて待っている。


 この位置取り……はは、やっぱり性格悪いな。


 轟音とともに着地。


 一人、電球を踏み潰して退場させる。


 周囲を見渡す。


「覚悟しろ!」


 六十を超える〈天堂〉の連中が、ゾンビのように取り囲んできた。

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電球wwwwww クッソww電球は笑うwwww
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