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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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第59話

「凪緒ちゃん!有名になってるよ!もう完全に有名人だよ!」


夜明けと同時に、千夏がものすごい勢いで丘を駆け上がってきた。


「もう言わないで……分かってるから……」


私は力なく空を見上げる。


スマホを開いて、トップのおすすめに自分の顔が出てきた瞬間、ただ事じゃないと悟った。


『ぽやぽや可愛いおバカ狐、無垢さで盗賊を制裁!』

『酔っ払い狐の破壊力を検証してみた』

『正直言って、白夜の配信は彼女の毛一本にも勝てない』

『この尻尾と引き換えに、お前ら全員ハゲろ!』

『決めた、俺はこの狐を単推しする!』

『震えろ人類!これがバカの力だ!』……


……編集した連中、タイトル付けるセンスだけはあるじゃない。


ミシッ。


思わず拳に力が入り、関節が鳴った。


私は最強攻略チームのリーダーだったんだぞ!……前世の話だけど。

なのに、誰も私たちのダンジョン初踏破を覚えてないのはどういうこと!?


なんでこんな変な話題ばっかり拡散されてるのよ!


もう世界の終わりだっていうのに、もっと役に立つ攻略情報に注目しなさいよ!


「配信、やってみる気はない? かなり稼げるよ。」


白夜が、悪魔みたいに甘い声で囁いた。


「ありえない!絶対やらない!あんなに大勢に見られるなんて無理……」


「これは昨日の配信の報酬。約束どおり渡すね。合計で3455ゴールド。」


「仮にそうだとしても……って、今いくらって言った?」


私は固まった。


3455ゴールド。


普通の狩りパーティなら、30レベル帯の魔物を一日中狩っても収入はせいぜい30ゴールド程度。


ダンジョン攻略でも、一回のクリア報酬は一人あたり約100ゴールド。しかも週に一度しか挑めない。


それが昨日――たった半日で。


3455ゴールド!?


配信ってそんなに儲かるの!?


これだけあれば、まともな装備一式を揃えられる。神器を持ち出さなくても、普段から戦闘力を底上げできる。


嫉妬や裏切りを招く心配もない、堂々と使える装備だ。


「普段はここまで稼げないよ。君みたいな存在、そうそういないし。」

白夜は苦笑した。

「昨日はみんな笑いすぎて大変だった。」


そんな能力いらないんだけど……


昨日のこと、全部なかったことになればいいのに。


「……おい、見間違いじゃないよな?あそこにいるのって……“狂気の狐”じゃないか?!」


「本物だ!サインください、クレイジーフォックスさん!」


誰がクレイジーフォックスよ!


……ていうか、サインって何書けばいいの?


凪緒?それとも狂狐?


「見て見て!尻尾振ってる!かわいい〜!」


「うわああ!うるさい!うるさいってば!」


適当に文字を走らせ、自分でも何を書いたか分からないまま、フードを思いきり引き下げて顔を隠し、木の陰へ逃げ込む。


前世――

人々は「凪緒」という名前から何を思い浮かべただろう。


――地球攻略チームの最前線に立つ指揮官。

<余火>ギルドの会長。

九百以上のダンジョン攻略を書き上げ、幾度となく戦況を覆し、隊を率いて災厄の源へと辿り着いた女。


圧倒的な強さ。

常に揺るがない精神。

最高難度のボスを攻略しているか、その準備をしているかのどちらか。


顔に笑みはなく、あるのは機械のような効率だけ。


彼女の前に立てば、どんな攻略者でも猛獣に睨まれたような緊張を覚えた。


それが今は?


「……あのさ、そこに隠れても意味ないと思うけど。配信中だから、みんな見えてるよ。」


白夜が親切に教えてくる。


「……」


私は燈里の腕を掴んだ。


「?」


「燈里……」


真剣に彼女の目を見つめる。


「?」


「隠形、教えて。お願い。」


「……」


くそ、なんで弓使いは隠形を覚えられないのよ!


「私と血の契約を結ぶ覚悟があるなら、不可能ではない。」


……それは遠慮しておく。


やっぱり穴を掘って自分を埋めよう。


穴掘りは狐の得意分野だし。うん、それでいこう。


「今の知名度なら、墓に隠れても掘り返されるでしょうね。そして棺を掲げられて、墓前で踊られるわ。」


燈里の一言が心臓を貫いた。


くっ……この……!


白夜も歩み寄り、両手を広げる。


「逃げるより、受け入れたほうがいいこともある。


 配信で堂々と姿を見せて交流したほうが、現実での面倒ごとも減るはずだよ。」


理屈は分かる……


前世にも攻略配信はあった。でも私は攻略に集中するだけでよくて、見られていることを意識する必要なんてなかった。


コメント対応も全部、他の人の仕事だったし。


「任せて!配信の運営は私がやる!凪緒ちゃんはそのままでいいから!」


千夏がドン、ドン、ドンと胸を叩く。完全に引き受ける気満々だ。


「……」


まるで世界中が準備万端で、あとは私が頷くだけみたい。


でも……


本当に、やるの?


この時代――自分を隠すことこそが、最も安全な生存戦略だ。


配信なんて、手の内を敵に晒すようなもの。


視聴者だって潜在的な競争相手だ。敵対ギルドの分析担当が紛れていてもおかしくない。


SEEKERの降臨は、終わりなき資源争奪を生む。


今の空気なんて、本気で生き残りをかける瞬間が来れば、すぐに消え去る。


世界はいずれ、あの退屈な姿に戻る。


誓い合った仲間でさえ、背中から刃を突き立てる。


ゲームじゃない。

私はそれを見てきた。


無邪気でいる資格なんてない。


「……ふぅ。」


私は目を閉じ、深く息を吸った。


「やっぱり、配信は断――」


「私も一緒に配信する。」


冷たい声が、言葉を遮った。


……は??


燈里??


「……あなたみたいな無口な刺客が何配信するのよ。視聴者でも暗殺する気?」


「視聴者次第。」


「???」

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― 新着の感想 ―
クレイジーフォックスとかお馬鹿とかもう完全に愛すべきお馬鹿認定じゃないですか! それだけ悪徳ギルド天堂のメンバーが燃えたのが面白くてスカッとしたんだろうなぁ(笑) 今じゃ強制労働ハゲ集団だもんね! …
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