表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/58

第56話

「<天堂>のクズどもと協力だと?寝言は寝て言え!――死ねぇッ!」


衡平の一言は、まるで火薬庫に火を投げ込んだようだった。


激昂した夜明と余火のメンバーが、一斉に首を刎ねんばかりの勢いで武器に手をかける。


「まあまあ、落ち着けって〜。座れよ、とりあえず座れ。」


だが衡平はまるで意に介さず、当然のように切り絵講習のスペースに腰を下ろした。


「王都は非常時を除き、私闘禁止区域だろ?すべての魔法と職業スキルは封印される。冒険者同士であっても、互いに危害を加えることは禁止だ。


 しかも、攻撃の意思を見せた時点で現行犯逮捕。そのまま全面指名手配だ。」


「その通りです。」

年配の祭司が静かに頷く。

「どのような因縁があろうと、解決は王都の外でなさい。」


「祭司様!こいつは大勢を殺しています!ただの盗賊集団です!レベルのためなら手段を選ばない連中なんですよ!」


白夜が歯噛みする。


「それは冒険者間の争い……申し訳ありませんが、王国には事実確認ができません。現状は秩序維持を優先するしかないのです。証拠を冒険者協会へ提出してください。彼らが裁定を下します。」


「くそっ!」


宿敵が目の前にいるのに、規則のせいで手を出せない。


その苛立ちは、場にいる全員の胸を重く締めつけていた。


「感謝するべきだぜ、このルールに。」

衡平は肩をすくめる。

「じゃなきゃ、今頃お前らは明日の朝日を拝めていない。」


「だったら城の外で決着つけろ!」


白夜が挑発に乗りかけた瞬間、由衣が肩を掴んで制した。


「装備を見なさい。全部エピック以上よ。どうやって手に入れたかは知らないけど……一対一なら、あなたが死ぬ可能性のほうが高い。」


「……っ、くそ!!」


「だから焦る必要はないさ。」

衡平は悠然と切り絵を手に取る。

「いずれ刃を交える機会はいくらでも来る。」


そして薄く笑った。


「それまでは――

祭りの空気でも楽しもうじゃないか~」


……楽しめるわけがない。


この男が現れた瞬間、空気は凍りついた。


誰もが剣の柄に手をかけ、いつでも戦えるよう身構えている。


スキルが使えなくても。

帝国に指名手配されようとも。


全員が、「どうやってこいつを殺すか」だけを考えていた。


だが衡平の背後には多くのギルドメンバーがいる。

もし衝突すれば、夜明も余火も無傷では済まない。


被害は甚大になるだろう。


「……なぜだ。」


白夜が低く問う。


二人は向かい合って座り、白夜は図案どおりに紙を切りながらも、鋭い視線を衡平に突き刺していた。


声は歯の隙間から絞り出すようだった。


「どうして、あんなことをした?」


「どうして?」

衡平は眉を上げる。

「理由なんて必要か?お前と同じだ。俺は生き延びたい。部下も生かしたい。」


「生きるためなら、他人の命を踏み台にしていいのか?!」


「別に必須じゃない。」


「なら――!」


「……だが、最も効率がいい。」


衡平は当然のように言った。


「効率のために強盗まがいの真似をするのか?!命を何だと思っている!」


「その手の話はな。」

衡平は退屈そうに紙を回す。

「西部開拓をやった連中や、黒人奴隷を売りさばいたイギリス、ポルトガル、スペインにでも聞け。あいつらがどう資本を積み上げたのかをな。


 ……俺が殺した人数なんて、連中の足元にも及ばない。」


「……」


一瞬、空気が凍りついた。



……で、あの人たち何してるの?


白夜が衡平と何か言い争っていて、夜明の副会長まで論戦に加わっているのは分かる。


男たちは皆、顔を真っ赤にしていて――まるで酒場で飲みすぎたおじさんみたい。


「……んむ、うま……」


呂律の回らない声で感想を漏らしながら、焼き魚団子をもう一個口に放り込む。


じゅわっと香りが弾けた。


もともと脳震盪なのに、この騒がしさ。神経が完全にオーバーロードしている……。


もう美味しいものだけが救いだった。


周囲が何をしているのか?

頭がくらくらして、環境もごちゃごちゃしていて、正直どうでもいい。


ギルドの方針でも話してるのかな?


……私には関係ない。


「すみませーん、あと十本ください。」


「ちょっと、もう食べないで……」


燈里が私の手を掴み、ぐいっと横へ引いた。


私はふらふらと彼女の肩にぶつかり、へへっと笑う。


燈里が眉を寄せ、私の瞳を覗き込んだ。


「……本気で食べ死ぬ気?」


「わかんな……ひっく。」


盛大にげっぷ。


頭はぐらぐら、炭水化物でさらにぼんやり。しかもさっき果実酒まで飲んだ気がする……。


自分が何してるのか、全然わからない。


向こうでは三大ギルドが大激論。


一方こちら――


たぶん知能が七割くらい消えている。


もう、食べて寝て遊びたいだけ。


「やばい……私、あの子の頭ぶっ叩いてバカにしちゃったかも!」


千夏が杖を抱え、青ざめる。


杖の先には、どこぞの不運な犠牲者の血がまだこびりついていた。


「あなたのせいだけじゃないわ……昨夜、私も壁に叩きつけたし……ちゃんと加減はしたけど……」


燈里は額を押さえた。


壁ドンで人が死ぬ確率は、ゼロじゃない。


「えへ〜〜……えへへへ——」


私はにやにやしながら襟元をぐいっと開き、無防備な首筋を燈里の前へ差し出す。


くねくね揺らしながら。


「噛んでみな〜?噛んでみな〜?ほら噛めない!ばーーか♡」


そのまま、よろよろと逃走。


「……」


そして不幸なことに——


この一連の奇行はすべて、白夜の配信の背景に映り込んでいた。


白夜は今まさに、「道徳」「責任」「倫理」「命」について熱血討論の真っ最中。


視聴者たちも真剣に考えている。


……なのに後ろでは、


ニヤニヤ笑いながら走り回り、騒ぎを起こし、会場をめちゃくちゃにしている小狐が一匹。


――あれは一体、何なんだ???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
場違いすぎるw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ