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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
2.

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55/56

第55話

治療師は私の顔をじっと見つめ、二秒ほど沈黙した。


「おめでとう。」


「?」


「軽度の脳震盪よ。」


「……」


本当にやらかしてたのか、私の頭。


……なんでみんな、こんなにも私の頭と相性が悪いのよ!


「脳震盪の翌日はつらいことが多いわ。今日は光が眩しく感じたり、反応が鈍くなったりするかもしれない。


 今夜は絶対に二度目をやらないようにね。まったく、最近の若い子は……」


治療師は私と燈里を見比べ、首を振ってため息をついた。


「治癒魔法でこういう“状態異常”は解除できないんですか?」


「損傷が脳に関わっている以上、魔法の使用は慎重にならざるを得ないの。無理に治すより、自然治癒を待ったほうが安全よ。あなたの症状は、まだ魔法が必須という段階じゃない。」


「そっか……」


私は立ち上がった。


まるで度の合っていない眼鏡をかけているみたいに、世界の焦点が微妙にずれている。


日常動作に大きな支障はないけれど——今日は弓は無理だ。


『世界アナウンス:


 西フヴニア王都は「災後復興」および「祭典配備」段階へ移行しました。国王は冒険者協会と委託契約を締結——


 本日、王都冒険者協会にて王室発行の「復興任務」および「海神祭配備任務」が掲示されます。


 任務を完了した冒険者には国庫より高額報酬が支払われます。


 皆様の積極的な参加を歓迎します!


 ※冒険者ホールが混雑した場合、五か所の臨時ホールでも任務を受注可能です。すべての任務は同期更新されます。』


助かった。今日は戦闘任務はなさそうだ。


この手の依頼なら、多少頭がふらついていても問題ない。


——リンリン。


フレンドリストが点滅した。


白夜だ。


『……あの……突然すみません。配信の視聴者が盛り上がってしまって、「あの超カッコいい弓使いを見たい!」って……もしご一緒に任務に来ていただけたら、たくさん投げ銭するって言ってまして……』


……なんて正直な理由。


『民意が爆発しておりまして、断りづらい状況でして。そこで失礼を承知でお聞きしますが、本日ご一緒に任務へ行けませんか?余火ギルドのメンバーも来ています。


 大規模任務を受ければ、ソロより報酬も上がりますし。


 それと、配信中に得た収益の50%はあなたにお渡しします。』


「ちょっと頭をやっててね。脳震盪。歩くだけでも少しふらつくんだけど……それでもいいなら。」


『……えっ?!平地で転びかねない弓使いさんとか最高じゃないですか??ちょっと皆さん何言ってるんですか!?……あ、失礼。視聴者、むしろ大興奮してます。』


「……」


『私たちは今、東地区の臨時冒険者ホールにいます。どちらに?お迎えに行きましょうか?』


「大丈夫。そっちに向かうよ。」


この状態で一人任務をやると、転倒して余計に悪化しかねない。


パーティ任務のほうが安全だ。



最終的に受けたのは——祭典準備系の任務だった。


図案に描かれた海神の紋様を切り絵にし、祭典区域の外壁に貼る。


その切り絵を教えてくれる老婆さんは、かつて海神祭の大祭司だったらしい。


彼女は丁寧に手順を教えながら、海神にまつわる伝承を語り始めた。


「海神様は、この王国の守護神です。


 千年前——まだ王国が存在しなかった頃、海神様は天より落ち、大地へと降臨なさいました。


 その衝撃は、海岸と内陸を繋ぐ巨大な大穴を穿ったのです。


 それこそが、現在の海竜湾。」


「海竜湾って……落下の衝撃でできたんですか?!」


白夜が思わず声を上げる。


地球で言えば大阪湾と同規模の湾が、“落ちた衝撃”で生まれたなんて、スケールが違いすぎる。


「当時、国王の祖先はアルセイン帝国に追われ、この湾まで逃げ延びていました。


 祖先は海神に祈ったのです。どうか子孫を守ってほしいと……そして海神は応えた。


 昨日と同じように、天を覆う大波を起こし、帝国の追手を恐怖に陥れたのです。


 祖先はこの地に根を下ろし、海神様に仕えることを決めました。——それが、西フヴニア王国の始まりです。」


老婆さんが語り終えた、その瞬間。


周囲の空気が、不意に静まり返った。


「——それは……ただの人間の思い込みに聞こえるがな。」


嘲るような声。


私たちは反射的に顔を上げた。


そこに立っていたのは——


想像すらしていなかった人物だった。


黄金に輝く豪奢な鎧をまとい、まるで神話の戦士のように群衆の中へ立つ男。


衡平?!


天堂ギルドの略奪者の頭領……衡平だと??


「いやはや、実にいい表情だ。」


衡平は微笑みながら歩み寄り、当然のように私たちの隣へ腰を下ろすと、一枚の切り絵を手に取った。


「……よくもここに現れたな?!」


白夜が怒りに任せて剣を抜く。


次々と金属音が響き、夜明と余火のメンバーが一斉に戦闘態勢へ入った。


だが——


衡平はまったく意に介さない。


目を細め、余裕の笑みを浮かべる。


「悪いな。俺も祭りの設営任務を受けていてね。


 つまり——」


彼は肩をすくめた。


「どうやら、しばらくは協力関係になりそうだな~~」

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― 新着の感想 ―
やだ、協力したくない 裏切られる前に裏切ろう コイツと協力とかどんな罰ゲームだよ… ここで殺ったらシステム的にペナルティとかあるんかな…
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