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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
1.

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41/53

第41話

 こんなにも安心して眠れたのは、久しぶりだった。


 ……もっとも、重度の失血に加えて四十八時間ぶっ通しで起きていた反動、という可能性も大いにあるけれど。


 それでも、過労死しなかっただけ奇跡だと思う。


 魔偶を撃破したあと、私と燈里のレベルはどちらも二十を超えていた。


 初期降臨エリアとしては、ほぼ上限だ。

 ここから先、雑魚狩りでレベルを上げるのは、正直かなり厳しい。


 魔竜が棲むコアエリアに挑めば別だが……あそこは推奨レベル一〇〇。

 今は、さすがに命を捨てに行く気はない。


 だから今日は、少し肩の力を抜いてもいい。

 これまでの成果を整理して、次の降臨エリアに備えることにした。


 宿のベッドに横になりながら、私は《SEEKER》内蔵のフォーラムと配信機能を起動し、他のプレイヤーたちの進捗を確認する。


 降臨から最初の三日間。

 あの狂気じみた競争のあと、四日目に入って、プレイヤーたちははっきりと階層化し始めていた。


 第一グループは、《SEEKER》降臨直後に、最も迅速かつ果断にレベリングへ踏み切った者たち。


 彼らは先行優位を活かし、競争の激しい中層狩場を意図的に避けながら成長し、現在のレベルは十二〜十五程度に達している。


 第二グループは中間層。

 今まさに、狩場を巡って熾烈な争奪戦を繰り広げている。


 一つの魔物リスポーン地点に十数人が張り付き、討伐権を巡って衝突するのも珍しくない。


 フォーラムに並ぶのは、そうしたトラブルを訴える書き込みばかりだ。


 そして最後に、ようやく新手村を出る決心をした“難民”たち。

 加えて、世界各地から資源を求めて流入してきた探索者や外国人プレイヤー。


 区域をまたぐ人の移動があまりにも多く、政府はすでに、降臨エリアの封鎖を検討し始めているらしい。


 さらに頭を悩ませているのは、降臨エリアで得たレベル、魔法、アイテムを、外へ持ち出せてしまうことだ。


 たとえレベル一〇の魔法使いであっても、現実世界では十分すぎる破壊力を持つ。


 すでに、降臨エリアで得た力を使い、凶悪な犯罪に手を染めた者も少なくない。


 それは、政府が封鎖へ傾く理由を、また一つ増やす結果になっていた。


 けれど――私は知っている。


 封鎖など、無意味だ。


 なぜなら、これから先に降臨する場所は、富士山ひとつでは終わらないのだから。


 ――《あの〈天堂〉の連中、ほんとに許せない!》


 フォーラムを眺めていれば、案の定、〈天堂〉への非難が溢れていた。


 ――《白夜:申し訳ありません! 我々は黒樹迷界まで追い込まれ、救援に向かうことができませんでした……》


 衡平は、悪人だ。

 だが、愚かではない。


 追手を黒樹迷界へ踏み込ませる危険性を、彼は十分に理解していた。

 だから最初から、私たちを仕留めるつもりなどなかった。


 狙いは――閉じ込めること。


 私たちが迷界に足止めされている間、白夜は〈夜明〉と連絡を断たれ、救援部隊は指揮系統を失う。


 その隙を突き、〈天堂〉はダンジョン出口を封鎖し、攻略成功者を片っ端から襲撃した。


 結果、多くの第一グループのプレイヤーが装備を失い、第二グループへと転落していった。


 ……とはいえ、事態は最悪ではなかった。


 夜明と余火の合同メンバーが夜明けとともに到着し、強盗たちを撃退。

 奪われた装備の半分以上を取り返すことに成功したのだ。


 この事件をきっかけに、未所属だったプレイヤーたちは、組織の重要性を痛感した。


 その場で夜明か余火へ加入する者が続出し、一夜にして両ギルドは三千人規模へと膨れ上がった。

 申請通知は、処理が追いつかないほどだ。


 ……前の人生より、ずっとマシだな。


 まあ、どうでもいい。


 今世での私は、静かに生きたいだけだ。

 一人で、異世界の料理や風習を楽ししむ、それでいい。


 人混みの喧騒は、ただ耳が痛くなるだけ。


 狐は――生まれつき、孤独な生き物だ。


 目を覚ましたとき、すでに外は夕暮れだった。

 水のような月光が、やがて中指の《生息の指輪》を照らし出す。


 ……そうだな。


 どうやら、孤独な生き方も、思ったほど簡単ではないらしい。


  

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