表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白
1.

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/47

第23話

「攻略人数、確定!

 討伐、開始!」


〈ダンジョンに突入しました――

 原初の揺籃〉


討伐確認を押したにもかかわらず、私たちはどこかへ転送されることはなかった。

代わりに、足元から淡い波紋が静かに広がっていく。


まるで別世界へ足を踏み入れたかのように、

プレイヤーたちの声は一斉に掻き消え、風も止んだ。

河口湖全体が、鏡のように凪いでいる。


湖の中央――

鵜飼嶋神社の方角で、淡く赤い光が瞬いていた。

それは目標を示す導きであり、私たちが辿り着くべき終着点でもある。


「……でもさ、ここ、船ないよな?

 どうやって渡るんだ?」


恒一が小声で首を傾げる。


「それ、完全にSEEKER初心者の発想だね」


白夜は笑いながら彼の肩を軽く叩き、実況解説を始めた。


「大丈夫。ダンジョンが始まると、湖面は固体化するんだ。

 普通に歩けるようになるよ」


そう言って、白夜は自ら湖の上へと踏み出し、

配信を見ている視聴者たちに向けて実演してみせる。


足が湖面に触れると、かすかな波紋が広がった。

まるで薄氷を踏んだような感触――

だが、その氷は十分すぎるほど頑丈だった。


全員が湖面に乗った瞬間、

先ほどまで静まり返っていた広大な湖が、突如として変貌する。


「警戒して!

 第一波……来るよ!」


湖が大きく揺れ、

二体の巨大な“首のない石像”が、湖底からせり上がってきた。


石像の身体には、無数の鎖が絡みついている。

それらは船の錨のように湖底へと繋がれ、

二体の石像を一定の範囲に縛り付けていた。


「石像系モンスターだ。

 武器を見て攻撃タイプを判断、役割分担して対応して!」


白夜は即座に状況を把握し、指示を飛ばす。


「由衣、恒一、それと〈余火〉のもう一人のヒーラー。

 三人で左の盾持ち石像を引き受けられる?

 ヘイトを取って、生き残ることだけを優先。

 ダメージは出さなくていい!」


三人は即答した。


「了解」


「残り七人!

 こっちは一気に大剣持ちを集中攻撃で落とす!」


二体の強敵を前に、高火力の敵から潰す。

白夜の指揮は、教科書通りだが最も安全な選択だった。


「……容赦ないゲームだよね。

 新人に慣れる時間すら与えず、初ダンジョンから二体同時とか」


事前情報がなければ、

多くのパーティはこの時点で混乱し、編成も組めずに崩壊するだろう。


その代償は――命だ。


「火力!

 全力で!」


由衣たちは挑発を使って盾持ち石像の注意を引き、

二人のヒーラーの支援を受けながら、大きく距離を取って引き離していく。


一方、私たちはもう一体――

大剣を持つ石像へと攻撃を集中させた。


この石像の弱点コアは、足首と肩部。

どちらも狙いづらく、簡単には当てられない。


「無理無理無理!

 副会長、ちょっと走り回らないでよ!

 そんなにボス引きずられたら、コア狙えないでしょ!」


〈夜明〉の副会長は盾戦士。

本来は大剣石像の攻撃を一手に引き受ける役目だ。


だが――

高さ五メートルを超える巨大な石像を目の前にし、

彼は完全に恐怖に呑まれていた。


「こんなの無理だって!!

 どうやって受け止めろっていうんだよ!!」


副会長は半泣きで逃げ回りながら叫ぶ。


「最初から盾戦士なんて選ばなきゃよかった!!」


「盾を信じろ!!」


白夜が必死に叫ぶ。


「お前のステータスは、あいつに負けてない!

 ガードスキルを使え!

 受け止められる!!」


「切り刻まれてミンチになるだけだろ!!

 ボス! もう撤退しよう!

 俺、もう無理だ!!」


副会長は転がるようにして斬撃をかわし、

地面には、情けない水の跡が引きずられていた。


「ダンジョンは二十分経たないと撤退できない!!

 このまま逃げ続けたら、MP切れて全滅だ!!

 いいから覚悟決めろ!!」


初戦から、これほどみっともない事態になるとは――

しかも、それが自分の副会長だとは。


白夜の怒号も、彼の恐怖を打ち消すことはできなかった。


石像にダメージを与えるには、

コアを狙うしかない。

そのためには――

副会長が踏みとどまり、石像を止める必要がある。


私は一瞬考え、

インベントリから一本の錬金薬を取り出した。


「おい、受け取って!

 無敵ポーション!

 飲めば無敵になるから!!」


距離が詰まった瞬間を狙い、

私は副会長へと薬瓶を投げる。


「ありがとう!!

 本当にありがとう!!」


彼は慌ててそれを掴み取り、

首を仰け反らせて一気に飲み干した。


そして――

ふと、疑問が浮かんだように呟く。


「……あれ?

 SEEKERに無敵ポーションなんて、あったっけ……?」


考える暇もなく、

彼の身体から淡い赤い霧が噴き上がった。


その表情は、

困惑から――

歪んだ笑みへ。

そして、完全な狂気へと塗り替えられる。


「……あ、ゴメン」


私は何事もなかったかのように弓へ持ち替えた。


「間違えた。

 それ、狂化ポーションだった」


「アハハハハ――!!

 殺す!!

 殺す!!

 殺してやるッ!!」


副会長は血走った目で盾を掲げ、

轟音とともに大剣石像の攻撃を真正面から受け止めた。


衝撃で、石像の巨体がわずかによろめく。


「死ね!!

 死ね!!

 死ねええええ!!」


副会長は石像の足元に張り付き、

盾で狂ったように足指を殴り続ける。


白夜は、完全に言葉を失っていた。


そして――

ゆっくりと、私に向かって親指を立てる。


「……最高だ」


「今だ!!

 全員――

 全力で叩き込めッ!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
白夜さーん、ここで「最高だ」って言っちゃうとは、良い性格してるな〜w
まぁ、全滅とか壊滅するくらいなら1人暴走させたほうが良いよね(笑) 理論上受け止めるだけのステータスあるんだし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ