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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白


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第16話

ホール内はまだ狂騒の只中にあった。

刃が鞘を離れる、かすかな金属音は喧騒にかき消され、気づいたのは――私だけ。


「くそ……そこの配信者、しゃがめ」


「……え?」


立ち上がり、配信カメラに背を向ける。

視聴者の視線がマントに遮られた一瞬、その手に長弓を具現化した。


身体をひねり、一矢を放つ。

矢は一直線に――白夜の額へと向かって飛んだ。


「な、なにするんだ――!?」


私が弓を引いたのを見て、白夜は悲鳴混じりに叫び、慌てて頭を抱えてしゃがみ込む。


その瞬間だった。


剣が唸りを上げ、彼が立っていたはずの首の高さを、容赦なく薙ぎ払った。


ほんの一拍でも遅れていたら――

今ごろ彼は、間違いなく首を刎ねられていた。


「キン――!」


放たれた矢が殺し屋の剣身にぶつかり、衝撃で相手の体勢が大きく崩れる。

男は呻き声を上げ、床へと叩きつけられた。


「チッ!」

殺し屋は唾を吐き捨てる。

「一度かわしたくらいで終わりだと思うな――鬼影! まだ待ってるのか!?」


「きゃあ――!」


人混みの中から、悲鳴が上がった。


人々が左右に散り、

関節を正確に断ち切られた影術師が、場の中央へと飛んできた――正確には、投げ捨てられたのだ。


殺し屋は目を見開く。

「鬼影……!? お前、何を……くそっ、誰の仕業だ!?」


「申し訳ありませんが、冒険者ホール内での私闘は禁止されています」


冷えた声とともに、人影が人混みを割って現れた。


燈里だった。

彼女は指先で短剣を一度くるりと回し、そのまま太腿の鞘へと収める。

刺客用のマントの下、すらりとした脚が静かに持ち上がり、

倒れている魔法使いの顔面を、ためらいなく踏みつけた。


白夜はようやく状況を理解したのか、全身を激しく震わせ、その場にへたり込む。


「さ、殺し屋……!?」


本当に――

ほんの少し前まで、彼は死の淵に立っていたのだ。


「少しは警戒しなさい。

あなたを恨んでいる人間は、想像以上に多いわ」


私は溜息をつき、弓を収めた。

……ああ、面倒くさい。


ふと、スマホの画面に視線をやる。


――配信のコメント欄。


『うわあああああ! 今の、マジで危なすぎる!』

『かっこよすぎ!! あの二人、女の人だよね!? 女プレイヤーであんなにキレるの反則でしょ!!』

『助けて……恋した……』


「……」


「チッ」


燈里と一瞬だけ視線が交わり、すぐに逸らす。


白夜はまだ死の恐怖から抜け出せずにいた。

まるで、崖の縁から無理やり引き戻されたばかりのようだ。

あと一歩で、粉々になっていた。


「あ、ありがとう……!

本当に、君たちがいなかったら……俺、今ごろ死んでた……!」


仲間に支えられながら立ち上がり、白夜は深く頭を下げた。


二人の刺客はすでに、彼の仲間たちに取り押さえられている。


恐怖の後に湧き上がったのは、怒りだった。


白夜は二人を睨みつける。


「お前たち、何者だ!?

俺はお前たちを知らない! それなのに、なぜ俺を殺そうとした!?」


刺客たちは俯いたまま、黙り込んでいる。


どうやら、口の堅い連中ではないらしい。

暗殺に失敗した途端、その表情には迷いと怯えが浮かんでいた。


配信を見ていた視聴者の中に、二人の正体に気づいた者がいた。


『こいつら……前にニュースになった殺人犯じゃないか?

俺は裁判官だ。俺自身が判決を下した。確か、東京拘置所に収容されたはずだが……』


『殺人犯!? じゃあ、もしかして……』


『私は東京拘置所の刑務官だ!

みんな、十分注意してくれ! 熱兵器が使えなくなって、刑務所で暴動が起きた!

危険な重刑犯が大勢、脱走している!』


『静岡刑務所も甲府刑務所もだ!

降臨区域内の重刑犯は、ほぼ全域で暴動を起こしてる!』


「……っ」


白夜は息を呑み、二人を恐怖の目で見つめた。


「だ、だからって……

重刑犯だからといって、俺を殺す理由にはならないだろ!」


「『衡平』会長だ……!」


押さえつけられていた魔法使いが、堪えきれずに叫んだ。


「『衡平』会長が、あんたを殺せって言ったんだ!」


案の定、骨のない男だった。

魔法使いは泣き叫ぶように、すべてを吐き出す。


「衡平会長は言った!

お前のやってることは邪魔なんだって!

だから、俺たちに殺せって――!」


「はぁ!?」


白夜は怒りで声を荒らげた。


「俺は人を助けてるだけだ!

それのどこが間違ってる!?」


「会長はこう言った……!」


魔法使いは必死に言葉を繋ぐ。


「怪物の数も、クエストも、資源も限られてる!

生き残る人間が一人増えれば、それだけ競争相手も増える!

今、お前が助ける人数が多いほど、

ゲームのやり方を教える人数が多いほど、

未来の競争は激しくなるんだって……!」


白夜は言葉を失った。


「……何だそれ。

そんな理屈が通るか!

人の命より、ゲームアイテムの方が大事だって言うのか!?」


「もうゲームじゃないんだよ!

その甘い考え、捨てろ!」


魔法使いは、感情が決壊したように叫んだ。


「見ただろ!

法律も、銃も、もう意味を持たない!

弱者を守る秩序なんて、二度と戻らない!

これからの世界じゃ、レベルの高い奴が、低い奴を好き放題に殺せる!

レベルだ! 戦闘力だ!

それがすべてなんだ!」


――この意見には、私は同意する。


なぜなら、私はそれを――この目で見てきたから。


「ここで淘汰される運命の連中を助ける暇があるなら、

資源を集中させろ!

この混乱を利用して、新しい王国を作るんだ!

お前は王になりたくないのか!?

新時代の支配者になりたくないのか!?」


魔法使いは息を荒げ、叫び続ける。


「お前がどう思おうと、俺は違う!

俺はもう囚人になんて戻りたくない!

俺はただ、あのクソみたいな職場で俺を追い詰めた上司を殺しただけだ!

それで無期懲役!? ふざけるな! 何でだよ!!」


激情に駆られた魔法使いは、身体を起こし、

そのまま配信カメラへと突進した。


血に染まった顔が、画面いっぱいに映し出される。


「〈天堂〉に入れ!!


新しい時代を生き残れるのは、〈天堂〉だけだ!


愚かな道徳なんて捨てろ!

すべての資源を、その手で握れ!


レベルだ! 装備だ!

それこそが新時代の本当の財産だ!

成長の邪魔になる奴は、全員殺せ!

殺せ! 殺せ! 手段なんて選ぶな!

そうしなきゃ生き残れない! 本当に、生き残れないんだ!


目を覚ませ!

この愚か者どもが!!」

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― 新着の感想 ―
日本の刑法って甘いから、 一人殺しただけで無期懲役にはならないと思われる。 もしそうだったら今頃、無期懲役で刑務所は溢れてますよね。 死ぬまで出ていかないんだから。 情状酌量の余地ありなら三人くらいで…
電気系統、重火器がだめになっているのかな?
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