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神器も世界樹も神獣卵も買った。あとはゲームが現実になるのを待つだけ  作者: 狐白


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第12話

「……ん? 違う。なにか、おかしい。」


同じ死霊系ボスの戦闘前奏ではあるが、ほどなくBGMに差異が現れた。


「ククク……」


薄暗い地下倉庫の中、陰湿な笑い声が四方八方から響き渡る。


「隠れるなよ、小さなネズミども。来ているのは分かっている。」


「……!?」


バレた!?


いつの間に……?


私は手にしていた魂晶石へと視線を落とす。


――なるほど。


さきほど倒した二体の哨兵には、死霊術師のマーキングが施されていたのだろう。

死亡した瞬間、その気配が術者に伝わった――。


「この音楽……この演出……」


千夏が、今にも泣き出しそうな顔で呟く。


「まさか……こんな不運、ないよね……?」


通常、地穴ゴブリンの巣にボスは存在しない。

せいぜい、数体のエリート個体が出現する程度だ。


だが、極端に運が良ければ――

超レアの《死霊術師イベント》が発生し、大量の報酬を得られることがある。


――もっとも、それを“運がいい”と言える条件は、

レベル十五以上、装備・スキル・人数のすべてが揃っていること。


今の私たちは、四人。

平均レベルは五。しかも、ひとりは未転職。


これは、運がいいどころじゃない。


――確実な死地だ。


私は拳を握りしめ、即座に低い声で指示を出した。


「千夏、由衣、燈里。三人は生鮮倉庫へ直行して、人を救って。

あっちに出口があったはず。そこからすぐ離脱して。」


「わかった……って、ちょっと待って! じゃあ、あんたは!?」


私は弓を握り直す。


「私は遠距離・敏捷系。少しは足止めできる。

大丈夫、危なくなったら逃げる。一時間後、池袋駅で合流。」


「嘘でしょ!」


千夏が私の腕にしがみつく。


「このボスの強さ、分かってるでしょ!

一人で足止めなんて無理だよ! レベル五なんだよ!? 触られたら即死だよ!」


「……行って。」


「置いていかない! そんなの友達じゃない!

一緒に逃げれば、まだ助かるかもしれない!」


私は、ほんの一瞬だけ言葉を失った。


前世――

常に最前線に立ち、最強であることを求められてきた私は、

一人で殿を務めることに慣れきっていた。


そんな言葉を、かけられたことは一度もない。


それが当たり前だった。


「大丈夫よ、千夏。私は身軽だから。

燈里……二人をお願い。必ず安全に逃がして。」


燈里が、じっと私を見つめる。


その瞳に、相変わらず感情の揺れはない。


「言われなくても。今は同じパーティだ。」


「だめ……燈里! 手伝おうよ!」


「ここに残っても足手まといになるだけ。」


燈里は、まるで子猫を掴むみたいに、千夏の首根っこを掴んで持ち上げた。


「高レベルボス相手に必要なのは、機動力と集中力。

あなたが残れば、彼女はあなたを守る分、回避が遅れる。」


「でも……ここはゲームじゃない!

死ぬんだよ……本当に死んじゃうんだよ……!」


千夏の目から涙が溢れ落ちる。


「だからこそ、私たちは離脱する。

ここで時間を無駄にするより、人を救って、由衣を外に連れ出して転職させて、

応援を呼ぶ方が合理的……由衣、ついてきて。急いで!」


由衣が、申し訳なさそうに私を見る。


「ありがとう……必ず耐えて!

すぐ戻って、助けに来るから!」


「凪緒……緒!!」


千夏の声が、次第に遠ざかっていく。


「ククク……逃がすとでも思ったか?

愚か者め。来た以上、全員死んでもらう。」


倉庫全体が、ぐらりと揺れた。


地面から、次々と骸骨の手が突き出してくる。


――死霊術師の、骨召喚。


「……ふん。」


私は冷笑し、目を閉じた。


「たかがレベル十のボスが……ずいぶん吠えるじゃない。」


再び目を開いた瞬間、《天秤の瞳》が虚妄を見抜く。

光が走り、闇に潜むボス本体を即座に捕捉した。


弓を引く。


スキル・《付加爆裂》。


「――ドンッ!!」


今まさに形を成そうとしていた骸骨軍団は、

召喚を断ち切られ、床一面に砕け散った。


燈里たちは妨害を失い、生鮮倉庫へと一気に駆け込んでいく。


「虫けらが……!

たかがレベル五の虫けらが、この私を傷つけただと!?」


空気を震わせる、死霊術師の怒号。


戦闘BGMが一気に激しさを増す。

私が詠唱を妨害したことで、完全に逆鱗に触れたらしい。


同時に、空中に――

十数メートルはあろうかという、禍々しい巨大なHPバーが出現した。


「殺してやる! お前も、お前の仲間も!

全員殺して、私のアンデッド兵にしてやる! 誰一人逃がさない!」


再び地面が震え、砕けたはずの骸骨兵が再構築されていく。


――だが。


私は、まるで脅威を感じていないかのように、

燈里たちが去っていった方向を見つめていた。


彼女たちが完全に遠ざかったのを確認してから、

私は攻撃するどころか、ふっと笑った。


近くの岩に腰掛け、

アイテムウィンドウを開きながら、雑談でもするように口を開く。


「ねえ、知ってる?

……私はもう、人の心を試したくないの。」


「な……何だと!?」


死霊術師が一瞬だけ言葉を失い、

次の瞬間、さらに激昂する。


「この虫けら! この私を眼中にないとでも言う気か!」


「うん。……確かに、あなたはまだ眼中にないかな。」


指先で、アイテム欄を軽くタップする。


【システム通知】

成長神器《戦神イライの守護首飾り》――装備完了。


「どんなに崇高な誓いでも。

どれだけ長く、肩を並べて戦った仲間でも……」


【システム通知】

成長神器《風神シルフの神速マント》――装備完了。


「……どれほど強そうに見える絆も、

十分な利益の前では――」


【システム通知】

成長神器《大魔導師の指輪》《海神の指輪》《魔竜の指輪》

《天空の指輪》《王家印章の指輪》《魂の指輪》

《無上の力の指輪》《精霊王の魔戒》

《復活の指輪》《大地母神の祝福の指輪》

――装備完了。


「……あっさり、壊れるものなの。」


死霊術師は呆然と、私の指――

神器の指輪で埋め尽くされたその手と、

背に揺れる、蝉の羽のように薄い光のマント、

眩い輝きを放つ戦神の首飾りを見つめていた。


さらに――

太陽のように輝くブーツ、レギンス、レンジャーローブが次々と現れ、

仕上げに、最上位の聖なる泉が頭上から降り注ぐ。


アンデッドが触れれば即死する、聖属性の完全バフ。


死霊術師は、必死に自分の目をこすった。


……いや、きっと寝ぼけているんだ。


「ば……馬鹿な……!」


死霊術師は、今にも泣き出しそうだ。


「普通の王国でも神器一つあれば、

大陸を支配できるというのに……!


全世界の王国の国庫を合わせたって、

こんな数、あるはずがない……!」


――一体、どっちがボスなんだ。


「え、えっと! ちょっと思い出したことがありまして!」


死霊術師は、引きつった笑みで頭を掻く。


「さ、さっき復活したばかりで……

医者に、激しい運動は控えろって言われてまして……

それじゃ、失礼します!」


私は、弓を構えた。


無表情で。

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― 新着の感想 ―
王国ってことはゲーム側なのかな?
おぃww
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