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episódio.33 笑わぬ虎は、青瞳を愛する②

 ただものの殺人鬼にあらずと判じた後部の九人は、総長アルコの鉾楯となってキドンに立ち向かう。


 初手、五人のうち三人がクロスボウの鉄矢を放ったが、いずれも軽々と全身をひるがえすキドンにかわされてしまう。

 その三人が次射の鉄矢をセットする隙間に代わる二人がキドンを挟撃するに、いしゆみで研磨されたつぶてを打つ。ところがこれもまた、キドンが鮮烈なるロンダートをこなしたによって、不発となった。

 発射体を余裕でいなすとは、この殺人鬼のまなこには、飛来時の一線がまるで釣り糸のように終始一貫つながって見えているのだろうか。


 しかれば今度は、キドンの逆襲が五人を翻弄する。

 キドンは、自身に接近しすぎたいしゆみの二人をおのおの芋刺しにした上、息絶えてみずからの肩にもたれかかった一人を持ち味の怪力で投げ飛ばし、クロスボウの三人を一括して谷底へ突き落とすのだった。


 アルコをかばって残留するは四人、直刀でもって決死隊のごとくにキドンへ総攻撃する。

 一人目の尻顎は、振りかざしたカンダをキドンのサーベルに阻止される。その寸隙に二人目が殺人鬼の首を掻くべくして斬りかかるも、キドンに鳩尾を尖鋭に蹴られたので口から泡を吹きながら倒れ込んだ。

 同時に、尻顎へははらくじりを一発喰らわせて、対抗馬がのけぞったところの鎖骨下窩(さこつかか)にサーベルを突き刺した。


 おじけぬ三人目も勇ましく進取的に応戦したが、パタンをかざそうとした籠手を痛烈に殴打されて手元がすべる。

 丸腰となった三人目は、あえなくキドンに酷薄として斬殺された。


 最後、巨体赤毛の四人目は、猛獣キドンを相手にねばりを見せる。キドンがサーベルを刈り払うに、赤毛はもれなく受け止めるのだ。

 さすがのキドンも、手応えを感じたであろう。


 合間、奥手に控えるアルコが、ひたひたと竹弓に鷲矢をつがえて(つる)を張りつめ、殺人鬼にピントを合わせつつあった。

 

 だが、さようにインテューションの鋭くも身の危険を察知したキドンが、干戈をまじえてたちまわりながらも、つねに赤毛の巨体の影裏に己の矮躯を隠し、アルコの照準を避け続けた。

 やがて、赤毛が余喘(よぜん)を保つまでに疲弊した潮時をさかいに、キドンの乱舞はいっそう苛烈性を帯びて優勢を席捲(せっけん)する。

 

 そしてついに、赤毛が困憊がために寸秒動作を鈍らせた一瞬をとらえ、キドンはその背面に旋回して肩甲骨を突き刺した。

 この一撃で右肺を貫かれた赤毛は、吐血して絶息する。


 合計にして二十七名をたった一人で駆逐するに、キドンの体面には一滴の返り血も浴びていない。

 それが筆舌に尽くしがたく美の極致たるに雄麗(ゆうれい)なりてと、ついそう思ってしまうことの凄惨性を星月夜に浮き上がらせるのだった。

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