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バルベラへ

冒険者ギルド・クナー支部の前、朝焼けの港町が目を覚まし始める頃。大剣使いのエルネスト、短槍のプラシド、弓手のエクトル、そして魔法使いのアンジェリカの四人は、簡素ながら装備を整え、背に荷を担いで集まっていた。


「じゃあ、これが文書ね。バルベラのギルド長宛。破損や盗難がないように厳封されてるわ」


エミリーが取り出したのは、蝋封された厚手の封筒だった。そこには、スィニ商会と冒険者ギルド間の協議内容が記されているという。文書の安全な搬送は、単なる雑用ではなく、組織間の信頼を担う重要な任務でもあった。


「この依頼は、冒険者としての信用が試される仕事よ。無事に届けて、報告までが任務。いいわね?」


四人は真剣な表情で頷く。


「任せてください。僕たちが絶対に届けます」


とエルネストが胸を張り、アンジェリカはそっと封筒を抱えるように鞄に納めた。


バルベラまでは、乗合馬車でおよそ一週間の道のり。山間を越え、治安の不安定な道も通る。とはいえ、四人にとっては初の長距離移動を伴う依頼だった。


「道中、襲撃や不慮の事故も考えられる。慎重に進んで。何かあれば、途中の宿場町のギルド支部に頼って」


エミリーは地図と共に要点を伝えた。プラシドが地図を手に取り、ルートを確認しながら頷いた。


「バルベラか……聞いたことはあるけど、実際に行くのは初めてだな」


「新しい土地、新しい空気……きっと、何か掴めるわよ」


エクトルとアンジェリカが笑い合う中、荷車の軋む音が聞こえた。彼らを乗せる馬車が、広場に到着したのだ。


「それじゃあ、行ってきます!」


元気よく手を振って旅立つ四人を、エミリーは静かに見送った。遠ざかる背に、声はかけなかった。ただ心のなかで、「どうか、無事で」と祈るのみだった。


種が蒔かれたその日から、芽が出るかどうかは風と水と、そして運に左右される。だが、歩み続けることだけが、その可能性を繋いでいく。

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