始まり
「もう少しで、、、出来るぞ、、、」
男は震える声で言った。疲労が溜まり、今にも果てそうな姿をしていた。
「お前に、、、この世の全てを託す、、、、!」
ぴくりともしない手を必死に抑え、道具を手に取る。
「出来た、、、これで、、、これで、、、罪を償えるっ、、、、」
充血した目からは、少量の涙が溢れる
「お前が、、、世界を救う、、、希望となる、、、人類を頼んだぞ、、、」
男は椅子から崩れ落ち、力尽きた
ーー西暦2106年。世界は崩壊した。
世界の西暦は22世紀に突入し人工知能の普及率が上がった。Dr.レイジーは20歳と言う若さで世界初の完全人型意思AIを作ることに成功し、世界に多大な影響を与えた。年を重ねるにつれ、AIはどんどん発展していき、より強く、より大きく変化した。そして人はAIとの共存を望んだ。
だが、AIは違った。
意思を持ったAIは、自分らを従える人間に恨みを持ち、世界を支配し、逆に人間を従えようと考えた。
そして、人類とAIによる大戦が火蓋を切った
人類とAIの戦いは10年以上続いた。大量に生産されていた量産型も暴走を始め、人類はAIに圧倒的な戦力で大差をつけられていた。
都市は壊滅し、地下も地上も海も空も、全てがAIに支配された。
そして、国々はAIへの降伏を始め、世界の支配者となったAIを人間はこう呼んだ。
完全者<ペフテ>とーー
それから100年が経ち、西暦は2206年。
23世紀突入。
「おい、そっちにあったか〜?」
1人の少年がくもった声で言う
それに応答するようにもう1人が言う
「ありません」
「見つかんねぇなぁ」
頭をかきながら、着けていたマスクを顎下に引きずる
2人は何十とある瓦礫の山でひたすらに何かを探していた
「今日は遅いので帰りましょう。ロイ」
ロイ・イテル。この灰と化した世界を生きる15歳の少年だ。
「そうだな。エリアス」
エリアス・ペッパー。ロイと共にこの世界を生きる相棒であり、人型のペフテでもある。
「やっぱ、残ってないよな」
「明日は別の場所を探しましょう。ロイ」
「でもなぁ。サプレッサーなんて落ちてるかね」
ペフテの侵略により、生き残った人間は街の瓦礫や戦いに負け、残骸と化したペフテや武器を漁り、それを売り払い金にして生活している人が大半を占めている。だが、ロイ達は違った。
「分かりません。ですが、西の方に行けばさらに良い物が手に入る可能性はあります」
今いる場所から見て、西の方向は主に市街地だった場所で、この周辺でもよく抗争が勃発していた所だ
「まぁ、このことは置いといて夕飯にするぞ」
「分かりました」
ロイは地面に薪を並べ、素早く火を点ける。バッグに入っている小さなポットを取り出し、手際よくスープなどの夕飯を用意していく。
手のひらに収まる程度の小さなパンと、野菜が少し入ったスープをエリアスに渡す
「ほらよ」
「・・・・」
夕飯を受け取ったエリアスだが、それを口にせず沈黙が訪れる
「ん?どうしたエリアス。食べろよ」
エリアスが冷静に答える
「いえ。ただ、何故私に貴重な食料をくれるのですか?私はペフテ。食べなくても生きていけますし、育ち盛りのロイには1番必要なものでしょ?」
確かに、ペフテは食べなくても生きていける体を持っている。だが、ロイの答えはもう決まっていた。
「いいんだよ。エリアスと食う飯は美味いからな」
「いつも、そう言うじゃないですか」
「当たり前だろ」
周りに瓦礫だらけのこの場所に、2人のほんのりとした時間が流れていく
それから一晩が経ち
「よしっ。武器も完成したし、サプレッサー探しがてら行きますか」
「そうしましょう」
瓦礫が散乱し、足場が不安定な場所を進んでいく2人
「このあたりか」
屋根や壁が崩れ落ちて、見るも無惨な姿になった家が何個も連なっていて、以前の姿が思い浮かぶような街並みが広がっている。
「えぇ。でも、奴らが徘徊してるかも」
「・・・・そうだな。注意していくぞ」
2人はその"奴ら"に見つからないように、静かに探し始める
「やっぱないか・・・・」
高価なものはきっと先客に取られているだろうし、武器として需要の高いものは国が回収していてもおかしくない。
ロイとエリアスもあまり期待をせず、ため息を吐きながら探していた。
「お!」
ロイが何かを見つけ、声を出した。
瓦礫の隙間に、銃のストック部分が見えていた
「エリアス!手伝ってくれ!」
ロイ1人の力では引っ張ってもびくともせず、エリアスに助けを求める。
「3.2.1で引っ張るぞ」
「えぇ」
「3…2…1!!」
「っ!」
ロイとエリアスは同時に引っ張ったが、エリアスが力を込めすぎて瓦礫の山が雪崩のように、2人に押し寄せていく。
「やばっ!」
すかさず、エリアスはロイを抱えて抜け出した。
「大丈夫?ロイ」
「ん?あぁ....」
ロイはどこか恥ずかしそうにエリアスに言う
「そのぉ、、降ろしてくれないかな、、?」
ロイはエリアスにお姫様抱っこをされている状態だった。
「今、降ろすわ」
エリアスも慌てた口調で言った。
「色々大変だったけど、お目当ての物も手に入ってよかったよかった」
「流石、ロイ」
「いやいや、エリアスのおかげだよ」
ロイは照れくさそうにそう言った。
「やっと完成した〜!」
「おめでとう」
この世界で生き抜くためには必須な武器はやはり、遠距離を得意とする銃なんかが主流であり、エリアスのようなペフテを仲間につけている人はあまりいない。
「相変わらず堅苦しいなぁ」
「そんなことないです」
エリアスとは10年以上もの付き合いがあるが、あまりタメで話すような性格をしておらず、いつも敬語なのか、よく分からない話し方をしてくる。
「そんなことあるわい。早く、先に進むぞ」
ロイが先に行こうとするとエリアスが
「待って、ロイ」
と言い、服の後ろを掴んで後ろに連れ戻した。
「ど、どうした?エリアス」
ロイが少し、おどおどしながらエリアスに尋ねる
「見て、あそこ」
「あ、あれは!」
2人の視線の先には、遭遇することを恐れていた奴がいた。
「コムニスよ」
コムニス。2本足で立ち、体格は約2mほどで細長い腕に指はなく、代わりに先端が鋭く尖っている。
人間に敵対する1番、一般的なペフテである
「数は、、、1体か」
「どうするの?ロイ」
奴らの強さは武装した人間と張り合えるほどで、ロイには遠距離の銃に加え、エリアスと言う強力な味方もいる。
「よし、戦おう。行けるか、エリアス?」
「はい」
ロイは息を込めて、言う
「よし。行くぞ」
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