表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煙島のアリア  作者: 酉月(ゆうげつ)
15/15

15 久しぶりの食卓

おばばはアリアの額に手を当て、熱が引いていくのを感じた。


「ふぅ…やっと落ち着いたかのう」

おばばは囁くように言い、湿った布でアリアの顔を軽く拭きながら、微かに笑みを浮かべた。

山小屋に着いて二日は経っていた


トムも、少し離れたところで見守っていたが、アリアの呼吸が穏やかになったのを確認すると、緊張で固まっていた肩をようやく下ろした。


おばばはトムに目を向けた。

「完全に熱が下がったわけじゃないが、ひとまずは危険な状態から脱したようじゃ。あんたも安心していいぞ」


トムは、何度もこわばった拳を開いたり閉じたりした。

「あぁ、ありがとうございます。本当に…よかった」


おばばは苦笑しつつ、湯気の立つお茶を差し出した。

「ほれ、これでも飲んで少し休むがいい。わしらも無理して倒れたら、この子を見てやる者がいなくなる」


「そうですね…ありがとうございます」

トムは礼を言ってお茶を受け取ると、暖かい湯気に包まれたその香りに、少しだけ心が落ち着くのを感じた。


おばばは火のそばで薪を足しながら、炎の揺らめきをじっと見つめていた。

「この娘も、色々なことを抱え込んでおるんじゃな。夢の中で戦ってるように見えたわい」


トムはアリアの顔を見た。彼女の安らかな寝顔にトムは久しぶりに笑顔を見せた。


* * * * * *


カイ団長とリサ、息子のジンはリサの実家へ着いていた。


家にはリサの母親と父親がいた。

「おぉ、お帰り。久しぶりだねぇ!」

リサの母親は温かい笑顔で3人を快く迎え入れ、すぐに家の中へ案内した。


父親も彼らを見て、穏やかな声で尋ねた。

「メグはどうしたんだ?一緒じゃないのか?」


カイ団長は軽いため息をつきながら答えた。

「途中で高熱を出してしまって…今はマルタおばばと一緒に山小屋で休んでるんです。この町で食料を調達したら、迎えに行くつもりです」


「そんな…大丈夫なのか?」

父親は驚いた顔をして心配そうに問いかけた。


リサが、心配する父親に優しい口調で言った。

「父さん大丈夫よ。おばばがついているし、すぐに回復するはずよ」


その時、ジンがお腹を抑えながら不満げに声をあげた。

「それより、おばあちゃん!何か食べさせてよ!もう腹ペコで倒れそうだよ!」


「はい、はい、わかった、すぐに用意するから待って」

リサの母親は腕まくりをしながら台所へ向かった。




豪華な料理がテーブルに並べられ、温かな食事の香りが家中に広がった。 ジンはいきなり料理に飛びつき、夢中で食べ始めたが、リサとカイ団長は久しぶりにテーブルに付いて食事ができることに嬉しさが込み上げた。


リサの父親がふと窓の外、山の方を見つめながら静かに口を開いた。

「メグはいくつになったか?」


「…もう15歳よ。早いものね。ここに来たときはあんなに小さかったのに…」


父親は軽いうなずき、何か思い出したような表情を浮かべた。

「15歳か…。もうそんな年か…」


リサはフォークを手にしながら、父親に聞いた。

「ところで…今、町の話題は何かある?」


父親に代わってリサの母親がその質問にすぐに反応した。

「王様がご成婚されるのよ。それでいろんな国から人が来るだろうから、今から商品をたくさん作っておこうって、みんな張り切ってるよ」


「王様が遂に結婚か…。あの王様は、剣に夢中でまだ結婚には興味がなさそうなんだけど、やっぱり国のためとなれば話は別か」 カイ団長が感慨深く話した。


ジンは口いっぱいに料理を頬張りながらも、話に耳を傾けていた。

リサは笑いながら、ジンの頭を軽く撫でた。

「まったく、食いしん坊なんだから。まぁでも、旅人の私たちにはあまり影響がないかもしれないけれど、平和で暮らせるならそれが一番よね」


「そうだな…」リサの父親が深くうなずいた。


「お前たちは食料を調達して、アリアのところへ行くんだろう?ならば、また帰りに家に寄りなさい」


「…父さん、私たちそのまま次の国へ行かなきゃならないの」

リサは戸惑いながら言った。


「ちょっと、メグに話をしなければならないことがあるんだ」

父親は真剣な顔でリサを見た。


「何の話をするんですか?もしよければ先に聞かせてもらえませんか」

カイ団長は思わずフォークを置いた。


「来たときに話す。必ず連れてきてくれ」


リサは無言で母を見るが、母は目を伏せて目の前の食事を見ていた。リサの父親が話す内容をどうやらわかっているらしい。

「まさか父さん、結婚話とかじゃないよね?」

リサは冗談めいて言ったが、ジンは驚いて言った。


「え!冗談だろ。何でメグが先に結婚してんだよ!俺だってまだなのに!」


「いや、そうじゃない。そうじゃないが、きちんと伝えておかなければならないことがあるんだ」

父親の真剣な表情と、母親の口をつぐむ様子から、ただ事ではない何かがあることを皆が感じていた。

毎週日曜日『午前8時』に投稿します。

お気に入り登録、ブックマーク、☆の評価の程、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ