45 魔獣ヴイーヴル3 ~第一野外演習場~
「分かった。一旦、薙ぎ払う! お前が合図を出せ」
俺は体の向きを変えて、銃口をガルムに向けると、何時でもいいと合図を送る。
「かしこまりました」
ブランは、目の前のガルムを電撃で倒しつつ、ウインド・ブレードで周囲のガルムを吹き飛ばすと大声で叫ぶ。
「引きます!」
ブランが引くタイミングに合わせて、次から次へと湧き出てくるガルムに向けて掃射を開始する。
パパパパパッ パパパパパッ パパパパパッ
「キィイ―――」
銃弾を受けたガルムが、悲痛な叫び声を上げながら次から次へと大地に倒れていく。ガルムの断末魔は聞いていて気持ちいいものではない・・・。目に付くガルムを全て一掃すると、ブランが呼吸を整えつつ不思議そうに話し始める。
「ありがとうございます・・・。攻撃音が静かですね・・・」
襲い掛かるガルムに、殺されかけた人だと思えない発言を聞いて、コイツも数奇者だなと思いつつも彼の問いに答えることにする。
「魔力の出力を抑えて、弾丸の速度をわざと下げているからな」
「なぜ、速度を下げると爆発音のような音が無くなるのですか?」
「あとで教える。予備の魔石に切り替えておけ」
説明している余裕などない。今のガルムの強襲で、魔力制御している余裕などなかったはずだ。直ぐに人工魔石を交換させないとまずい。
「失礼いたしました。直ぐに交換いたします」
容器から取り出された魔石は、2つともに割れる寸前まで亀裂が進行していた。魔石の交換を確認すると、ブランの体力や魔力面で問題がないか確認するために口を開く。
「まだやれるか?」
「問題ありません。お任せ下さいませ」
彼の目を見ると疲労を感じさせるが、十分なやる気を感じた。
「よし。頼む」
「かしこまりました」
彼の言葉に俺は頷くと、彼に背中を預ける。
再び、単射モードに切り替え、魔石を入れた圧力容器の圧力を上げ、バレルに魔力を流すとアイアンサイトを覗きながら大声を上げる。
「威嚇攻撃を開始する!」
「いつでも構いません!」
林の中にガルムがいるかもしれないが、迷っている余裕などない。
俺は、ブランの言葉を確認し、迷わずトリガーを引く。
ドバァ―――――ン
ドバァ―――――ン
ドバァ―――――ン
遮るものが何もない広大な広場を3発の弾丸が飛翔し、爆発音に似た音が、あたり一面に響き渡る。
弾丸は、弾丸先端の急激な圧力上昇と、弾丸後縁に生じる圧力の減衰に伴う急激な圧力変動の連なりが、円錐状の衝撃波を形成することで音が生じるのだ。そして、爆発音は、弾丸が音速を超えていることを間接的に示している。
飛翔する弾丸の音は大きいけれど、射出時の爆発音や煙、反動が一切ないので、発射位置が特定され難い。しかし、弾丸とともに移動する爆発音や衝撃波の流れを感じることで、凡その射撃位置が絞り込めるはず。
そこで、時間差を付けて弾丸を3発撃ったのだ。
「気付いた! こちらにくるぞ! ガルムはどうだ!?」
「今の音で、集まってきています!」
彼の言葉を確認すると、俺は、リボルバ・カノンを連射モードに切り替え、魔石を入れた圧力容器の圧力を下げると、背後を守るブランに叫ぶ。
「分かった。俺が薙ぎ払う! お前は、ヴイーヴルとの距離を見てくれ」
「かしこまりました」
ブランは、刀を大地に突き刺し、魔力距離計を懐から取り出すと、ヴイーヴルとの距離を測り始める。俺は体の向きを変えて、高台を駆け上がるガルムに銃口を向け、迷わず射撃を開始した。
パパパパパッ パパパパパッ パパパパパッ
カチッ ガシャン ガシャガシャ
「距離800です」
冷静な声音でブランが距離を俺に伝えた。
林の中から次から次へと飛び出してくるガルムに、ヴイーヴルを迎え撃つ余裕がないと感じて、射程ギリギリまでガルムを薙ぎ払い続けることにする。
「500で教えてくれ。あと、袋から予備の弾入り弾倉を全部、出しておいてくれ」
「かしこまりました!」
パパパパパッ パパパパパッ パパパパパッ
「700」
ブランは、俺の気が散らないように小さい声で距離を口ずさむ。
パパパパパッ・パパパパパッ・パパパパパッ
カチッ ガシャン ガシャガシャ
「600」
パパパパパッ パパパパパッ パパパパパッ
「500です」
ブランが冷静な声音で指示した距離を俺に伝えた。
次から次へと林から飛び出してくるガルムに切りがないと感じながら、高台の麓を見渡すと、無数のガルムの屍がころがり、生きているものと死んでいるものの区別がつきにくくなりつつある・・・。
「ガルムが尽きない。湧いて出てくるようだ。ヴイーヴルの攻撃範囲は100前後だよな?」
俺の問いに、ブランは魔力距離計から目を外すと、こちらに顔だけ向けて話し始める。
「その通りでございます」
ヴイーヴルの攻撃範囲を読み間違えると、命に係わることになるだろう。俺の問いにブランの同意を確認すると作戦を伝えるため口を開く。
「200まで粘る。距離は?」
ブランは、再び魔力距離計を覗き込むと距離を伝えるため口を開く。
「450です」
1秒でも早く、ブランでも対処できる数まで減らす必要があるけれど、同じようなことばかり続けていてもダメだと考え、やり方を変えることにする。距離100がデッドラインだなと思いつつ、最悪な事態にならないように心で祈った。
俺は、ブランに攻撃の継続を伝えるため口を開く。
「攻撃を続けるぞ」
「承知しました」
ブランの返事を確認すると人工魔石の出力を上げて、林の木の根元を狙い射撃を開始する。
ドドドドドッ ドドドドドッ ドドドドドッ
カチッ ガシャン ガシャガシャ
「300」
ドドドドドッ ドドドドドッ ドドドドドッ
射撃により、木が次々に倒れていく。
倒れた木は、互いに絡み合い自然のバリケードが出来上がる。バリケードができると同時に、ブランが指示した距離を大声で叫ぶ。
「200です!」
バリケードが機能しガルムの足止めを確認すると、ヴイーヴルを撃ち落とすためブランに指示する。
「交代だ!残りのガルムを頼む」
ブランは、魔力距離計を懐に仕舞い、大地に突き刺した刀を再び抜くと、僅かに残ったガルムに向けてウインド・ブレードを放ちながら口を開く。
「お任せください!」
カチッ ガシャン ガシャガシャ
迫りくるヴイーヴルに備え、弾倉を交換し、再び、単射モードに切り替え、魔石を入れた圧力容器の圧力を最大まで上げる。
準備を整え、深呼吸し、震える手と心を落ち着かせ、リボルバ・カノンを構えるとアイアンサイトを覗く俺の目とヴイーヴルの目が合った。
グォオオオオオ―――――
大地を揺るがすような咆哮。
俺を威嚇するような叫びをあげると同時に、ヴイーヴルの口から炎の玉が出現し、火の玉が徐々に大きく成長する。
俺は、火の玉を吐きだそうとするヴイーヴルの目を睨みつけながら大声で叫ぶ!
「堕ちろ!!」
叫びと同時に3度、引き金を引く。
ドバァ―――――ン
ドバァ―――――ン
ドバァ―――――ン
初弾が、炎の玉を消滅させると同時に、上顎を吹き飛ばし、2発目が、首の付け根に当たり風穴をあけ、3発目は翼の付け根に当たり、翼を吹き飛ばす。
グァアアアア―――――!
ヴイーヴルは断末魔の悲鳴をあげて、地面に落下していく。




