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36 解けた封印 ~オプスキュリテ王国~

統一歴1945年6月10日。

中央大陸オプスキュリテ王国、王都ソンブル。

王宮テネブレの一室。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

首都ジャルダン・エデンにあるラファエラの結界内から王宮テネブレの自室に無事、転移できたが、怪我をした状態で、ベリアルと魔人の2人を抱きかかえながら結界を抜け、長距離を移動したため魔力が底を付いた。立つこともままならずベリアルと魔人を床に放り出し、その場に座り込んだ。


俺は、ラファエラに切り付けられた背中や翼の傷口に手を当て、応急的に出血を止め、痙攣を続けるベリアルを一瞥しながら、これまでの経緯を整理することにした。


事の発端は、突如、レゼル王国首都ジャルダン・エデンで感じたベリアルの魔力と同時に、謎の人外な魔力とラファエラの膨大な魔力を感じたことだ。3つの魔力と位置から、独断でベリアルが協定を破り、ラファエラの結界内に進入したのではないかと悪い予感がした。正直なところ、ベリアルが消されようとどうでもいい。協定を破り、殺されたのならば自業自得だ。


しかし、協定破りを理由として、ラファエラに付け入るスキを与え、我々の計画がばれてしまう可能性があることが一番の問題だ。面倒なことをしてくれたものだと頭が痛くなったが、ベリアルを連れ戻すことにした。


魔力の発生位置を頼りに現場に向かうと、予想通りベリアルが結界内に侵入していた。人間界に堕とされて間もない悪魔は、レゼル王国内で身動きが取れないラファエラを見て馬鹿にするが、聖霊を従える6枚羽の大天使に真っ向勝負で勝てる悪魔などいない。人間界にいる12柱の悪魔が束になって戦う必要がある。しかし、我々悪魔も一枚岩ではない・・・。


案の定、ベリアルは返り討ちにされていた。


ベリアルを連れ戻す代償は、悪魔や天使にとって命と同じくらい大切な翼が1枚だった。更に、もう1枚の翼が切り裂かれた。失った翼は、30年程度で元に戻るが、翼の傷は我々にとって最大の屈辱だ。この怒りや憎しみを誰にぶつけるべきか・・・。


しかし、悪いことばかりでもなく、収穫も得られた。瀕死の状態であるが、完全体の魔人を1人連れ出せたことや、ベリアルが、4人の使徒だけで倒された点も驚きだった。


今まで、我々悪魔は、使徒との戦闘で、追い込まれることがなかったため、我々が注意すべき存在は、ラファエラのみだった。そこで、8柱の悪魔が協力しながらラファエラを陽動することで、彼女をレゼル王国から身動きが取れないようにして、我々はレゼル王国以外で自由に行動していたのだ。


しかし、今回の戦闘でベリアルがたった4人の使徒に倒されたのだ・・・。この敗北の意味は大きい。なぜなら、使徒だけでレゼル王国を防衛できることを意味する。つまり、ラファエラがレゼル王国から離れて自由に行動できるようになった可能性があるからだ・・・。

非常にまずい状況になりつつある。


そして、人外の魔力が使徒のもので、不思議な魔道具を使用していた点も気になる。あの場で使徒を殺しておきたかったが、無傷のラファエラと戦いつつ、ベリアルを倒した使徒を殺せるとも思えなかった。我々は計画を大きく見直さなければいけないかもしれない・・・。


これからのことを色々と考えていると、突然扉が開き、一人の女性が慌ただしく飛び込んできた。

「リュシフェルさま! あぁぁぁ。美しい黒い翼にお怪我が・・・。ベリアルさまも大怪我を・・・」

疲労で視界がぼやけるが、声音からオプスキュリテ王国の女王セレネのようだ。彼女は、心配そうに俺を見つめると、翼に優しく触れ、今にも泣きだしそうな声で話した。そんな彼女を心配させないために、状況を説明することにした。

「セレネか・・・。案ずるな。俺は直ぐに治る。だが、ベリアルとこいつはまずい。直ぐに治療が必要だ」

俺の説明にセレネは、涙が溢れる目を拭き真剣な面持ちで口を開いた。

「分かりました。直ぐに支度を整えます」

「頼む」

俺の言葉を聞いたセレネは、「お任せください」と一言いうと、慌ただしく部屋を退室した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

暫くすると、担架を抱えた使用人や医士とともにセレネが部屋に戻ってきた。

彼女は、ベリアルと魔人を担架に載せ治療室に運ぶように指示すると、俺の元に駆け寄り、担架に乗るように促した。俺は無言で頷くと、セレネに支えられながら担架に移動し診療室に運ばれた。


診療室に到着すると、一旦、ベッドに寝かされた。診察台の奥の治療室に目を向けると、青い水溶液で満たされた大きなガラス容器が幾つも置かれているのが見える。治療用の薬品が入れられたあの溶液に浸れば、ある程度の欠損であっても再生が可能だ。更に、悪魔の再生力と併用すれば、それなりの怪我も短期間で治癒可能だ。


俺は、ベリアルと魔人の治療を優先するように指示し、怪我の治療と青い溶液で満たされたガラス容器に全身が浸される所までを静かに見届けた。半年か1年は出られないだろうなと考えていると、俺の治療のため、数名の医士が俺をベッドから起こし触診を始めた。


そんな俺を心配そうに見つめていたセレネが恐る恐る話しかけてきた。

「何があったのですか?」

半殺しにされた2名と翼を切られた俺を見れば、只事ではないと思うだろうなと思いつつ、セレネの質問に、起きたことを隠す理由もないので、俺は苦笑いをしつつ、ありのまま答えた。

「ベリアルが、レゼルのラファエラにちょっかいをだしてな。助けに入って、このザマだ」

俺の答えにエレネは、腕組みしながら目を吊り上げて答えた。

「それでも美しい翼に傷を付けるなんて、許せませんわ」


セレネは、俺が翼を命と同じくらいに大切にしていることを知っているが、悪魔と大天使ラファエラとの間で結ばれた協定のことを知らない。今回、協定違反をしたベリアルを助けるため、俺自身も協定違反をしてラファエラの結界に飛び込んだのだ。何をされても文句は言えないのだ・・・。協定の内容を彼女に説明すれば、事態を理解すると思うが、協定を人間が知る必要がないし、話そうとも思わない。そこで、当たり障りのない範囲で丁寧に説明することにした。


「ベリアルとラファエラの戦闘中に無理やり割り込んだのは俺だ。翼を意図的に攻撃した訳でもないから仕方ないさ」

俺の答えにセレネは納得いかない様子だが、正直な所、彼女が納得しようがしまいがどうでもいい。しかし、オプスキュリテ王国と女王セレネは我々の最大の支援国。無下に扱えないのだ。彼女は目を瞑り、暫く沈黙が流れた。


「リュシフェルさまがそのようにおっしゃるのであれば、私から申し上げることもありませんが・・・、ラファエラは、それほど強いのですか」

セレネは、自己責任だとする俺の意見に納得できないまでも、これ以上追及しても意味が無いと察したのか、悔しさを顔に滲ませながらも話題を変えてきた。

「あぁ。強いな。俺でも勝てない。ただ、戦いは殴り合うだけではない。相手の弱い所を見極め、そこを攻めることが重要だ」

ラファエラだけならば互角に戦える自信もあるが、問題は、ラファエラが従えている聖霊だ。あの子らが、『消えろ』と念じただけで、この世のあらゆるものは消えてなくなる。どうやって手なずけたのか分からないが、正面から戦うなど自殺行為だ。しかし、彼女らにも弱点はあるのだ。


「さすがリュシフェルさま。心力強いお言葉・・・計画は、このまま進めて宜しいですか?」

俺の言葉にセレネは目を輝かせて頷くと、計画をこのまま進めるかどうかについて確認してきた。今回の襲撃で、俺は、状況が変わりつつあることを知ることが出来た。そこで、変わりつつある状況を見極めて、計画を練り直すか、状況が変わる前に計画を実行するのか悩ましい。今の計画で進めるならば直ぐに動く必要があるだろう。


「そうだな・・・。このまま進めよう。ただし、急がせるべきだ」

ラファエラの使徒から感じた人外の魔力と不思議な魔道具が気になるが、一人だけならば十分に抑え込める。とにかく急がなければいけない。

「承知いたしました。急がせましょう」

セレネは、俺の指示を確認すると一礼して部屋を退出した。

ブックマークしていただいて、ありがとうございました。


8月ごろに小説を書き始めて二か月がたちました。第1章は山場を越え、幾つかの閑話が続いて1章が終わります。


プライベートが忙しいので、しばらくの間、更新頻度が落ちますが継続していきます!引き続きよろしくお願いします。

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