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33 召喚された悪魔2 ~悪魔ベリアル~

ジャンは俺の言葉に悪びれた様子もなく話し始めた。

「お前が逃げるからだろう?」


魔術の規模から、俺が魔術を受けても避けても関係ないなと思いつつ、これ以上、被害を広げないために、観戦席の状況を確認すると、演習場出口付近で数人の技官らが退避する姿が見え、ステージ付近は、武官の主審だけが俺とジャンの戦いを見守っていた。


「主審。早くけが人を運び出せ!退避しろ!」

俺の言葉を聞いた主審は、「承知いたしました」と答え、大けがをした技官に駆け寄ると、技官の肩を抱えて退避し始めた。


俺の指示に、ジャンは鼻で笑いながら話し始めた。

「逃がした所で、お前との決着が付いたら、何もかも消すから意味がない」

ベリアルと契約した可能性があるジャンが、自我を保てているのか?してはいけないことを判断できるのか?そして何より、ジャンはジャンなのか?全く分からなかった。俺は、彼の発言の真意を確認することにした。


「何を言っている?正気か?」

俺の言葉を聞いたジャンは、俺から目を逸らさず、満面の笑みを浮かべながら、両手を広げ、身振り手振りを交えて話し始めた。


「正気だ。俺を認めないクソ共を力でねじ伏せて、命乞いをさせてから殺してやる。ざまぁだな」

彼は、職場で上手くいかず、卑屈になっていたが、俺が知る限り、無差別殺人を仄めかすような発言は一切なかった。そして何より、気に食わない相手と試合や決闘を繰り返し、不満を解消してきたはずだ。人格が明らかに変わったと感じた。


このままでは、命を掛けた戦になることが予想されたが、ジャンと命を掛けて戦う覚悟が出来なかった。戦わず、ジャンに自我を取り戻してほしかった。しかし、一連の言動から、無理ではないかと半ば諦めの気持ちもあった。俺は、最後に質問した。

「お前はそんなことをするために、力を求めたのか?」


俺の質問に、ジャンは、彼がベリアルと契約する前に、俺が彼に言った言葉をそのまま返してきた。

「俺を止めたければ、殺す気でかかってこい!知識?思考力とやらが、この圧倒的な魔力の前で通じるか試してみろ!? 魔力が全てだと証明してやるよ」


ジャンの言葉に俺は、これ以上の話は無駄だと感じ、覚悟を決めた。

「よく分かった。俺以外を殺すというならば、この場で決着をつけるしかないな」

俺は、弾丸の再装填と人工魔石の交換を終えたハンドカノンを構えた。

ジャンは、撃ってみろと言わんばかりに、赤い目を細めて胸を突き出し、両手を広げた。

俺は、連射モードに切り替え、トリガーを引いた。


ド、ババババババババァーン

演習場に射出時の衝撃波による轟音が響き渡り、装填された弾を数秒で打ち切った。


「グハァァァ」

ジャンは、口から黒い液体を吐き、黒い液体が噴き出す胸を両手で押さえ、よろよろと両膝を地面につけた。彼は信じられないとばかりに、液体が滴る両手を見ながら話し始めた。

「何だ。今のは・・・?」


ジャンの質問に、俺は冷静な声音で答えた。

「目が覚めたか?契約を破棄しろ」

「クソォ・・・」

ジャンは、両膝を地面に付け、上半身をふらつかせると、その場で倒れて痙攣を始めた。


俺とジャンとの戦闘を黙って見ていたベリアルは、倒れたジャンを一瞥すると、独り言を話し始めた。

「普段であれば、赤い使徒の2、3人ならば、一瞬で血祭だが・・・。失敗作か?」

ベリアルは、俺に目もくれることもなく、腕組みしながら首を傾げて、独りでぶつぶつと呟いている。


目の前のベリアルは、ジャンと比べ物にならない位にヤバいと感覚的に感じた。

俺は、ベルトに通した小さいバッグから、対大型魔獣用に作った弾丸を取り出し、ハンドカノンに装填すると、バレルを伸ばし、人工魔石を入れた圧力容器の圧力を上げて出力を最大にセットした。


緊張感なくブツブツと呟き俺を完全無視するベリアルに話しかけた。

「ジャンを返せ!契約を破棄しろ」


俺の叫びに、ベリアルは、こちらに顔だけ向けてニヤッと笑うと、高笑いしながら口を開いた。

「穴だらけにしておいて、面白いことを言うな・・・!? あぁ。壁に掛けて飾るのか!」

ベリアルは、なるほどと手を打った。

俺は、真剣に会話しようとしないベリアルに、「ふざけるな」と大声で叫んだ。


俺の叫びとともに、突然、大きな爆発音と閃光ともに演習場の窓ガラスが全て吹き飛び、中央の円形ステージに全身赤尽くめの4人が現れた。その中の一人の騎士は、見覚えがある6枚の翼が模られた大きな杖を持っていた。全身赤尽くめの3人の騎士が、抜刀すると、ベリアルの前に展開し、その背後に、場違いな赤いミニワンピースにマントを羽織ったラファエラが移動した。


「エリック。遅れてごめんなさい!よく耐えたわ・・・エエッ? 圧倒しているの?」

ラファエラは、驚きの表情を浮かべながら俺に話しかけた。しかし、俺は、圧倒するほどの余裕がない。ベリアルに対峙し、指が震え、もう駄目だと死も覚悟していたが、ラファエラとアンジェ・ルージュの騎士の介入に、一先ず安心した。


俺は、目の前の何かについてラファエラに尋ねた。

「ラファエラさま。あの黒いのは何ですか?」

俺の質問に、ラファエラは躊躇なく答えた。

「2枚羽の悪魔と魔人よ」


ラファエラは、対峙する何かを悪魔。倒れて痙攣しているジャンを魔人だと言い切った。悪魔は何となく分かるが、魔人が何なのか知らないし、聞いたこともない。少なくとも人間ではないようだ。しかし、倒れているのは人間だった。俺は、倒れている魔人について、ラファエラに報告するため口を開いた。

「倒れているのは、ジャンです!」


俺の報告に、ラファエラは、驚きの表情を浮かべながら尋ねた。

「完全体じゃない!何があったの?」

ラファエラの質問に、俺はありのままを報告した。

「悪魔が突然出現し、ジャンは契約の求めに応じていました。その後、魔人は、何もかも消すと言っていました」


ラファエラは、地面に倒れ痙攣するジャンを一瞥すると、悲しげな顔で呟いた。

「魔人は人間に戻せないの。あなたの判断は正しいわ。このまま消すしかないわね」

仲間の命を守るため、瀕死に追い込んだのは俺だが、消すしかないと言うラファエラの言葉に、この世界の命の軽さにやるせない気持ちを感じた。

31話にいいねを入れていただいて、ありがとうございました。


この作品は、魔法や魔術、魔力の定義やメカニズムが他作品と違うところがあるので、分かりにくいかも知れません。話も進んできたので、そろそろ用語集?を追加しようと考えています。

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