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28 襲撃前2 ~行政府セントラル分室~

ラファエラのお願いは、武官で研究員を一時的に受け入れてもらいたいとのことだが、話を聞く限り、厄介案件だった。俺と同じく、前世の記憶があり、知識量が多いらしいのだが、言うことを聞かないらしい。暫くすると、扉をノックする音が聞こえ、一人の男性武官が入室してきた。

ラファエラは、彼を手招きしてソファーの側まで呼び寄せると話し始めた。

「彼がジャンよ。私の直下で、範囲攻撃魔術フラッシュ・オーバーのメカニズム解明と強化に関する研究をさせているのよ」


ラファエラが事前に説明してくれた内容を話し終え、武官に顔を向けると指示を出した。

「ジャン。自己紹介と研究について説明しなさい」


ジャンと呼ばれた武官は、俺を一瞥すると自信ありげに話し始めた。

「ラファエラさま付き研究支援室所属研究員。魔術士ジャン=クロード・ド・ロマンだ。俺は、空間に飛散させた粉塵に魔力放射することで着火・爆発させる魔術を研究している。空間に飛散させる粉塵は、小麦粉、木屑、骨粉でも粉末状なら何でもいい。敵の上空に粉末を撒いて、魔力を流せば爆発だ」


魔力を流し、爆発に到る説明があると思い、ジャンの顔を見たのだが、彼は、ドヤ顔で俺を見返した。

「それだけか?」

あまりに稚拙な説明に俺は、思わず本音が漏れてしまった。


俺の言葉にジャンは、顔を真っ赤にして、大声で話し始めた。

「他に何か説明が必要か!?敵を効率的に殺せるし、建物も吹き飛ばせる」

彼は、馬鹿にされたと感じたのかもしれない。しかし、メカニズムについて研究をしていると紹介されて、メカニズムを説明しない理由が分からなかった。そこで、彼の真意を確認するため、詳しく聞いてみることにした。

「なぜ、粉塵を使う?粉塵に魔力を流すと爆発するのは何故?」


ジャンは、俺の追及に、目を吊り上げて話し始めた。

「成果が全てを物語っている。細かいことなど、どうでもいいだろ」

彼は冷静さを失いかけているので、感情のままに話している可能性もあるが、恐らく、メカニズムを知り、理解する必要性を全く理解していないように感じた。そこで、研究員として働いてもらう上で、俺の考え方を知ってもらう必要があるなと考えて話を続けた。

「新しいアイデアは、知り、理解して、何故か分かることで生まれる。丁寧に理解していく作業は最も重要だ」


俺の言葉にジャンは、俺を指差ししながら、ムキになって質問してきた。

「偉そうに言うが、騎士さまは、答えられるのか!?」


会話が成立しないことに、メンドクサイ奴だなと半ば呆れつつ、前世の知識を思い出し頭の中を整理して、ジャンの問いに答えるため口を開いた。

「粉塵を使用する理由は、着火エネルギを少なくするため。単位体積あたりの表面積も大きくなるから、支燃物との接触が促進されて、爆発的に燃える。燃焼エネルギが大きい粉末。例えば金属粉を選択すればより爆発力を増すことができる」


俺の説明にジャンは、「そんなの常識だろ」と鼻で笑いながら答えた。

しかし、彼の自信満々な態度に違和感しかなかった。例え、前世の知識があり、現象として知っていたとしても、高度な科学技術に関する教育や職業に携わった経験がなければ知っているはずがないからだ。そもそも、彼の態度や行動を見る限り、品性や品位が感じられず、知識に対する敬意も感じられない。とてもじゃないが、まともな教育を受けてきたように感じられなかった。


俺は、ジャンに真意を確認するために口を開いた。

「知っていたのか?」

俺の問いにジャンは、「当たり前だ!」と間髪入れずに答えた。


「普通、知らないはずだが・・・。まぁいい。説明してみろ」

彼の問題点は、自分が何も知らないことを知らないことだ。正直な所、彼の考え方が間違えていたとしても、俺には関係ない。しかし、俺の部下として研究するならば、自分が無知であることを認識してもらう必要がある。なぜなら、研究者としての第一歩は、無知な自分を受け入れることだからだ。

そこで、ジャンが説明できないと分かりつつ、再度、粉塵を使用する理由の説明を求めた。

「・・・・・」

俺の問いに、彼は説明しようと口を動かそうとするが、考えを口に出せずに黙ってしまった。


そんなジャンを見て、ラファエラが、ゆっくりと話し始めた。

「あなたは、知っていても、理解していないし、何故か分からないから、自分の言葉で説明できないのよ。新しいアイデアが生まれない原因は、そこよ!分かる?それが分かるまで、エリックの所で勉強し直しなさい」

ジャンは、怒りで顔を真っ赤にしながら下を向き、唇をかみしめて黙ってしまった。


ラファエラは、黙って俯くジャンを一瞥したのち、俺を見て話し始めた。

「エリック。彼はね。知識はあるのだけど、何も分からないのよ。分からないくせに。分かっているフリをするから、成長が全く無いのよ。そこで、あなたの仕事のやり方を見せてあげてほしいのよ」

彼は、研究室をたらい回しにされて、行く当てがなくなり、仕方なくラファエラが面倒を見ていると事前に説明を受けていたのだが、彼と話をして、研究者に全く向かないと感じた。


ラファエラは、彼を変えたいと考えているようだが、この年で、考えを変えるのは難しい。彼を受け入れ、彼に適した仕事をラファエラに提案しようと考えて、口を開いた。

「人手が足りないので、私は構いません」

ラファエラは、頷くとジャンを睨みつけながら話し始めた。

「ジャン。いいわね?」

27話にいいねを入れていただいて、ありがとうございました。


次回も不快なお話です。

ジャンくんは、決して悪い子ではありませんが、自己顕示欲が強い上に、素直になれないので、職場で上手くいきません。この後、拗らせてしまい茨の道を進みます・・・

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