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24 再会1 ~行政府セントラル~

統一歴1945年5月25日。中央大陸、レゼル王国行政府セントラル本部・・・。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

アルマに見学会に行く約束をしてから1週間。

今日は、アルマと一緒に、乗合馬車に乗って、セントラルに向かっている。馬車に乗って緊張する私をアルマが見て、「緊張することないわ」と言うけれど、宮廷省時代に馬車に乗る機会など全くなかったし、そもそも平民での私は馬にすら乗ったことがないので仕方がない。


緊張している私を見て、アルマは微笑みながら見つめていたけれど、「最初の頃、私も居心地が悪かったわ」と言い、私の手の上に手を重ねてくれた。アルマは、緊張する私を気遣って、車窓から見える最近できた建物や公園、人気のお店など、色々と説明してくれた。移動はあっという間で、馬車は、セントラル本部の玄関口に乗り付けた。


受付前は、懐かしい宮廷省の制服を着ている志願者や私と同じように私服を着ている人々とともに『天使の翼』の紋章が銀刺繍されたマントを羽織る人が何人も並んでいるのがみえた。


『天使の翼』は、セントラルの紋章。

アルマも身に付けているので、志願者に同行している人たちは、セントラル現役の技官や文官、武官で間違いないのだろう。受付はスムーズで、事前にアルマから受け取った見学許可証を提示し、見学ルート内ならば自由に行動してもよいと説明され、入館が認められた。


殆どの志願者が2階に上がる中、私たちは、真っ先に玄関ホール奥の掲示板に向かった。

掲示板前に着くと、掲示された資料を最初から読み始めた。資料は、とてもよく纏められていて、イラストや図表なども併用して丁寧に分かりやすく説明されている。書かれた内容は、事実と少し違うわねと思うところや、国側に都合よく書かれているわねと感じるところも多々あるけれど、どうでもよかった。


私が欲しい情報はたった一つ・・・。

私たち二人の間に沈黙が流れ、歩く人の足音や会話する声などが静かに聞こえた。私が最後まで読み終えるのを見計らってアルマが話しかけてきた。

「新しい情報は書かれていた?」


アルマの質問に、正直なところ新しい情報は無かったけれど、書かれた内容と日々アルマから聞いていた内容が、ほぼ同じことから、アルマが、セントラルで得た情報を私に正確に伝えてくれていたことが分かった。しかし、アルマから聞く断片的な情報が整理出来ず、混乱していたのも事実だった。


「よく纏められているので状況が整理できたわ。ありがとう。アルマ。」

アルマは、今回の見学を強く推してきただけに、私の感想が気になっていたようだ。

私の感想にアルマは、ほっとした表情を浮かべたのち、話し始めた。

「一安心したわ。無駄足でなくてよかったわ」

アルマは、ほっと胸を撫でおろしたのだが、私は、今一つすっきりしない。掲示されている資料はよく纏められているのだけれど、一番知りたい情報が曖昧で、よく分からない。そこで、アルマの意見を聞いてみることにした。


「あなたの意見を聞きたいのだけれど、例えば、ここを見て。『・・・5月3日、アラン・ベルナールは白旗を掲げ降伏・・・』と書かれているから、生きて拘束されたと思うのよ。でもね。この後の文章で、『・・・反乱を主導した者たちを全員拘束し・・・』と書かれているのよ。この内容だと、アランが拘束されたかどうか分からないわ」


私の質問に、アルマは難しい顔をしながら話し始めた。

「白旗を掲げたのは、アラン一人だから名前が書かれているけれど、後半は、反乱主導者たちで一括りにされていると思うわ」

素直に読めば、アルマの言うとおり、アランも拘束されて王都にいると判断できるけど、意識的にアランの名を避けているようにも感じる。アランに関する情報は、王都にいても集まらないことも分かった。

私は、「詮索しすぎかしらね。ありがとう」とアルマに礼を述べた。


掲示板の記事を読み始めてから1時間以上経ったかもしれない。一部資料は黒塗りされていて、光の加減で消された文字が読めないかしらと頑張ってみたけれど、断片的にしか読めず内容を理解することが出来なかった。

そんな中、アルマが話しかけてきた。

「少し休憩しましょう?」

アルマは、休憩に誘ってくれた。

「ありがとう。休憩しましょうか」

私は、付き添いで立ち続けているアルマも疲れていると思い、提案を受け入れて休憩することにした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

私は、アルマに誘われて、セントラル2階の『空中庭園シエル』と呼ばれる芝生が広がる広場に案内された。広場は、職員とその家族と思われる人々がゆったりと過ごしていた。

アルマは、周囲より少し小高い丘の上に、日差しが程よく遮られる木陰を見つけると、いつの間にか用意していたバスケットの中からレジャーシートを芝生の上に広げて、バスケットを置き、シートが飛ばされないように準備した。


準備を終えるとアルマは、私に話しかけた。

「売店で軽食を注文してくるから、ここで待っていて?」

私も手伝うべきかしらと声をかけようとしたけれど、荷物を見ていないと駄目よねと思い、「分かったわ」と変事をした。


売店に向かおうとしたアルマは、何かを思い出したように話しかけてきた。

「向こうに、3階を繋ぐ渡り廊下がみえるでしょう?王宮とセントラルを繋いでいるから、私のアーロンさまが通るかもしれないわ・・・」

アルマが言い終わる前に、私は口を開いた。

「相変わらずアーロンさまに熱を上げているのね?」

私の言葉にアルマは、むきになって話し始めた。

「そんなこともないわ。からかわないで」


真っ赤になるアルマもかわいいわねと思いつつ、私は「ごめんなさい」と謝り、アルマをなだめてから話し始めた。

「それっぽい人が廊下を通れば、直ぐに知らせるわ」

「お願いよ!」

アルマが一言いうと、少し離れた所にある売店に向けて駆け出した。

そんなアルマを微笑ましく眺めていると、彼女は、遠くの売店でジャンプしながら渡り廊下を指さしている。

手を振り答えると、私はあまり興味がない渡り廊下を見つめた。


私と渡り廊下の間に広がる空間は、まるで天国のよう。

目の前を楽しそうに走り回る子供たち。木陰でレジャーシートを広げて昼食をとる家族。初々しい恋人たち。

笑い声と笑顔がいっぱい。幸せで溢れている・・・。


アランと二人で仕事をしていた頃ならば、微笑ましく眺めることが出来るはずなのに、今の私には、他人の幸せを受け入れる心の余裕が無かった。笑い声が棘のように心に突き刺さる。胸が締め付けられ、私は目を瞑り、両手を胸の前で握ると神様に何度も何度もお祈りした。


―――彼が生きていますように。アリシア女王陛下のご温情が賜れますように・・・


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