22 呼び出し5 ~王都にて~
突然のダンテスの告白に、俺とアルマは何度も互いの目を見つめた。セントラル内で噂される血の贖罪と反乱者首謀の自決は嘘だということか!?それ以上に、陛下が簡単に赦すとも思えなかった。そこで、ダンテスに俺の疑問をぶつけることにした。
「ちょっと待った。ダンテス。今の話は本当か?領主軍が壊滅だぞ。赦されたのか!?」
俺の叫びにも似た質問にダンテスは、相変わらず顔色一つ変えず答え始めた。
「アーロンさま。1週間前、陛下が、ドヤ顔で見せびらかしていたリボルバカノンの開発者が彼でございます」
1週間前、アンジェ・ガルティエーヌの全騎士が離宮演習場に緊急招集され、ハンドカノンの実射試験とリボルバカノンの展示が行われた。陛下は、反乱軍から接収した新兵器だと紹介し、その素晴らしさを3時間近く語り続け、近い内にリボルバカノンの実射試験をするから、必ず出席する様に強く釘を刺した。陛下は、もの凄く機嫌がよかった。当時、機嫌が良い理由が分からなかったが、ダンテスの話を聞いて、理由がはっきりした。そして、クリステルも開発に関わっている可能性も考えられた。
「ドヤ顔か!ダンテスも言うな。クリステルも開発に関わっているのか?」
俺の質問にダンテスは思いも依らないことを口にした。
「クリステルさまは、アンヌ・マリーさまがお困りの問題を解決できる技術をお持ちだとお聞きしております」
ダンテスは、アルマがいるため、答えを曖昧にしたと思われるが、クリステルが、人工魔石に関する何らかの技術を持っていることを示唆した。
人工魔石は、陛下肝いりの研究開発だが、結晶化に成功したものの安定化しない問題が解決できず、苦労していると聞いている。たかが、町工房の女技士程度などと見下したくもなるが、リボルバカノンや浮かれた陛下を目の当たりにすると、高レベルの技術を持っていると考えられる。
「なるほど。確かに、王都から出すわけにはいかないな・・・」
クリステルが国外に出て、人工魔石に関する技術が流出するなど許されない。点と点とが線で繋がり、漸く腑に落ちたのだった。俺の言葉にダンテスは静かに頷くと話を続けた。
「アルマさま。あなたの役割は重要です。陛下は、あなたに期待されております」
「陛下の御期待に応えられるのか不安で仕方がありません・・・」
何の策も示さないダンテスの言葉は、アルマにとってプレッシャーでしかない。俺は何か良い策はないかと口を開こうとすると、ダンテスが続けて話し始めた。
「物事は柔軟に考えるべきです。そうですな・・・。クリステルさまがセントラルの受験を決めるにあたり、セントラル本部をご見学なさると思われます。そこで、偶然にも、アランに似たエリックさまを遠くに見かけることもあるでしょう」
ダンテスは、セントラル採用試験をクリステルが受ける切掛に成り得る案を示した。しかし、アランとクリステルの会わせ方が分からないし、そもそも、会わせて良いのか?という疑問が残るな・・・と考えていると、アルマが口を開いた。
「二人を会わせてよろしいのでしょうか?」
アルマの問いは、もっともだ。王都であれば行動制限のないクリステルに反乱者首謀であるアランが生きている確信を与えてしまうと、アランの生存に関する情報が洩れる可能性がある。情報が洩れれば、批判の矛先が陛下に向きかねないなと考えていると、ダンテスが口を開いた。
「生きている情報が漏れるなど、決して許されません。クリステルさまが入省され、契約を結ばれるまで、アランが生きている確信を与えてはなりません。『希望』を与えるまでです」
ダンテスの答えは、予想通りだった。しかし、日頃の陛下ならば、このように面倒なことをせず、中途採用枠でセントラルに入れてしまうはずだ。リスクを引き延ばす意味が理解できなかった。しかし、反乱終結を宣言する発表まで時間が無いことが問題だと考え、ダンテスに確認することにした。
「ダンテス。2週間後の発表はどうする?」
俺の問いにダンテスは、想定していた質問だったのか、慌てた様子もなく答え始めた。
「おっしゃる通りでございます。2週間後の首都レローズの解放と反乱の完全終息の発表に合わせて、アラン・ベルナールの死亡が発表されます。この発表は、クリステルさまに死亡の『確信』を与えてしまいます。発表が嘘の可能性があると思わせるため、2週間以内に見学を行わなければなりません」
タイムリミットが2週間しかないことに気付いたアルマは、不安そうな顔でダンテスに質問し始めた。
「クリステルは見学に行くでしょうか・・・?」
不安な表情を浮かべるアルマに、ダンテスはニッコリとほほ笑みながら口を開いた。
「クリステルさまの今の望みは何だと思われますか?」
ダンテスの質問返しに、アルマは少し考えながら話し始めた。
「反乱に関する情報。アランが生きているかどうかだと思われます」
アルマの答えにダンテスは、強く頷くと話し始めた。
「ご指摘のとおりでございます。クリステルさまが興味を引く形で情報を用意できれば、ご見学にいらっしゃる可能性がございます。どうぞ私にお任せくださいませ」
ダンテスは、俺とアルマの目を見て同意を求めた。アルマは、「お任せいたします」と答え、俺は、「問題ない」と答えた。俺とアルマの同意を確認すると、ダンテスは言葉を続けた。
「今回の作戦は、我々の連携が重要です。アルマさまは、アンヌ・マリーさまとエリックさまと一度お会いになり、ご挨拶をお願いいたします」
アルマに対する指示に、アンヌ・マリーとエリックとの面会は俺が調整すべきだろうと考え、口を開いた。
「アルマ。俺が、アンヌ・マリーさまとエリック殿と面会できるように調整しよう」
「ありがとうございます。陛下のため、最善を尽くします」
アルマは、俺とダンテスの目を見て決意表明し、今日の打ち合わせを終えた。




