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21 呼び出し4 ~王都にて~

ダンテスは、女王の紋章『6枚の翼を持つ天使』と陛下の直筆署名が捺印された厚手の紙を、俺とアルマに見える様に掲げ、一礼すると口を開いた。

「こちらが陛下の『勅書』でございます。私が勅書の内容をお読み申し上げます。お二方は、勅書に最大の敬意をお払いになり、お聞きくださいますようお願い申し上げます」


「ブッ・・・。オホン。失礼いたしました」

思わず吹き出してしまい、ダンテスは、俺のことを一瞬、睨んだ。「俺は失礼しました」と言い、ソファーから立ち上がると、勅書に対して右手を胸に当て、頭を下げて臣下の礼をとった。俺は、ソファーに座るアルマと目が合い「陛下の勅書に最大限の臣礼をとりなさい」と指示した。


彼女は、ソファーから立ち上がると、スカートの裾を持ち、足を折り曲げて深々と首を垂れた。俺とアルマが頭を下げる様子を確認したダンテスは、勅書の書かれた内容をゆっくりと読み始めた。


「命令よ。 アルマへのお願い。クリスを王都から出しちゃだめよ?セントラルのテストを受けるように説得して?あなたなら、できるわ!ちゃんと出来たら、褒めてあげるわ!とくべつよ? 大切なアーロンへ。ちゃんと報告しなきゃだめじゃない。つぎは、ちゃんとやるのよ? 忙しいのは分かっているわ。でもね。アルマを放置しちゃだめよ? アルマを支えてあげて。 期限は、クリスの入省まで。書いた日、5月15日。アリシアより。 以上でございます。ソファーにご着席ください。ご質問があれば、分る範囲でお答えいたします」


陛下に許された安心感と、陛下の手紙を一字一句間違いなく読むダンテスに笑いを堪えるのに必死だった。

陛下の勅書を初めて聞いた時、俺は、緊張で何も考える余裕がなく、一字一句の内容を理解しようと必死だったけれど、何度か聞いて、心の余裕がでてくると、ダンテスが陛下の手紙をそのまま読むのが可笑しくてたまらなかった。勅書は、陛下独特の言い回しが文章内にあるので、聞きやすいように口語訳してもいいと思う。しかし、彼は、一字一句間違いなく読むのだ。アリシア陛下はご存じなのか?と考えるだけで笑ってしまう・・・。


俺は、安心感と、気を緩めるとニヤニヤしてしまいそうな顔に力を入れて、口を開いた。

「ダンテス。クリステルは、監視下にあると理解してよろしいか?」

「その通りでございます。クリステルさまの監視や保護は、アンジェ・ルージュが対応させていただいております。常に監視されている状態だとお考え下さいませ」


平然と監視中だと語るダンテスに、俺は、守るべき手順が守られていないことに怒りがこみ上げた。

「俺に一言あって然るべきではないか」

俺の怒りをダンテスにぶつけるのも違うよなと思いつつ、ダンテスの反応を伺った。彼は、相変わらず顔色一つ変えることなく口を開いた。


「おっしゃる通りでございます。アーロンさまのお考えは、事前に私から陛下に申し上げております。一方で、アーロンさまもご報告が遅れておられます。アリシア陛下も罪に問わないと仰っておられますから、ご指摘なさいません方がよろしいかと存じ上げます」


報告遅れの件は、お仕置き案件だ。陛下に呼ばれて、どつきまわされる可能性があった。それが、穏やかに対応してくださっている。つまり、ダンテスが、陛下に指摘してくれたと考えるべきだろう。

そこで、彼の提案を受け入れることにした。

「わかった。ダンテスのアドバイスに従おう」


暫くの沈黙ののち、アルマが俺とダンテスの顔色を伺いつつ口を開いた。

「ダンテスさま。クリステルが王都から抜け出した場合、どの様な対応がなされますか?」

「王都から一歩でも抜け出されますと、逃亡とみなされ、クリステルさまの命の保証ができません。ただし、王都にいらっしゃる限り一切の制限がございません。ご自由にお過ごしくださいませ」

命の保証が出来ないという言葉にアルマは、怯えにも似た表情を浮かべるも、王都に居る限り自由と聞いて、胸に手を当てつつ安堵の表情を浮かべた。


アルマは質問を続けた。

「クリステルが、セントラルを受験しないと決めた場合、どの様な対応がなされますか?」

アルマの質問はもっともだ。セントラル内で、反乱者首謀による血の贖罪の噂が流れている。恐らくアルマも知っているはずだ。噂通り自決していれば、恋人の仇であるレゼル王国を支える仕事やセントラルの採用試験を受けるはずがない。


「その場合は、直ちにご報告いただけますようお願い申し上げます。都度、指示いたします」

ダンテスの答えは、場当たり的な答えだったが、アルマは静かに頷き、俺の顔を見た。

陛下のことだから、対応を決めているはずだ。恐らく、厳しい処置が用意されている可能性が高いと思われる。しかし、ここで、失敗したときの対応を根掘り葉掘り聞いてしまうと、失敗したことを常に考えてしまい、成功することも失敗してしまう。俺の経験上、失敗した結果を聞くのではなく、成功させるために何をすべきかを考えた方がいいはずだ。そのため、俺から詳しく問いただすことをせず、アルマの目を見て頷き返した。


「アルマさま。アラン・ベルナールとご面識がございますか?」

ダンテスの質問にアルマは、質問の意図が分からないのか首を少し傾げつつも答え始めた。

「はい。クリステルに紹介され、何度かお会いしました」

ダンテスが応接室に来る前、アルマから聞いた情報だと、アランは、商店を経営していて、商売で使う材料を買い出すために度々、2人で王都を訪れ、何度か食事を一緒に食べたと話していた。


アルマとアランの面識があることを確認したダンテスは、姿勢を正し、一呼吸置くと話しを続けた。

「フーシェ伯領の反乱軍首謀、アラン・ベルナールは生きておられます。そして、エリック・ルネソンスと名を変えて陛下に血の忠誠を誓い、騎士となられました。今後、アンヌ・マリー・マルティノッジ様と共同研究をなさいます」

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