表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます  作者: 和泉 利依
第五章 救出

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/57

- 11 -

「私……?」

「ああ」

「本当ですの?」

「もちろん。お前を……愛している」

「天明様!」

 振り返った紅華は、満面の笑顔だった。再び天明の目が点になる。

「紅華? お前、泣いて……」

「誰がですか?」

 けろりと言いながら紅華は、天明に抱きついた。


「おい?」

「そんなにぼろぼろになって助けに来てくださった方のお気持ちを、疑うわけじゃないですか」

 天明は、たった一人であの別邸に乗り込んできた。他の衛兵たちが追いつけないほどに、急いで馬をかけさせたのだ。実際、紅華たちがのった馬車の隣には、天明の乗ってきたらしい馬が立っていた。

 衛兵が辿り着くまで待つ余裕がないほど紅華の身を案じていたのは、乱闘でぼろぼろになった天明の様子を見れば見当がつく。

 いっぱい食わされたことに気づいた天明は、大きく息を吐いて紅華の体に腕をまわすと抱きしめた。


「人が悪すぎるぞ、紅華……」

「意地悪な天明様には、これくらいでちょうどいいのです」

「なんでこんなことを?」

「聞きたかったのですよ。天明様の、お心が」

「まったく……さっきまで青い顔してたくせに……」

 ぶつぶつ言っていた天明は、紅華を抱きしめる腕にかなりの力を込めた。

「天明様……ちょっと、苦し……」

「紅華」

「はい?」

「このまま実家に帰れ。お前は、貴妃を辞退したと晴明には報告する」

 ひゅ、と紅華の喉がなった。


「な、ぜ……ですか?」

 紅華に回していた腕をほどいて、天明は真正面から紅華を見つめる。その顔に笑みは乗っていなかった。

「お前まで巻き込む気はなかった。俺たちにはこんなこと日常茶飯事だが、お前には同じ生活を送らせたくない。だから、もう後宮には戻るな。もし戻ればきっとまた……」

「だって、今、愛しているって……!」

「だからだ」

 ため息混じりのかすれた声で、天明が言った。


「お前が大切だから、危険な場所にお前を置いておきたくない。一生あの後宮から出られない亡霊の俺には、お前にしてやれることなんて……何一つないんだ」

 それを聞いて、紅華は思い切り顔をしかめる。

「……なるほど。そうやって睡蓮の事も早々にあきらめたんですね」

 天明は答えなかった。き、と紅華は鋭い目で天明を見返す。

「お断りします」

「紅華」

 駄々っ子に言い聞かせるような天明の声を聞いて、紅華は、ぐ、と拳に力をこめた。


「欲しいものがあるのです。それは、後宮でしか手に入らないので、私は後宮を去る気はありません」

「欲しいもの……何だ?」

「皇帝陛下です。ですから誰が何と言おうと、どんな邪魔が入ろうと命を狙われようと、絶対に私は後宮の妃となります」

 天明が、剣呑に目を細める。

「……晴明と睡蓮の気持ちを知っていて、それを言うのか」


 紅華は、強い天明の視線を臆することなく受け止めた。

「私は、後宮で光となります」

「光?」

「影ができるには、必ず光が必要となるではないですか。私は光となって影に添い、その影と共に一生を生きていきたいのです」

 一瞬の後、その意味を悟った天明の目が大きく開かれる。


「紅華……」

「いけませんか?」

 仰ぎ見てくる紅華に、天明が苦笑した。

「なるほど。『皇帝陛下の妃』、か」

「いけませんか?」

「……とにかく、いったん宮城へ向かおう」

 紅華から視線をそらして、天明はようやくそれだけを言った。


(意気地なし)

 紅華は心の中でひとりごちた。

「天明様」

「なんだ」

「助けて下さって、ありがとうございました」

 ちらりと視線を向けた天明は、何も言わずにまた窓の外を向いてしまった。


  ☆


「紅華様!」

 後宮に戻ると、睡蓮が紅華に飛びついてきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=773403919&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ