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貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます  作者: 和泉 利依
第三章 牡丹の庭

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「おや? 待っていてくれたとは、嬉しいね」

 案の定、そこにいたのは、天明だった。その手には、大きな数本の牡丹を持っている。

「そんなわけないでしょう」

「照れた顔もかわいいな」

 口の減らない天明に、む、っとするも、元気そうな様子を見て紅華は安堵も覚えた。


「お怪我のご様子は、いかがですか?」

「まだすごい色しているが、薬のおかげか痛みはあまりないな」

「そうですか」

 そう言って微笑んだのはおそらく無意識だろうと天明は、その表情に気づかないふりをした。

「紅華こそ、怖い思いをさせて悪かったな」

「驚きはしましたけれど」

「肝の据わったお嬢さんだ。はい、お土産」

 渡された牡丹から、甘い香りが漂う。


「どうしたのですか、これ」

「きれいに咲いていたから。昨日の詫びだ」

 昨日の出来事は天明のせいではないのだから彼が詫びる必要などないと思うが、せっかく持ってきてくれたのだから、と、紅華は素直にその花をうけとった。


「ありがとうございます。これ、天明様が買ってきたんですか?」

「晴明の真似をして、そこの庭に咲いていたのを勝手に取ってきた。南の庭の牡丹園が、ちょうど見ごろだ」

「牡丹園があるのですか?」

「まだ見てないのか?」

 むしろ驚いたように天明が言った。


「はい。ここへきて日が浅いので、まだ後宮の中になにがあるのかまでは、よく知らないのです」

「ならちょうどいい。これから一緒に見に行こう」

「え? でも……」

「決まり。天気もいいし、行くぞ」

 勝手に話を進める天明に、紅華は戸惑う。

「そんな急に言われても……」

「見たいときに見に行くのが、一番きれいなときなんだよ。睡蓮は?」

「少し用を頼んでありますが、昼には戻りますわ」

「見つかるとまたうるさそうだ。早く出よう」

 そう言って天明は紅華の持っていた牡丹を卓の上に置くと、紅華を連れ出した。

(なんて強引な人なのかしら)


 なかば呆れながら二人で廊下を歩いていくと、前から来た女官たちがさっと道を空ける。

(ああ、晴明陛下だと思っているのね)

 そう思ってちらりと天明を見上げると、さっきまでの気楽な表情とは違ってどこかきりとした涼し気な笑顔を浮かべている。

「紅華殿?」

 ふわりと笑うその表情は、まさに晴明そのものだ。これでは、女官たちが晴明と誤解するのも無理はない。というより、天明はわざと誤解させているのだ。

 第二皇子とはいえ、男性が後宮を平気でうろうろするのはさすがにまずいのだろう。


「便利なお顔ですね」

 すましていれば、誰も天明とは気づかない。

 思うところあってそう言った紅華は、その言葉で天明の表情がほんのわずかに曇ったのを見逃さなかった。

「似てはいても、俺の方が凛々しいのは紅華も知っているだろう?」

 だが、天明は素早く元の笑顔を取り戻した。

 おそらく天明は、紅華が聞きたいことに気づいている。なのに話をそらしたという事は、きっと今はまだ聞いても答えてはもらえないだろう。

 紅華は小さくため息をついた。


「本物の晴明陛下はお仕事ですか?」

「今頃の時間は、定例朝議を終えて執務室にいる頃だ」

「天明様は、普段何をされているのですか?」

「紅華の相手」

「それは今日に限ったことですよね。それに、全く必要のない仕事だと思います」

 呆れたように言った紅華に、天明は晴明の顔をしてふわりと微笑む。

「逢引のための時間は、何をおいても必要ですよ、紅華殿。晴明と顔をつきあわせて文書を呼んでいるよりも、かわいいお嬢さんとお花見をしている方がずっと楽しいとは思いませんか?」

 爽やかに微笑む様子は晴明とよく似てはいるが、やはり紅華には二人は別人としか思えない。


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