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貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます  作者: 和泉 利依
第二章 一人だけの後宮

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「紅華様は、どこか痛むところはありませんか?」

 紅華の身を案じる睡蓮が聞いた。

「私は大丈夫。けれど、天明様が」

「俺も、平気だ」

 軽く言った天明に近づくと紅華は、背もたれに体を預けたままの天明の左肩をぽんと叩いた。


「うげっ!」

 ふいうちを食らった天明が、飛び上がりながら叫んだ。

「背中か肩を打ちましたね?」

「ててて……気づいたのか」

「起こしていただいた時に、左側をかばわれたので、もしや、と」

「天明様、失礼します」

「な……睡蓮! やめろ!」

 睡蓮は天明の衣に手をかけると、くるくるとその服を脱がし始めた。


「何をする! 睡蓮、あ、こら」

 天明は抵抗するが、紅華が指摘した通り片側にうまく力が入らないらしく、あっという間に片袖を引かれて肩がむき出しになった。

 みれば、天明の肩から背中にかけて青くなりかけている。


「やっぱり」

「睡蓮……いくらいい歳だからって、もう少し女性としての照れとか恥じらいとか持ち合わせていないのか。そんなことだから行き遅」

「そんなこと言っている場合じゃないでしょう? 折れてはなさそうですが、これはかなり痛みますね」

「いててててて!」

 あちこち調べられて、天明が再び悲鳴をあげた。痣になっている腕を乱暴に扱う睡蓮のその様は、どうやら天明の言葉に少しばかり立腹したようだ。

(睡蓮でも怒ることがあるのね)

 紅華は、興味深くその様子を見守った。


「貼り薬を持ってきます。待っていてください」

 出血のある怪我がないことを確認すると睡蓮は、薬をもらうために部屋を出て行った。

「すみません、私がもうちょっと早く気づいていたら」

 うなだれる紅華に、服を戻しながら天明が笑う。


「むしろ、晴明じゃないと気づいていたのに、よく助けてくれたな」

「当たり前です。あれ、直撃してたら、下手すれば死んでましたよ」

「そりゃ、殺すためにやったんだろうし」

 天明の言葉に、紅華は、目を見開く。

「え? まさか……あれは、事故、ではないのですか?」

 天明は、ちらりと紅華を見たが、すぐにまた服装を整えるために視線を戻す。


「違う。と、俺は思う」

「一体、誰が……」

「言ったろう。めずらしくもないことだ」

 青ざめた紅華とは対照的に、楽しそうにくつくつと笑いながら天明が続けた。



「俺が生き残って残念がっているやつがいると思うと、つくづく愉快だな」

「そんなことを言って。一歩間違えば、こうして笑っていることなどできなかったのですよ?」

「その時はその時だ」

「死んでしまったら取り返しがつきません!」

 激昂する紅華とは対照的に、天明は服を整え終えると飄々とした様子で椅子に座りなおした。


「俺が死んでも、『皇帝陛下』である晴明が生きていればこっちの勝ちだ」

「でも、天明様が……!」

「なあ、紅華」

 いきなり呼び捨てにされて、紅華はびくりと体をこわばらせた。ひじ掛けに片腕をついて、天明は薄く笑っている。


 その表情は、同じ顔をしていても晴明とはまた違う色気をかもしだしていた。だが同時に、まっすぐに見つめてくる細い目を、紅華は怖いとも思う。

(この人は……何を考えているのだろう)

 自分の死すらも単なる玩具の一つとしか考えていないような天明に、紅華は胸をざわつかせた。


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