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貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます  作者: 和泉 利依
第二章 一人だけの後宮

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- 9 -

 素早く椅子から立ち上がった紅華は、上を気にしながら晴明に手を伸ばす。気づいた晴明も紅華の視線を追って天井を見上げた。


 その瞬間、二人の視線の先でその天蓋ががくりと傾いて落下を始めた。とっさに晴明は紅華の手を引いて自分の胸に抱え込むと、横に飛びすさって倒れ込む。間一髪、二人のいた場所に、天蓋が落ちて派手な音を立てて破片が飛び散った。


「ぐっ!」

「陛下!?」

「陛下!!」

 場が騒然とした。

「ご無事ですか?!」

 そばに控えていた衛兵や宰相が晴明をとりかこむ。晴明は、両手を床について少し体を起こすと、自分の真下にいた紅華に声をかけた。


「大丈夫だ。紅華殿は?」

「私も、大丈夫です」

(近い……!)

 体が密着した状態になった紅華は、すぐ目の前にある晴明の顔に、そんな場合ではないとわかっていても鼓動が跳ねる。全身に感じる体の重みは、苦しく思うほどではないが意外にずっしりとしていた。

「よかった」

 そう言ってぎこちなく起き上る晴明を、ふ、と紅華は仰ぎ見た。晴明は厳しい顔であたりに集まった官吏たちを見回す。

「さわぐな。官吏たちは下がらせて、すぐにここを片付けろ」

 紅華が立ち上がるのを助けてくれながら、晴明は次々に指示を出す。


「陛下はこちらへ」

 宰相に連れられて晴明と一緒に歩きながら紅華が見ると、あれほど綺麗だった天蓋がばらばらになって落ちていた。幸い気づいてよけることができたが、直撃されていたらただではすまなかっただろう。今さらながらに背筋が冷たくなった。


「陛下、紅華様」

 別室で控えていた睡蓮が、青い顔で走り寄ってきた。心配する睡蓮を連れて、四人は近くの一室に入る。

「陛下、お怪我は」

 部屋に入ると、心配そうに宰相が聞いた。

「心配するな、翰林。俺だ」

 晴明のふりをやめた天明が、大きく息を吐きながら長椅子に座る。それを聞いた宰相は、驚いたように紅華と睡蓮に視線を送る。睡蓮が無言でうなずくと、宰相は急に態度を変えて天明に向いた。


「お前か。今日は、晴明陛下ご本人のはずではなかったか?」

「あれだけ大勢の前に出るのは危険だろう。最近、多くなってきたからな」

「だったら、せめて私には変更のあったことを知らせておけ」

「まだ、俺たちの見分けがつかないのか」

「ついたら大変だろう。だいたい、前陛下でさえできなかったんだ。見分けのつくものなど、いるものか」

「そうでもないさ」

 天明は、ちらり、と紅華を見た。それに気づかずに、宰相は部屋を出ようとする。


「すぐ、典医を呼ぶからおとなしくしてろ」

「必要ない」

 宰相は、足をとめて振り向いた。

「だが」

「けがもないし、少し休めば大丈夫だ」

「……本当にいいのか?」

「ああ」


「では、ここで少し休むがいい。私は陛下のところに行ってくる。蔡貴妃様」

 宰相は、紅華に向き直る。

「お騒がせをいたしました。落ち着いたようでしたら、よろしければお部屋まで送らせましょう」

 紅華は天明の様子をうかがう。すました顔をしているが、その額には脂汗が浮かんでいた。

「わたくしも、もう少し休んでから戻ります」

「かしこまりました。睡蓮、蔡貴妃を頼んだぞ」

「はい」

 そう言うと、宰相はもう一度天明の様子を一瞥してから部屋から出て行った。


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