第9話 農業の力 農力値推定0.001ha/h
さすがに畑を出したりは出来んか。現実的に考えると親から分けてもらうしかないよな。
...ふむ、考えがあるぞ!
つまりまずはアブラナ科だ。キャベツ、ブロッコリー、ダイコン、ハクサイ付近だな。
アブラナ科、アブラナ科と。こう畑を見渡すと…う~ん...な~んかどれも品質が悪いなぁ。
こっちの播種用の種カゴに良さそうなものはないか…?
と、ん?何粒かは使えそうなものがあるな。
あとはどこかに使えそうな原種でも…
「どこに行くのかねぇ?」
「あ!キョウちゃん勝手に遠くに行っちゃメでちゅよ~」
ふ~む倉庫の周辺や畦にはロクなのないし、む?川辺にアブラナが群生してるな?
「あ~もうキョウちゃん、こんなとこまで飛んできて、川辺は危ないでちゅよ!」
ここはひとつ目をつむってくれぃ母よ!このアブラナ、ちょっといいぞ。これなら改良のベースとして使えるんじゃないか?
「ふ~ん このアブラナは一見すると他と変わらないけど、土壌細菌との親和性が強いねぇ。」
そんなことがわかるのか!?すごいなさすが"農仙"!
「そりゃそれぐらいはねぇ。でも君はどこでこの違いを見分けたのかねぇ?」
そりゃこのアブラナだけやけに黄モヤと緑モヤが濃くって、赤モヤが薄いからな。
「その能力…魔力というか、もはや“農力”だねぇ…」
ノウリョク?
「“農業”の“力”で“能力”だねぇ。」
おお、農力!いいじゃないか。“むむ!あいつは農力値 100 ha/hだ!”とかね。
「…耕す力で測るつもりかねぇ。」
耕すだけじゃないぞ。ちゃんと作付けまでできての換算だからな。ちなみに俺の今の農力値は推定0.001だな。1時間で1㎡分の農作業ができる感じ。
「それで畑はどうするのかねぇ?」
おお、それな!まず畑のヘリの空いたところでこの選抜した種を撒くわけだが、昨日までの観察で黄モヤ最大、青モヤほどほど、緑モヤ最大のタイミングを待つ。
で、ホイ、ホイっと種を撒く。んで~もう一つ~ホイと。
それで後から水を撒くわけだが、これがなぁ。
水の青モヤをピシピシとやって水を飛ばすわけだが、圧倒的に量が足りない。
う~んかといって青モヤを引っ張るとドッバァ~と水が出るから汲み置きでもしてからでないと使えん。
水だから青いモヤなわけだけど、もっと効率の良い方法はないもんかな?空気中の水分とか土壌の水とか…なんか、こう空気の透明なモヤを火の赤であぶって青で冷やして湯気にして…おっ?ちょっと霧吹きみたいになった。
「小範囲の気象魔法を実現したねぇ。」
?気象 これだと微気象すぎるだろ。土壌の水分量が解決できていないから黄モヤが最小の時に透明なモヤを引き入れて土を膨軟化させて、そこへ青モヤを通すと…おお土が湿ったな。これでヨシ!
「何気に霧の魔法にたどり着いとるねぇ…。」
おお、これが祖父がしきりに言っていた霧ってやつなのか?
「そうだねぇ。貴農家の中でも特に傑出したものだけがたどり着く4属性と無属性を合わせて実現できる霧の領域だねぇ。」
そんなに難しそうには思えないぞ?
「無茶言うねぇ。ただの貴農家だと君のように全感覚で魔力を捉えられないねぇ。」
そういうもんか?
「普通の貴農家だと無理だねぇ。」
無理なのか...。
あと無属性って何だ?
「君が魔力をつかんだり引掻いたりする時に、その部分にホワっと魔力をまとわせているだろ。それこそが根源の魔力だねぇ。その魔力は個人の器から直接来る力で、属性に分化してないから無属性だねぇ。誰しもその無属性の力を魔法に変換しているんだけど...。」
だけど?
「だけど、君はその力をあくまでもとっかかりにして、自然界にある無限の魔力に働きかけてしまうからねぇ...。ほぼ無限だねぇ...。」
無限ねぇ...。そうするとみんなは効率の悪い力の使い方してるんだなぁ。
「君のような方法で自然界の魔力を感じ取れないから、そこのところは無理もないけどねぇ。」
まぁ、それはさて置きだ。
さっきの3粒は無事に撒けたから次は、次は川辺のアブラナだな。
「あっ キョウちゃんまた川辺でちゅか~ 先に行っちゃだめでちゅよ~」
許せ母よ。農業はすべてに優先されるのです。尊いのです!
さて、川辺に来たものの...このアブラナ、やっぱりほぼ雑草...。とても食えるような代物ではない上に、変な魔力?精霊力?らしきもので満ちている。まずは周りに漂う余計なモヤを取り去り....っと。
「う~ん あまり防御を取りすぎると周囲の強い植物に負けちゃうかもねぇ。」
おお!なるほど。なるほど。
植物間の競争は熾烈だな!
では次に、緑のモヤと青モヤで成長と質を加速させる。
これで早期に種が取れるはず...。
「なぜそれが教えられずにできるのかねぇ…さすがに農仙でもどん引くねぇ…」
ん?なんかできるな!とか、わかるな!と自然に感じるが?変か?
「特異点だからねぇ。いずれ辿り着く、まさにそれだねぇ。」
それに関しては普通だろ?としか思えんがなぁ...。
「まぁ、君にとっては普通なんだろうねぇ。」
さて、次に川辺のアブラナの種子が収穫前に飛び散らないように何か撒いておきたいが…
「ああ、それなら周囲の植物から繊維をあつめて果実全体を巻いておくといい。」
う~ん。それなら周囲の枯れ草を赤モヤで熱してポップコーンのように弾けさせて繊維を飛び出させて、それから風で集めて、水分でくっつきやすくして…
で、これをどうやって巻き付けたもんか…?
「あ、君はまだ赤ちゃんだったね。なんでもできるからついうっかりしたねぇ。」
「キョウちゃん このフワフワしたのをどうするの?持って帰るの?」
あ、母ナイス!アブラナに巻いてよ!それをアブラナに!ま!い!て~ と
念を飛ばしているつもりだが、そううまくは行くわけがない…。
“こうアブラナにギュッとね” うなれ俺のジェスチャー!
「おだんご?」
いやアブラナにこう...。
「根元にまくの?」
「ちょっと加護を強く発揮しようかねぇ。」
.....
...
「う~ん ! アブラナの花のところに巻くのかなぁ?」
そうそう!それそれ!母ナイス!あと紐で巻いて固定して!
「これじゃぁ落ちちゃうからツタで巻いておきまちょうね~」
よぉぉ~し!これで万全だ!明日の経過が楽しみだ!
次は発芽用の入れ物を作りたいがこれは土でいけるな!
この河原の粘土が露出したところを少々吹き飛ばして、丸くへこませて、赤モヤを使って熱して焼き固める…と ヒビが入った。
「信じられないことをしてるけど、それは置いておいて、焼き物をするなら粘土の中に空気が入っちゃダメだねぇ。」
なるほど、今度は空気を吸引して真空化してそこで熱だけを使う。赤のモヤは真空中で熱を出せるってことは燃焼じゃなくて熱そのものなんだなぁ…。
「今度はうまく固まったねぇ。形は不格好だけど鉢?ができたねぇ。」
ここに土を入れたいけど…ちょっと土を入れては母をチラッ また土を入れては母をちらっ…。
「キョウちゃん 今度は土をいれるの?」
そうそう。よろしくお願いします母よ。農力を伴わない土入れはとても大変そうだ。
う~ん申し訳ない。
「この状況 お爺ちゃんやお父さんに話しても信じてくれまちゅかね~ はぁ~」
で、出来上がった鉢を風で浮かせて自分と一緒にするする~っと移動してっと...。
これで明日から獲得した種子を順次発芽させるとしよう。
お読みいただいた皆様。いつもありがとうございます。
そしてすいません。この第9話 麒麟の一言が抜けておりました。
?と思われた方 誠に申し訳ありません。
修正いたしました。