第6話 魔獣と貴農家と農業土木
昼間に撒いた種が気になって気になって寝られん!
夜中なのにずっと遠くで鳴いてる鳥の声までもがやたら大きく聞こえてくる...
元の世界と違ってロクに明かりもないから夜ば暗闇そのもので、暗くなり出したら空気もひりつく様に冷たくなるし、魔獣まで徘徊してるらしい...まさかこの体ではとても夜には外に出られん。
う~んなんとか成長を確かめることはできないもんかな?
壁から向こうは…見えるわけがないか。
そりゃそうだけどなんとかならんもんかな。
何度も目をつむって、よし日の出か!と目を開けてはまだ暗いなぁ…というのを繰り返していると何か音が聞こえる。
ざわざわというかなんというか??風の音のような?何か転がるような音というか??
とそんなことを繰り返してやっと寝付いて辿り着いた朝!
さっそく母にドアを開けてもらい畑へと直行すると...
オッ! オオー 青いモヤのピークで植えた種はもう収穫できるじゃないか!こりゃう~ん見事なマルダイコンだ!う~んどうやって抜くかな?
さすがにまだこの体では…とか思ったがいやこれなら抜けるな!
黄色いモヤがピークのタイミングでマルダイコンの上の方の透明なモヤをこうすると スポン!と逆吸引!
「キョウちゃん…なんでそれが抜けるの…」
?そりゃできるでしょ?
そんな事よりマルダイコン!そっそく洗って(こういう環境では洗わない生野菜はダメ!絶対!)かじりつきたいけどいかんせん...俺、歯がまだ生えていない...
う~ん味が知りたいっ!と悩むも あ!これ、なんとなく味わかるわ。
こう、魔力をほわ~っと纏ってマルダイコンそのものを見つめていると、なんとそれだけで味がわかるぞ!
うん。これはものすごい水っぽい。はっきり言ってこれは美味くないぞ!…いったいなんでだ?
同じ要領で他の昨日撒いた種(赤いモヤがピークに植えたやつだけ発芽せず)を見ていくと...これっ!
これうまいやつ!
まだモヤシみたいだけどこれはうまいぞ!緑のモヤがピークのやつだ!
ということはこれを手本に早速別の場所に次なる種を植えねば!
「奥様 今日も坊は… 坊でやすね…」
「ええゴスさん。あんなに楽しそう! 」
…
「…母は強しでやすねぃ…」
なるほど水の加護は必須!緑のモヤが味の質を決める!
赤は水と対立するだけなのか?
いやひょっとすると水っぽさを消したり、辛さとか食味に関わるんじゃないか?
植え付けも黄色のピークだけで植えるのが最善とは限らんかも…玉ねぎとかゴボウとかイモ類とか…
ああ楽しい 農業だ!農業が今! ま・さ・に!俺の手に!
おおっ!次はこことここに3波が複合する試作を植えるぞ!
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ああ いや害虫とかの被害も関与するんじゃないか?
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う~ん どう区分けしようか…
などと試行錯誤していると.....なんだ?向こうの畑が急に騒がしいぞ!?
「馬だ!馬が出やがったぞー!」
馬?馬ってあの馬?と不思議に思っていたがどうやら知っている馬と違い、口から生えたデカいキバとコブのある額、そしてやたらと立ち上がったタテガミというまさに魔獣然としたモンスターが現れた!
あれが馬の害獣? いや魔獣か!すごい勢いで畑を荒らしやがる!
「坊 こっちに避難するでやす!」
おぉ、クワを手にゴスが駆けつけてきた。
「キョウちゃん こっち!こっちよ!」
母も顔が真っ青だ。これはかなり大変な魔獣が現れたらしい。
火や水の魔法が飛んでいくが、畑の作物を気にしてか上の方を狙うから馬が簡単に躱している。
兵家も畑に踏み込むのをためらって、クワやカマを構えながら畦から馬を囲むのがやっとのようだ。
強いぞあの馬!周りを囲まれてもバクバクと作物を食ってやがる!
クッ 俺の作物が(俺のではないが…) とその時父がクワを構えて畑に踏み込んだ!
「まさかこんな時期に馬が出るとはなぁ…群れを引き連れてなければいいんだけど... さてと」
父がクワを構えてさらに馬に近づく。
馬はバクバクと野菜を食いながら目だけは父から離していないようだ。
が、さらに父が一歩踏み込むと馬が嘶いて立ち上がった!
「火魔法撃て!」
魔法家から一斉に火魔法が飛び、馬が一瞬火に包まれる。
その時父が馬めがけて飛び込んだ。
サクッ!
ドサリ
ってハァ?なんだ今の⁉
「おお~さすが貴農家の鍬術でやすね。」
? ゴッさん(ゴスさんでゴッさん)の言ってることはさっぱりわからないが、クワで一撃ってなんなんだ?
「ふ~。妙な時期にえらいもんが出たね。よし!みんな今日は畑の修復に作業変更だ。
馬を運び出したら、各々クワの準備せよ!」
父の号令でみんな動き出した。
あのでかい馬を運び出すのは大変そうだね。
「エマ 大丈夫かい?キョウは…別に泣いてもいないねぇ…」
「あなた、私たちは離れていたから大丈夫よ。ねぇ~キョウちゃん ケガちてまちぇんよねぇ~ お父さんとっても強いから怖くなかったでちゅよね~」
………いや 怖いっスよ。クワで魔獣をサクって何ですか?
それにあのでかい馬、森からここまでドッカドカと全力疾走してきたのどおゆうことよ?
何かの周回コースだったりすんのこの畑?
「ん?ここ昨日からキョウが遊んでいたところだろ?…この作物、キョウが??」
「ええ そうなのよあなた。なかなかの小さな貴農家様でしょ~。」
「う~ん なるほどお爺ちゃんが目の色変えるはずだなぁ… おっと畑の修復に戻らないとね。エマ、またあとでね。」
おお今日は農業土木の現場が見られるな!
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なるほどやっぱり畑の掘削も畦の修復も父の号令に合わせないとうまく進まないか~。
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う~ん やっぱり効率は恐ろしく悪いなぁ~。
黄色い波が一列に並んでやってくるから、父だけでは一つの波につき一回しかクワが振るえないかぁ。
一波一刺しだから、やっぱり一列に作業者が並んでクワを振る方がマシってのはわかるけどなぁ…
これだけ畑が荒れると修復が大事だな。
しかしマジあの馬、何がしたかったんだろうか?