第5話 なぜできる?(どん引き)
「こういっちゃ叱られますでしょうが、坊は不思議な赤ちゃんでやんすねぇ…」
「あら、ゴスさん 急にどうしたの?キョウちゃんが不思議なのはいつものことじゃない?」
「大人みたいってんならそうなんでやんすが…
ここんところあっしにゃ坊が見えないもんを眺めてるような気がするんでやんす。」
「…ゴスさんもそう思うのね。ひょっとすると貴農家の血なのかなぁ...。あっと そろそろキョウちゃんの様子を見に行かないとね」
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気になる!畑が!野菜が!モヤの波が!農作業が!
気・に・な・るっ!
ハイハイでは畑に出れん!出たい!いや、出るんだっ!
で・る・ん・だっ!
出るんだーー‼!
俺の心からのほとばしりがスパークした時
あ!そうか出れるわ! またふいに頭の中に当たり前のようにわかったことがあった。
この灰色のモヤをこう。そして自分のモヤでこう掴むんだね。
フワリ おっ 浮いたな。で今度は掴んだモヤを反対の手でこう引っ張る。
ススス~ よしスライドした。今度は足で蹴って ススッ 反対の足で ススッ
よしよし氷の上とかピカピカの床の上をすべる感じそのものだ。
今度は壁を上るような要領で上のモヤをつかんでヨヨッと
フワリ おっ上がった上がった。
ここまでは順調に動けるが問題はドアだ…。
ドアを開けるにはノブを捻る必要があるが....。
例えばだ...回れ 回れ~ う~ん 回れっ!
…回らない。そりゃそうだわな。これは出来んわな。
念動力とかまでは流石にね~もんね。これもモヤでどうにかするしかないよね。
とその時 ガチャリとドアが開いた!
うお!開いた!
が、ドアを開けたのは念力ではなくて、母だった。
「キョウちゃん 朝でち..!」
ガバッ!とすごい勢いで母が飛び込んできて俺を抱きとめた!
「うわぁ うわわわ キョウちゃん落ちちゃうじゃない!何で浮いてるの‼」
随分母を驚かしてしまったようだ。しかし畑が!俺は農作業が見たいんです!ここはひとつウルウルしたアイコンタクトでどうにかならんもんか…やっぱならんか...。
そのあと爺ちゃん 婆ちゃん 父さん 母さん ゴスさんと
あと何人かの見覚えのあるようなないような数名と共に親族会議が行われた。
ここは全力でアピールだね!言葉は話せなくても話は十分理解できてるし、こんなに移動力ありますよ!と必死で伝えたね。
「ほらほらキョウや。じいじはこっちじゃぞ~」
そっちへフヨフヨ
「あらあらキョウちゃん。ばあばはこっちよ~」
あちらへフヨフヨ
うふふ あはは うふふ あはは…
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………………
「なぜできるんじゃ?」
「なぜできるんでしょ?」
「エマや... キョウはどうやら言葉がもうわかっとるし移動もできよる。
赤ん坊ではあるがこりゃ3歳くらいの子供と考えたほうがええじゃろ。
これだけ動けると部屋に閉じ込めておくわけにはいくまいてのぅ...。」
「キョウや お前はお前のお家の周りより遠くには行かんと約束できるかの?」
おお!するする‼約束する!了解と伝えるには…そうだ!ちょうどここの赤いモヤを手でこうはじき上げたら
ヒュッ!~ポン! よしよし合図できたぞ!
「……じゃからなぜできよる。………プチファイヤーを出したぞい…」
「…キョウちゃん…」
何故かドン引かれた……。
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あれからやっぱり自力でドアは開けられないが、子供部屋のドアは解放され家の中は自由に動かせてもらえるようになった。
祖父の家
「さて…どうしたもんじゃ…キョウのやつ、いきなり風と無属性を披露しよった。もうこれで霧属性があるちゅうてもおかしくはないぞ...。」
「あなた…いっそこれからも部屋に閉じ込めて……」
「最初はそのつもりじゃったがなぁ…キョウのことを思えばそれではあまりにも不憫な姿じゃろう…まぁ、しばらくは教会がどうこうということもあるまい。」
「あなた…」
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自由だ!俺はついに(農の)自由を手に!入れた!んだぁ~!
「あっ コラ!キョウちゃん!ドアを開けたとたんに飛び出しちゃメでちゅよ!」
それでも俺は畑にすかさず移動する。
「坊…もう完全に飛べてやすね… 」
今日はついに種を植えるぞ!種の保存かごから一掴み(手がちっさ!)それを畑の端っこの収穫の関係ないところに植えてみる!
そこでまず分かったことがある。土が固い!これ、黄色いモヤの波が薄いときに種を押し込もうとしても入らない!赤ん坊の指だと折れちまうぞこれは!
しかし何度か様子を見ていると黄色いモヤが濃い時は土にスっと埋まる。なるほどなるほど。
そういうことなら赤の波が濃い時に3粒 赤の波がない時に3粒
青色の粒があるときに3粒 ない時に3粒
波の組み合わせに応じて種を植えていく。
あとで混乱しないように3粒植えるごとに黄色のモヤをひっかき土を石化して地面にサインを付ける。
ちなみにサインはオリジナルね。(日本語とか書くとあとで大変そうだからね。)
で、観察してみるとすぐに反応したものがある。青の波だ!
もう発芽してかろうじて目に見える速さで3粒とも反応してる。青は成長?水?
付近の青いモヤだまりを見つけてひっかくとわずかに水しぶきが飛ぶ。
なるほど青は水だが、単なる水ではなく成長を加速させるわけだ。
そうすると青いモヤの波がない時に植えた種は成長が遅いか、発芽しないわけだな。
なるほど畑に潅水がないのも納得だ。
ではもう一列同じ配置のものを用意して、今度は水のモヤをひっかいて水やりをして…
う~ん 水やりの効率が恐ろしく悪いぞ...
「…奥様 坊… 間違いなく貴農家になりやすね…」
「ゴスさん なぜキョウちゃんはいきなりあんなことできるんでしょう…?」
「なんで…できるんでやんしょ…」
う~ん そうか 青いモヤの波のピークで植えればなんかこう水の加護みたいなもんがつくようで
苗は水に困らなくなって、モヤをひっかいた水やり(水魔法やり?)では加護には劣るけどわずかに成長するな。明日の観察が楽しみだ!やべぇ ワクワクが止まらねぇ!
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