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ゴールドナイトは畑に還りたい。  作者: 竹世 原野
生誕編
2/24

第2話 どうやら魔法はあるらしい

目が覚めた。


いや、ほんとに覚めたのかこれ?

なんと目が見えん。

が、音は聞こえる。


病院?...だよなぁ。


あ~まさかの目をやられたかぁ…他に痛みはないけど体は動かん…

これはやっぱり重症か…

いやそれでもどうやら生きてる!それなら怪我で済めばめっけもんか…。


「あ~あ いやだなぁ 農家は体が資本なのにもういきなりこれかぁ….」


「!」「キョウ⁉」「キョウがしゃべったの⁉」


あれ?誰かそばにいる?誰だ?

気になるが首も動かんし、目も見えん…。


「はいはい落ち着いて新しいお母さん。この子は生まれたばかりですよ。」


ん?男の声(多分自分より若い)相部屋に子供を産みたての夫婦がいるってことか??

産婦人科と外科って一緒の病棟になることあるんだっけか??


まぁ若夫婦はさておき、“自分は重症”で間違いなさそうだ。

時折看護師さん?があれこれお世話をしてくれる。


しかしどうにも相部屋の若お母さん?までもがお世話をしてくれているようにも思うことがあるが…

いやいやまさか。そんな事はいくらなんでもないよな。


お世話になっているからには、ここはひとつ大人の社交性を発揮して


「いつもどうもすいません。」


「ハッ⁉ またしゃべった⁉」


ん?おっちょこちょいの相部屋のお母さんが変なことを言っているようだ。

微笑ましいなぁ。


これが噂に聞く親バカってやつかな…などとのんきなことを考えているとなんだか眠くなってきた。

ちなみに背中は掻いてもらえなかった。


看護師さんに話しかけているつもりなんだが、どうやら声が届かないようで…。

これは...どうやら喉までつぶれたのか…。


いやだなぁ首とか折れてたらどうしようかな…

暗い気持ちになりながら眠りに落ちる日々が続いた…。


………………………………………………

…………………………………

……………………





随分と寝たきりにも慣れてきたが、あまりに怪我が治らなくてウンザリだ。

これはやっぱり重症なんだなぁと痛感する。


それでも日が進むにつれ少しずつ目の前も明るくなり、もぞもぞと体が動かせるようになってきた。

が、だ。突然大問題に気付いた。


何というか、体が小さい。

いやそんなレベルじゃない。赤ん坊だ。

誰が?俺が!

なんつ~長い夢だ!夢落ちはまだなのか?

いや昨日も夢を見てさらに今が夢ならまたもや明晰夢なのか?


「あら、キョウ 起きたの?」


そしてなぜかまた若い奥さんにお世話をされた…。

これはひょっとしていよいよ夢落ち…ではないのかもしれない...。



………………………………………………

…………………………

………………





何日か経った・・・。

今だに夢ではないという確信は持てないのだが、まぁ、あきらめもあり少しずつ現状が受け入れられてきた。

いや整理されてきたというべきか。

自分は赤ん坊で、父母は自分よりずいぶん若く(?)ここは病院ではなくて若夫婦の家だったらしい。


家には使用人がおり(なんと看護士さんじゃなかった!)元の暮らしでは考えられないような豪華さで、しかし現代とは言い難い、まるで文明から縁遠い環境にいるようだ。


また少し経ったある日、家の中が騒々しくなったかと思ったら外から大きな声が聞こえて来た。


「大旦那様の~ご到着ー!」大きな声がしたあとすぐに大きな靴音と声が響いてきた。


(靴音が下から聞こえてくるということは俺が寝ているのは二階なのか?)

また一つ状況が鮮明になったな。


「おお~“キョウ”や~! ワシがそなたのおじいちゃんだぞ~おお~ヨチヨチ」


…んん?祖父?だと?やたら声が若いぞ?父母とそれほど年が違うように感じないぞ?


 「お父様 そんなに騒いではキョウが怖がります!」


…お?これは母(?)の声か。


「すまんすまん。キョウや今日はお前のために祝いの麦俵と祝詞の司祭を連れてきんじゃぞ~」


「ですからお父様 声が大きいです!それに祝詞って!?」


「ガハハ 星見の司祭を連れて来たんじゃわい!

なんせ娘二人は貴農家の資質に恵まれんかったが、今度こそ貴農家の才能があるはずじゃわい!

3歳まで待てん!今すぐ祝詞を上げさせ我が家の盛衰を確かめるんじゃ!」


どうやら二人のやり取りを聞いていると、えらい早く七五三(祝詞?)でもされるらしい。

その結果次第では子供の人生がものすごく左右されるなんて話だ。

しかし3歳でやるようなものを今やるなんて。キノウカの才能?

何から何までさっぱりワカラン…赤ん坊扱いで(事実赤ん坊)何も説明してくれん(するわけがない)…。


やがて司祭様と呼ばれる若い青年(?)が現れて何やらボソボソと呪文のようなもの(祝詞か?)を唱え始めるとなんだか身の回りが暖かくなってきたような気がする。


ん?目が見えんのに俺の体なんか光ってる感じがするぞ?と思ったその矢先

司祭さん(?)が急にでかい声を上げた!


「おお~これはこれは、お喜び申し上げます!貴農家の資質がおありですぞ!それに火の反応もございます。」


「おっ!おお~」急に周りが騒がしくなった。


「ぬお~そうかそうか流石ワシの孫じゃの。ちゃんと才能を持っとるの!」


「ん?どうしたんじゃ司祭?」


「これは...さらにお喜びを申し上げないとなりません!

水…えっ?いや、なんと⁉

さらに土にまでも反応がございます!」


「!…なんと3つと申すか!」


なんか周りの空気が変だ。

さっきまでの騒々しい感じではなく、妙な緊張感が張り詰めだした。

…なんなの?俺まさか爆発すんの⁉


「?司祭…どうかしたか?」


「アルベルト様 恐れながら申し上げますが...

本日、どうやら私は体調が悪いようでございます.....。

...この星見は後日やり直しが必要だと思われます.....」


「?…!皆の者 すまんすまん!

本日の星見はどうやら失敗じゃ!

やっぱり祝詞は3歳を待たねばならんようじゃの!」


「すまんが本日はこれでお開きじゃ!

皆の者 実にスマンかった!」


周りの空気が緊張したかと思ったら今度はえらくザワついてそんで静かになった。

なんかじいさんが強引に追い出したようだ?が?


まぁなんだ…そうか失敗か…夢の中までやり直しですか…ええそうでしようともよ。

夢でもそうそう都合の良い展開はありませんわな。

ええガッカリなんかしてませんよ。

ちっともね。とかやっぱり凹んでいると司祭が話し出した。


「アルベルト様、私の星見の祝詞では土までどころか風にまで反応が出ておりました…それどころかまだ反応の限界に達しておらず・・・。あのまま続けて...その...もしそれを超えて、“キリ”の反応が出てしまえば、否応にもあの腐った協会に知られてしまいます...もしそうなればお孫様の身に.....。


もちろん“キリ”と言えば王宮神学の宮に記録にわずかにあるくらいのもので、いくらなんでもそこまでは心配しても杞憂だとは思うのですが、いや、私の・・・もし万が一・・・。

やっぱり私、本日は体調が悪いようでございますので、とにかくこれで失礼いたします。」


「…待たれよ司祭殿 」


「アルベルト様…申し訳ございませんがこれ以上祝詞は続けられませぬ…」


「司祭殿…教会へは?」


「もちろん体調が悪くて祝詞が失敗したなどと...そのような報告はする必要などございません…」


「う、む そうか...恩に着る。...司祭殿...」


ん~?

よくわからい会話だが“恩に着る”ってことは、さっきの話の中に何かヤバいものがったってことか?


おや?司祭さんが下に降りて行ったぞ?...帰ったのか?


 「…ゴス」


 「承知いたしましたアルベルト様…」


ん?ゴス?誰?…声はえらい野太かったが?今下に降りたのはそのゴスなのか…?


「エマや… 祝詞は予定通り3歳になったらじゃ、の。」


「...はいお父様...。」


何やら火やら水やらに才能がありそうだったのに、急に何この雰囲気?それに“キリ”っていったいなんだ?


……………………………………………

…………………………………

………………………



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