第39話 ナスターク帝国⑥ゼウト編 姫と思い
姫の部屋と書かれた立て看板が置かれた部屋の前に案内人が止まった。……ひ、姫の部屋ーーーー!
ひ、ひ、「ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ……。」
「なーーにーーをーーわーーらーーっーーてーーるーーんーーだーーいーー。」
「ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ……ヒ、姫……。」バタン。
倒れたゼウト。
「たーーおーーれーーてーーしーーまーーっーーたーーみーーたーーいーー。えーーとーーどーーうーーしーーよーーうーーかーー。ひーーめーーさーーまーーのーーもーーとーーにーーおーー連ーーれーーしーーなーーけーーれーーばーーいーーけーーまーーせーーんーー。」
ガチャン。
「大きな音が聞こえたぞ、どうした。」亀人。ここになんのようできた。
「たーーおーーれーーてーーしーーまーーっーーてーー、ひーーめーーさーーまーーにーー会ーーわーーせーーなーーけーーれーーばーーなーーらーーなーーいーーのーーにーー。」
「そうか、では、この子は自分が陸人用の医務室へ連れていく亀人は報告を頼む。」
姫様のお客様であったのでしたら今すぐに処置しなければ。このような姿ではダメだ。服を新調させよう。
「はーーーいーー。」
・・・
「ここは。」
「アルツー。」
「アルツー……。」
「ここは医務室。これはアルツーというここの最高傑作なんだ、素晴らしいだろ。それで、なぜ君は姫の部屋の前で倒れていたのだ。」
アルツーは最高傑作……。
「……姫様なんだって。セレナって。」
「ええ、セレナは姫様です。」どうしたんだ。
「セレナを男だと思っていた。姫様だとは知らなかった。ここの領主だと、聞いたけどまさかお姫様とは思わなかった。」
「セレナ様はここの領主様です。お父上に頼まれたためここにいらっしゃるそうです。いかがなさいますかあなたはお会いになりますかセレナ様に、お会いしにくいようでしたら代役をたてますが……。」
こいつにそこまでする意味があるのか……亀が連れてきたものだぞ……。
「あなたはセレナを領主としてふさわしいと思うか。」どうなんだ。
「……。」
……怖くなってくるほど沈黙が長い。
「セレナ様は民思いなお優しいお方です。少々前が見えなくなることがあります。それが民のためなのですが将来性がないこともあります。なによりも、なぜまだ齢19歳のセレナ様を39歳で引退してまで任せたのか理解できない者が多くいる。そんなお方です。」
古参は受け入れられないってことか。
まだ、書類仕事をするには若いとは思うけど、外に出歩くなら42ならもうやっていけないだろう。政権を握る人間には。相手できない。
「優しすぎるのも考えようということですか。」
「その通りだ。」
大変なようで……、19歳か、二十で父親は娘ができたのか……。なにかおかしい気がするが……。
では行くか、姫に会いに。
「セレナ様に会いに行くから案内頼めるか。」
「わかったぞ、ご婦人。」
「……そういうな、なぜご婦人になる。」
「セレナ様が仰っていた。私が一度惚れた女性は誇らしく、逞しくて男勝りであるがゆえに恋い焦がれたと……。」
「男に免疫がなかっただけだろ。そもそもそいつに惚れたというのもうかがわしい。」
「そうかもしれない。でも、君がセレナ様の初恋の人であるのは確かなようだ。」
「そうか。確認したければしてもいいが男だからな!」
「百億人の一人に男でも女でもない人間が現れ、13の歳月を過ぎると性別を持つ人間がいると本で読んだことがある。」
「つまり、俺が姫様に会ったときはどっちでもあったとか言いたいのか。」
「いや、今の君もそうじゃないのかと思っている。」
「そうだよ、俺は男であって女にでもなれる特異中の特異体質。雌雄溶融。」
「混合でいいと思うぞ。」
「俺が嫌なんだ。雌雄混合なんて……。」
「……どっちでもいいことだ。なぜなら姫様は君に会いたがっていたのだ。それがなにを意味するかは理解しかねるがそこは二人でなければわからないものがあるのだろう。……姫の部屋に案内する。」
「ああ、姫の部屋までよろしく。ところで名前はなんて名前。」
「アルツー。」アルツーはもう聞いた。
「シャドウ。」
「コードネームじゃなくて。」
「いいじゃないかコードネームで。君の名前は。」
「ゼウト。」
「ゼウト様……そんな人が面会に来るなど聞かされてはいませんでしたが……。」
「誰が来る予定。」
「ジアという方でした。」
なるほど、そういうことか。
ーーーーー
セレナの部屋。
「久しぶりね、セレナ。」
ゼウトの妻ジア。変装の達人。
「いつから、アヤミに変装していたの。バレなかったじゃない。」
「変装なんてしてないわ。」
「そうでしたの!それは興味深いです。」
「聞きたそうですわ……聞きたいの。」
「はい、是非聞かせてください。ジア様。」
「いいわ、そこまで長くはここには居られ、られないから手短に言うわ。」
「
ここへは荷物に変装してきたわ。
ゼウトが持っていた青と白のジャケットに変装してたわ。
そうやってこの塔まで入ってきたわ。
でもアヤミって娘にバレたわ。理由を聞いたら自分も変装するときは服に変装するから……。
」
って言ったけどあのバレかたは不自然だったわ。
「…………、ジア様、ジア様。ジア様ー!ジア様!
ジーアー様!早く続きを聞かせて。」
「わかったわ、続きはこうよ。」
「
そのあとはその娘に連れてきてもらったわ。
」
「えーー、それだけーー。」
「姫様そんな顔をしてはいけません。あなたは姫なんだよ。」
「いいじゃないアヤミ。あなたはなぜここに来たの。」
「私はジアが姫に会いたいと言ったから。」
私が姫に会いたいと思ったからです。
「そんなことよりゼウト遅いわ。」
「なにかあったみたい。なぜか倒れたみたいなのゼウトさん。」
「倒れた、そうだったわ。なぜ倒れたのかは後程聞くとしますわ。」
「心配ではないのですか、ジア様。」
「聞かなくても何となくわかりますわ。本人の口から直接言って欲しいわ。」
「なぜだと思っていますか。ジア様教えて。」
「教えるわけないじゃない。聞こえなかったの。フフフフ。」
「……そう、ジア様に聞くのはもういいのです。そんなことよりアヤミ。あなた、好きになったんじゃない。」
「……。」赤くなってない。
「そうなの、あげないわよ。あの人は私の夫なんですから。」キャー!
「聞いたときに諦めましたよ。そういうセレナ様はどうなんですか。好きなんじゃないですか。」
「初恋の相手だと思っていたのだけど……。本当にそうなのか不安なの。」
「嫁さんがいるのにまだ狙っているの……。」
「そうなの。……セレナはまだ、……諦めたくない。」諦められないの。「運命の王子様を。」
「ば、違、違うから。」そうでしたの。
ふーん「そうだったらいいわ。私は夫と別れたいと思っていないわ、あの人見てると昔を思い出して恥ずかしくなるわ、でも隣にいたいわ。」
昔から許嫁だったけど私が隣にいたから私はあの人の……。譲りたくない!
コンコン
「失礼いたします、姫様。シャドウです。」
「シャドウ、入っていいぞ。」
ガチャン
「「失礼します。」」
「「「キャーー!」」」
「ワーー!」「ギャーー!」
ビックリしたの。ビックリした。
「驚いただろ。それにしてもお前いつからここにいるんだ。ジア。」
「あんたと一緒に来たの。アサナには止められたけど……。」
なら来なければよかっただろ。
「なら、姉にも言われたんだろ。来なければよかったんじゃないのか。」
「意味わかんないからローザさん。今までは籠ってるように言ってたのに出ていけって言ったんだよ。本当に意味わかんない、ったらありゃしないよ。ローザさん。」
「姉さんは……。」
なに、ローザさんがどうかしたゼウト。
「姉さんにそんなこと言われたなら仕方ないか。それでキースは……一緒じゃないのか。」
「置いてきた。ローザさんがキースは置いていきなさいって……。」
「そう……か……。そう……。」だったのか。
キースも大変そうだな。姉も大変そうだった。手伝いたかったけどあんなの見たら無理だった。
「待ってジアさん。今、ローザがジアさんを追い出したのにキースを残したって言った。……。」
「ええ。」そうよ。それが、嘘……。
ふざけないでよ!
「ふざけないでよ!ゼウト、どういうこと!」
「……。」
「答えなさい!」
「……。分かった。ローザは死んだ。寿命で……後継者がキースに選ばれた。運命には逆らえない。」
「待って、なんで私は知らなかったの!あの場所の守護者になぜ息子が選ばれるのよ!女が選ばれるはずでしょ。だからイレンが選ばれるんじゃない!」
「そうだ。選ばれたのはイレンだ。イレンが……選ばれたんだ……。」「なら、なんで!なんでキースが選ばれたのよ!」
「志願したんだ。最後の一人になるために……。」
「志願した……。なにそれ。意味わかんない!」
本当に意味わかんない!みんな。みんな……。
ローザ、ゼウト、アサナ、イレン、ナタレ、みんなみんな……意味わかんない!
「一つだけ確かなことがあるんだジア。……イレンとキースは恋人同士っていう真実が……。それが理由みたいなものだ。キースが守護者に選ばれた理由……。お前が知らなかったとは思わなかった……。
ジア、イレンもキースもお前が好きだったから自分達が率先して自分を守護者にするように頼んだんだ。分かったか。ジア。」
「余計意味わかんなくなるでしょ。そんなこと言ったら、ジア様が可愛そうで仕方ない。」
ジア。
「はぁ、ジア理解するのだ!あの子達が自分の意思で決めたこと。」
「意味、わかんない!」
「……。」