第23話 クラノス編8 妖精キーパン
こいつの頭に全然当たらねぇ。どう考えても頭のあのヒョコッとでてる薄黄色の石が弱点だと思ったけど当たらんねぇ。正確には当たるけど全くダメージがねぇ。固すぎんだろあれ。
ってことはやっぱりあれは違うか……でもな……でもな……。諦めよう。でもこいつ一回剣劇で片腕取れたきり全く外傷受けないんだよな。なんでだ。
うーん。おっと考えようとするとすぐに突っ込んでくるんだ。
俺は何回これにやられてるんだ……。かすった。
なるほどな。こやつに授けるには少しこやつ力がありすぎではないか。ネズミよ。
「パキパキパキパキ・・・。」
「え、そうなの。」
「パキパキ……パキパキ……パキパキ・・・。」
「そう……だったの。」
もしかしたらこの子、奇跡人なんじゃない。
「はぁーー、キーパン!そう想うならさっさと決めてしないな!」
「キキキ。」そうじゃな、そうするか。
ニノ型 《侵食》
「なんだそれは。どうやって人間が分身を作っている!」
ふふふ、可哀想な子。友達作ればよかったのにまさか剣を鏡として使ってこんなことするなんて……。すごい創造力。
でもこの状況は、怒られる。キース様に。
こんなに壊されたらまずい。
キース様なかなか来ないからその間に直せるだろうけどね。
剣劇でも効かない。侵食で倒せたがどうだ……。
クソ!傷が治ってやがる!
キラーン!と閃光が走った。
うん。なんだこれは……。
「そこまでよ!妖精石があなたを認めたわ。おめでとう。」
「パキパキパキパキ・・・。」
「そうだった。わかったからほらあなた。妖精石の前に立って。」
妖精石の前……この薄黄色の石の前に行けってことか。体中が痛い。
急に眠気が……。
倒れちゃった。あー。
「ベットで眠らせてあげよう。」
ーーーーーーーーーー
うん、うーん。むにゃむにゃ。
「うそよ……。」
「おっきいです。これは負けます。」
「そうよね、あんなに大きいとかなわないわよ。」
こりゃ無理だな。さすがに100メートルはあるぞこの女。イヤーパンツは赤か。いいね。こんな最後も。
「サキ様。クラノスは残していきませんか。逃げるんですよね。」
「いいえ、そんなことはしません。あの人がいないと門が開かれないので、あそこの門は……。アサナのせいで。」
「そうでしたか。私でも開くと思いますよ。」
「……はい!それじゃあ、逃げましょう。アサナ、クラノス。」
「はい、サキ様の仰せのままに……。」
「なら俺が足止めする。そうすれば確率上がるだろサキ様。」
「そんなわけないじゃないですか。死にますよあなた。」
「いいさ、あなたたち二人を守れるなら俺は死んでもいい。」
「なら、逃げるとしますよ。クラノス。」
「そうよ、クラノス。逃げますよ。」
「……わかりました。」
・・・
ここです。……大きいこの門。
「ロダンゲート。大きいです、アサナ。開けてください。開けられますか。」
「無理です。サキ様。クラノスにしか開けられませんよ。この門は。」
「俺、俺にこの門が開けられるわけないだろ!ロダンゲートって火で開けるんだろ!その火ってどれくらいだ!」
「それなりの量です。」「大爆発よ。」
「大爆発なんてできるわけないだろ!できるのは爆発ぐらいだ!」
「大丈夫です。0.5メートルの火の量でも大丈夫です。」
「マジで!それなら大丈夫だ!やる気出たぞーーーーー!」
「開くことはないですが。」
「そうよね。それくらいじゃ開かないわよね。」
「どれくらいで開くか知ってるアサナ。」
「やっぱりサキ様知らなかったのね。」
「うん、わからないです。ここなら後ろの大きいのに逃げられます。」
「もう二十歩もすれば来ますよ。いいの。」
オオー!やってやるぞーー!
「クラノス次第です。応援します。アサナも手伝ってください。」
「がんばれ!がんばれーーーーー!がんばれーーーーー!ク・ラ・ノ・ス。」
「「がんばれ!がんばれーーーーー!がんばれーーーーー!ク・ラ・ノ・ス。がんばれ!がんばれーーーーー!がんばれーーーーー!ク・ラ・ノ・ス。」」
いくぞーー!「おりゃ!」
ピカッっと光って門が開いた。
「開きましたね。サキ様。」「開きました。」
「でも、追い付かれたです。」
「そうですよ、どうするんですか!」
「どうするればいいですか。アサナ。」
「二人は先に行け!ここは俺が何とかする!」
やってやる。こんな大きい化物に勝てる。……とは思えないがやってやるぞ!
「クラノス!なにいってるんです。そんなことしたら死んじゃうです。そんな無茶なことしないでくださいです。大丈夫です。あなたも一緒にくるんです。」
「そうよ、クラノス。そんなのと戦ったら死ぬわよ!」
「うるさい!俺はやらなければいけないんだ!二人をサキ様を守ることは俺の務めだーーー!」
「クラノス!クラノスーー!」
サキ様すまん。やるぞ。
「サキ様、アサナ。死んだら意味ないからな。」
くそ、涙が止まらねぇ!止まれよ最後なんだぞ。しめしがつかねぇだろうが。
「なにいってんの!あんたが死にそうなんじゃない!」
だから言ってんだろ、後は頼むぜ、ってよ。
じゃあな……。
「じゃあなアサナ。」
パシッ。
「あ、ごめんなさい。顔叩いてなぜかわからないけどそうした方がいいと思って……。」
なにするんだ、アサナ。
ーーーーーーーーーー
パシッパシッパシッ。
「ごめんなさい。三発も追加で叩いてしまいました。」
「あ、そうだな。お陰で起きたから大丈夫だ。ありがとう、気にしないでくれ。それで、なぜあのゴーレムに襲われたのか説明してくれないか。」
「説明、もうしたと思うけど。」
「パキパキ……。」
「聞いてなかった。あ、そうだったね。」
キーパンと戦ってたから聞こてなかったのね。
「パキパキ……。」
「……何て言えばいいかな。」
「どうしたんだ。」もったいぶらずに早く言えよ。
「教えてあげるから、妖精石の前に立ってくれない。」
……それが怖くなったから言ってるんだ。
そういうんだったら余計に教えろよ。
「い……や……だ。それをやる前に教えて欲しいんだ。……頼む……お願いします。」と頭を下げた。
「……。どうする。教える。」「パキパキ……。」「……そう、うんわかった。教えるとします。そこにある椅子に座るように。なーんて椅子はないんだけど……。」
ああ、どこに椅子なんてあるんだ。
「パキパキ……パキパキ。」
「本気……。」
「え、えっと。そこに座って。」
「……どこ。」「ここにこうやって座る。そうです、ね……。」
辛いからいやって言っているようだよ。
「そうか、辛そうだな。」
座る……。「うわぁ!」
「どう、すごいでしょ。」
「どうなってるんだ。」椅子ができた……。空気椅子ができたぞ。
柔らかいし、いい椅子だ。触ってもなにもないのに。なんだこれ。
「これは、イパチェスっていう妖精魔法なのよ。」
妖精魔法。アサナが妖精と友以上の契りを結ばない限り妖精魔法は使えないし触れられないっていってたはずだ。
なのに、「なんで俺は座っているんだ。妖精魔法に。」
「妖精と取引したから。」
妖精と取引。契約した訳じゃないのか。取引ってなんの話をしてんだ。
「あなたは妖精キーパンと・・・。」
「パキパキパキパキ。」
「取引なんてした。」
「パキパキパキパキ・・・。」
「……え、えーー!嘘!」
「パキパキ・・・。」
今のは俺でもわかった。本当ですっていったな。
でも、妖精と取引とか友以上の関係なんか結んだ記憶はないぞ。
「えっとね、あなたはキーパンと親友みたいよ。」
「へー。なら妖精魔法に触れられるわけだ。それで、なんでそんなことになったのか説明してくれるか。」強くなれるならよくよく考えたら願ったり叶ったりだから。
「あなたはキーパンと親友になりました……。妖精魔法のファルバという石魔法を使用出来ます。
おめでとうございます。クラノス様。
さしつかいましてはキーパンと契約をしてはくだされませんか。契約には関係なくキーパンはあなたの元へやって来ますので契約したくなければ契約してくださらなくても結構です。
しかし、妖精の恩恵を受けることが出来れば更なる力を受けとることが出来ます。いかがいたしますか。」
「それは、さっきから言っている通りキーパンと対立する理由を求めているはずだ。教えてはくれないのか。」
「……わかりました。……あなたの言葉に従います。」
やけに嫌そうだこいつ。
「あなたはこの子達パキパキちゃん達になつかれていることはご存じ……よね。」
「そうだな、間違えて連れてきたらしい。」全く迷惑な話だ。
「この子達が言うにはあなたはベリヘスの称号を持っているそうですね。そして、私の姉。私より前にあった人にこの子達はベリヘス持ちのプパシカを連れてくるようにいいました。」
用事……プパシカがベリヘス持ち……ベリヘスって称号ってなんだ。
「ベリヘスってなんだ。」
「あなたは前世の記憶を持っていますか。クラノス様。」
前世……。
「たぶん、あると思う。」
マルバ星、マロウ大陸。
「それがベリヘスの称号。」
「パキパキ・・・。」
「この子達が言うにはあなたの方がベリヘスの力が強くて、コモンというものを使えるそうです。このコモンは姉が調べているものです。……っとそんなことをあなたが知りたいわけではありませんでしたね。あなたはただ私がキーパンと契約させようとした理由でした。」
キーパンと契約することが目的だったのか、こいつら。
「パキパキちゃんは妖精を使えるとコモンを使える。コモンは空間を越える銃を使えるようになるそう……。それで、姉に妖精のいる場所を聞いたらキーパンの所。つまりここを勧められたというわけです。これが理由です。」
コモンの空間を越える銃を使えるようにしたいが妖精と契約しないと使用できない。
あいつはプパシカを狙っている……のか。
「つまり、こいつらパキパキはコモンっていう空間を越える銃を俺に使わせたいってことか。」
「そうなるね。」
「コモンはそんなにもすごいものなのか。」
「……。それは……ごめんなさい言えません。」
「そうか……。帰ってもいいか。」
コモンなんて得体の知れないもの誰が使いたいかってんだ。
「パキパキ…………。」