第12話 軍大将ポログとカルディオス王国
6ヶ国同盟が結ばれて少し経ったときに少しさかのぼる。
ペルマム王国の設けられた自室へ帰ってきたハートはカルディオスにゾイフィア帝国のポログ率いる軍団四万人が攻めてきた時のことを思い出すハルコート。
ポログは第1から第4まである師団を率いていた。
第一と第二の師団である二万人が横一列に一人ずつ並び攻めこむ。
横一列で並んでいるため攻撃には戦法的には弱いが攻めこむ意思を見せるのにはいい方法だった。
攻めこむポログ軍の中には人一人分のリュックを背負う者もいた。
そんなゾイフィア帝国のポログ軍はカルディオス王国との国境付近へとやって来た。
軍は一時止まりなにかを待つようにしていた。
そこにドン!と大きな音が聞こえた。
軍との境になっていたはずの壁が一部破壊され更地になっていた。
今だと言わんばかりにポログ軍が攻めこみどこからか持ってきたロケット砲で国境の壁やその付近の建物を破壊していく。
そうしてゾイフィア帝国との国境付近のカルディオス王国の町は壊滅し奇襲作戦で初戦はゾイフィア帝国の勝利となった。
その後も村や町の人々を倒していきポログ軍は進軍を進めた。
彼らはゾイフィアの者でない限り殺せ。
というポログの言葉を支持し村や町にいる人々は女子供に限らず全員殺していた。
そんな中、ポログ軍が砦へと攻めこんできた。
そこには今までポログ軍が滅ぼしてきた村や町の生存者達が逃げ延びた場所だった。
彼らはこれから王都へ向けて故郷を捨てて旅立つ予定だ。
しかし、現実は容赦なかった。
ポログ軍は砦にいた兵士をここに来るまでの経験則で殺していった。
そしてポログが砦の扉を開け名乗りを上げた。
「我が名はポログ。ゾイフィア帝国の軍人であり軍総長なるものを任されているものだ。これより貴様らに問うことがある。今すぐにゾイフィア帝国の国民となるなら生かしてやろう。ただし立った一人でもこの場にゾイフィア帝国の国民とならぬものが居ればこの場は破壊する。さぁ選べ。」
「わかりました。なりますからどうか、どうか助けてください。ゾイフィア帝国の国民になりますから。」
と言った風に帝国民になると言うことが多かったが今だに故郷を捨てられず返事ができない人も多かった。
時間は待ってはくれなかった。
ポログが明朝までに決めよ。と言って出ていった。
砦の中にいた人達は殺されるよりはましだとゾイフィア帝国の国民になろうと誓った。
翌朝、ポログが砦の扉を開け入ってきた。
「答えを聞かせてくれ。良い結果を待っている。」
そう言うとポログは笑った。
微笑みでも砦にいる人達にとってはそれが殺すからなと言う脅しのようにしか見えなかった。
一人が代表してポログの前にやって来た。
「我々はあなた方ゾイフィア帝国の参加に入り帝国民となりますからどうか命だけは取らないでください。」
「ならば奴隷にはしていいのか。」
ポログが聞くと代表して出てきた男は血の気が引き冷や汗が止まらなくなった気がした。
「それでも構いません。帝国民となりますのでどうか命だけは取らないでください。」
「うむ。」
ポログが代表の男になにかを言おうとした時子供の声が聞こえた。
「ふざけるな!お前らみたいな野蛮な奴らがいる国になんか入るもんか。お前らなんか死んでしまえばいいんだ。ふざけるな!」
「やめなさい。これしか助かる道はないんだ。」
「そうだぞ、貴様らに選択しなどあってないに等しいのだ。黙っていろ子供。」
「ふざけるな、ふざけるな。」
「はぁ、仕方ない。おいシルク。」
「はい、ポログ様。」
「エースを呼んでこい。」
「わかりました。」
シルクに呼ばれエースが砦にやって来た。
「来たなエース。ではあの子供の相手をせよ。もしお前が勝ったらお前をゾイフィア帝国に返してやる。しかし、ここにいる奴らは我が手で全員殺す。もしお前が負けたらこの砦にいる者達は不問とし放置するがお前は殺す。さあ戦え、エース。」
「わかった。」
シルクは子供に子供に自分の剣を渡し外へと誘う。
外に出た子供とエースの戦いがシルクの合図で始まった。
エースはシルクにマシドの薬を飲まされた。
これを飲めばポログを殺せるかも知られないと言われたからだ。
エースは子供に対して剣を振り続けた。
木剣ではなく真剣を、子供はシルクからもらった自分と同じくらいの丈がある剣を使いなぜかいなしていた。
そしてエースが子供の後ろに立ち取ったと思い剣を右から切り上げ少年の左目から切り捨てるように狙う。
しかし、少年に当たる前に少年の右手がニョコッと顔の隣から出てきてエースの剣を弾く。
子供はエースと正面に対峙するときに左へ向けて払うとエースの腹から血が出てきた。
エースは戸惑いながらも怒りに任せて少年を斬りかかっていくがさっきまでの勢いはなくなっていた。
それは少年もわかったが砦の人達のためにと抗う。
そして見事、少年が勝利した。
エースは膝をついて倒れた。
ポログはその姿を見た後、倒れてしまった。
ポログが目を覚ますと軍の一人が茶を入れてくれた。
その見知らぬ女に切りつけると唇を奪われ何かを飲まされると青髪になったポログ。
ポログは砦の人達と少年に感謝されたがそんなことは気にせず砦を破壊した。
砦には怪我人など十人ほど残っていたがポログに躊躇はなかった。
砦に残った人達は全員生きていた。
しかし、なぜなのようなことができたのかわからないと砦の人たちは語ったという。
砦に残った人達は全員仰向けになっており外にいた人たちは死んだと思っていたが子供一人入れる隙間を通って少年が入っていくと全員生きていた。
地下通路があることを教えて怪我人を抱えながらも外へと出てきたという。
その少年が何者でなぜ助かったのかは今も謎のままだ。
しかし、助けたのは一人の少女と仲良かったためであろうと推測できる。砦が壊れた時に少女は足を怪我した母に寄り添っていたため外には行かなかったその子が心配で行動し結果的に全員を助けたのだから彼はれっきとしたヒーローと言えるだろう。
そんな報告があったにも関わらずポログ軍は町や村にいくとそこに住む人々や建物を破壊し生存者は一人もいないと言う。
そんなポログ軍が小国であるペルマム王国との国境付近へとやってくると国境を越えることはなくカルディオス王国最強の盾と呼んでいる要塞へと向かったと連絡があったがそれから数日ほどで要塞は堕落した。
その時聞いた話ではポログ軍は砦へ向けてコンテナの乗るトラックでやって来たようだ。
その車が一台要塞の壁をなんとも思わないかのように突っ込んできたと言う。
大きな音と共になぜかトラックは突っ込んでおり中に侵入され次々とトラックが入ってくるとバンバン爆発音が聞こえて要塞の内部は跡形のない姿となり壁で見張っていた兵士もそのトラックから放たれたガスで全員死んだそうだ。
その時また進軍が一時的に止んだ。
その時、ポログは熱を出して倒れてシルクに風邪薬をもらい青髪になり侵略する。
その間にカルディオス王国軍とゾイフィア帝国のポログ軍が相対した。
カルディオス王国は全軍が出撃しており防衛は少しだけ残りペルマム王国に頼み移民として生活しているいる。対するポログ率いるゾイフィア帝国軍は元々第四まであったが第一師団ほどの一万ほどしか残っていない。
つまり、四万人いた兵士も今では一万人しかいない。
そんな中、ただの村を侵略してまたポログは倒れてしまう。
また薬をもらうポログの体が変化を遂げた、化物に。
化物となったポログは味方であるはずの兵士も倒してしまい残るはポログを含めて千人ほどしか残っていなかった。
アルブトは怒っており般若の顔でポログの軍団の一人に会った。そいつが言うにはあの10メートルあるミノタウロスのような化物がポログのようだ。
話を聞くにマシドの薬の効果で化物になってしまったらしい。
変わったポログの姿に驚きながらも治そうと結晶を口に放り込むが効果が出ず無理なので殺すことに決めたアルブト。
アルブトは剣を使い右足に切り込む。しかし固くてカスリ傷しかつかない。
どうすればいいとアルブトは思ったが武器を持つ軍の人達と協力することを決めた。
「おい、お前らゾイフィア帝国の兵士だろ手伝え。」
「ふざけるな、あの人はポログ様だぞふざけるのも大概しろ。お前ら王様が無能だからこんなことになったんだろうが。」
「悪かった、反省する。すみませんでした。」
アルブトは深く腰を曲げて謝った。
「良かったぜアルブト様。俺らの大将を頼めるか。」
「それは無理、倒すから。」
「そうか。」
アルブトの一言に意気消沈な軍の残兵。
「やっぱりな、ふざけるなよ。あんな風になっちまっても俺達をここまで育ててくれた人なんだぞ。」
「治せないからもう殺すしか方法ない。」
「そうか。」
「こんなこと言うのは酷なのはわかってる。でもお願いだ。ポログを助けるために倒すのを手伝ってくれ。」
また頭を下げるアルブト。
今アルブトの周囲には二百人ほどいるがアルブトに協力的な人物はいなかった。
それだけポログを慕っており、アルブト達王に失望していたのだろう。
「わかった。」
そう言ってミノタウロスになったポログの元へ向かうアルブト。
その背中はあまりにも頼りなかった。
そのため誰も一緒に行こうとはしなかった。
アルブトはまた一人ポログと戦いに行く。
アルブトは剣を振るった。掴もうとしたポログの指にあたり人差し指が斬れた。
その痛みで手を引いたため、アルブトは喜びながらも逃げ出した。付近を隠れ2太刀目のタイミングを探す。
その時、なにかを感じたアルブト。そこへと足を進める。そこには結晶があった。
これを破壊すれば倒せると思い壊すために奮闘するアルブト。
しかし、ふるい落とされてしまう。
アルブトは考えていた。兄バゼブトと同じこと出きるのではと。
そう思い意識を集中するアルブト。
ピキッ!と体が剣のような線になった気がしてポログへ向けて剣を振るうアルブト。
ポログのミノタウロスは真っ二つに斬れてしまった。
アルブトはポログを撃退した。
一度近くに行くとミノタウロスの姿は解けてポログが裸で倒れていた。一直線に線があり本当にポログを殺したのは自分なんだと再確認したアルブト。
かわいそうだから着ていた軍服をポログにかけた。
ゾイフィア帝国軍がいた場所に行き、ポログは死んだと報告した。
「「「「「「ありがとうございました。」」」」」」
集まっていたゾイフィア帝国軍はアルブトに感謝した。
「ポログゾイフィア帝国連れ帰る。他はここ埋葬する。被害すごい。」
「ああ、それで残ったやつを全員集めるとしよう。怪我人を何とかしないとな。」
そんなことを言うゾイフィア帝国軍の一人。
その中の1人が青く髪が変わっていたと言った気がしたが気のせいだろう。
アルブトは生き残ったゾイフィア帝国軍を導き国に帰りながらカルディオスの死んでしまった人を弔っていった。
それが他国特にカルディオスが驚異と感じたことだった。人間性に驚異を覚えたなぜなら彼が侵略者となったらどうなるかわからない。
コラルとは敵対関係ではあるが意外と仲がいいためコラルに相談しコラルが他国に連絡して会議が開き六ヶ国同盟が結ばれた。
それがカルディオス王国がゾイフィア帝国に与えられた恐怖だった。




