第9話 幹部の会議と願望の鏡
バゼブトとセレナの間に子供ができたことを知ったアルブトとその従者カフィナがナスターク帝国に着いた時まで遡る。
ゾイフィア帝国の会議室、そこには重苦しい空気が広がっていた。
一人の寡黙で巨体な全身鎧を着た男ポログが原因であった。
空気に抗い口を開く総務を担当するマグス。
「今日の議題は、アルブト様にアルブト様は。」
ベアードがバグっているマグスに心配で声をかける。
理由は代理でいる者の迫力にやられているからだ。
「おいマグス、大丈夫か。」
「だだだ大丈夫。大丈夫。大丈夫。」
「そうか、俺がしきらせてもらう。」
お前には無理だから俺がやってやる。と言ってポログを見るベアード。なにも言われないため議会を始める。
「今日の議題だがアルブトが言ってた……アルブト様が言ってた事についての真相だが、みんなに意見を聞きたいんだが本人がいる時に聞きたかったがいないから聞いた話で確かめたいがどう思うコアクマ。」
アルブトと呼び捨てにしたことに憤怒したポログが机に右手を殴ったため一度会話を止めたがそのまま続けたベアード。
なぜコアクマから聞くベアードとマグスは思い、私からとコアクマも驚いていた。マグスかポログのどちらかに聞くと思ったけどベアードの真意がわからず意外と思うコアクマ。
「別に、それでいいわよ。」
「願望の鏡なんて本当にあるのか、俺見たことないんだが。」
司会であることも忘れて自分の意見を述べたベアード。
「あるわよ。」
ベアードに目線が集められたもののコアクマのその一言でどんよりとした空気が流れる。
コアクマが話す話は嘘が多い。本当のこともあるがほとんどが空想めいた話が多い。
そのため、ため息をついてマグスがコアクマに話す。
「コアクマさん、わかってていってる。願望の鏡ってなんのことかわかってる。」
「バカにしないでマグス、知ってるから。三階の窓の側に置いてある姿鏡のことでしょ。」
マグス達がキョトンとしたがコアクマは話を続ける。
「あれに願いを言うように書いてあったからそれでしょ。」
素直に話したはずなのに信じていないような顔をする会議に集まった者達。
「本当にあるのか、コアクマ。」
突然ポログがコアクマの手を掴みそう言ったのでコアクマは驚いた。
「へ!えっと……あったわ。今はわからないけど。ってなんで握ってるの離しなさい。」
予想外のポログの反応にしどろもどろになりながらもなんとか答えコアクマは立ち上がった。
「どうしたんだコアクマ、まだ終わってないぞ。」
「手洗ってきます、会議の途中で退出する無礼をご了承のほどおねがいします。」
会議室を出てお手洗いに出て行った。
「お前、あれはかわいそうだったぞ。わざわざ手と兜の鎧を剥がして握手してだ顔ぐちゃぐちゃにしてコアクマも引いてたぞ。」
ポログに指を指しそういうベアード。
「ポログそこまでやったら手洗いに行きたくなるし、あんな引きづった顔にもなる。笑っちゃったけど……。」
コアクマもだけど俺らも引いてたからな、俺は半笑いだったが気づかれたかな。と不安になるベアード。
「確かにそうだな、あれには笑ったコアクマがかわいそうで。俺が頼んだことだったがな。」
「やりすぎてたってことだから注意した方がいいと思うよポログ。」
「頼まれたことには精一杯やるといいって聞いたことがあります。」
アルブト様とミスミさんに聞きました。とポログは思った。
「そうか、それでその全身鎧もその人に聞いたってことだよな。」
絶対にアルブト様だろ。あの人も人が悪いな。
「これは正装で行くというのを聞いてこの格好で来ました。」
マグスとベアードの二人は呆れてため息をついた。
「そんなことは置いといてコアクマお嬢様が出て言ってるから聞くがあれがなにかわかったんだよな、マグス。」
あのウノーラ信者が命よりも使命を大事にしてまで火にかけた子袋がなにか。
「あれじゃ何の話かわからないじゃん。」
「ほらウノーラ信者のだ。」
「あれ、あれはわからないよ。」
やっぱりな、そういうことだよな。
「お前の力でもわからないとはそういうことだな。」
コアクマのお嬢様がウノーラ信者と繋がりがある者だということがわかるってな。
「何の話二人共。」
「そういうことだ。」
「そう、聞き流してほしいじゃんポログ。」
はい、と返事をするポログ。
・・・
ポログの迫力と責任感にやられて手を洗うコアクマ。
今朝アルブト様に会い、今日いないがよろしく頼むと握手されたことを思い出した。
それで手を洗っている自分に後悔していると鏡から声が聞こえた。
「コアクマここでなにをしている。お前の仕事を果たさなければお前がそこにいる意味がない。
修道院で育てた恩を忘れたか、お前の代わりはいくらでもいるんだぞ。仕事を果たせ。」
「代わりはいくらでもいる。」
代わってもいいよ。こんな思いするぐらいなら変わってほしいもん。
アルブト様や環境部の部下たちと会うとき合わせる顔がないから。
「聞いてるのかコアクマ、お前の仕事は戦争を起こすことだぞ。しっかり仕事を果たせ。」
「わかりました。キーダ様。」
「そうだ、よろしく頼むぞ。お前に渡したあれを使え。」
そう言って鏡の声がいなくなったのを感じるコアクマ。
冷や汗をかいているのを背中に感じ、その解放感から涙を流す。
コアクマが戻って来た。
ベアード達が願望の鏡を探しに行くことを決めて三階に向かう。
コアクマに正確な場所を聞き角部屋へ行く。
三階の角部屋の王妃の部屋へとやって来た。
男の三人は入っていいのか不安だったが入らないと始まらないため中に入る。
願望と付箋が貼ってある鏡があった。
予想以上に陳腐なものに本物と疑う男三人。
「疑うなら自分の願望をいえばいいよ、教えてくれるから。」
ちょっと特殊だけどね。とコアクマは思った。
そこまで聞いて三人の男は疑う。
男気ないね。そう言って煽るコアクマ。
ベアードがゾイフィアの今後を願う。
鏡に映像が写し出された。
ポログが指揮する軍がカルディオス王国に攻め込む姿だった。
攻め込むポログの軍へアルブトが向かい一人でその軍に殴り込みをした。
アルブト一人で全員を気絶させた。
それを見たカルディオス王国は他国と結託しなければ負けてしまうと感じ結託した。
その結託した連合軍と悪魔の花が生まれると言った不運が続き
ゾイフィア帝国は連合軍に敗北し滅亡、他の星へ船に乗って逃げだす姿だった。
それを見て絶句する三人。
「信じられないな、これが願望の答えってことだよな。ムカつくものだな。」
「う、嘘じゃん、嘘嘘じゃん。これは全部嘘じゃん。願望なんかじゃないに決まってるじゃん。」
「願望です、だからこそこれは現実にならないようになってもらいたいものです。」
そう言った願望です。と話して自分が他国と戦争している姿を見て申し訳なさそうにするポログ。
バクってしまったマグス。
信じられないと絶句するベアード。
ポログがいたためられなくなって部屋の外に出た。
コアクマも外へ出る。
何かあるのではと外に行こうとする二人。
外に出るが二人の姿はなかった。
「やっと二人きりになれましたポログ。」
「なんのつもりなんだ、コアクマ。」
「教えません。」
そう言うとコアクマは首に針を刺した。
部屋を出てすぐにそれを済ませ教会へ走る。
殺しはしない催眠術で操るだけよ。
教会へ着きポログに催眠術をする。
「この青い目のカードを見たらあなたは私の命令を聞きなさい。返事は。」
「わかりました。」
「今回の命令は軍隊を動かしてカルディオス王国に攻め込みなさい。少数で火力だけ重視で負けるような態度を取って脇から奇襲をかけなさい。間違ってるかしら。」
作戦を練ったものの本当にそれでいいか不安で聞くコアクマ。
「わかりました。その作戦で実行します。」
「よろしく頼むわ。」
作戦を認められた気がしてホッとするコアクマ。
コアクマがそう言うとポログが教会を出て行った。
「よくやったコアクマ。やつをうまく操り我々の教義である破壊を果たせ。」
「はい、キーダ様。」
コアクマに大丈夫だ、せいぜい教義を守れと言って自室へ向かうキーダ。コアクマはバレないように隠し通路から喫茶店に向かう。
一方置いていかれた二人、ベアードが怒り狂っているのをマグスが同意しながらも落ち着くように言う。
城を倒壊しそうなほど殴っているからだ。
「わかってんだよ、やられてくやしいんだ。今から探しても遅えが探したいところだがコアクマが言ってた子袋の中身のこともきになるし手を打たないとだ。ナスターク帝国から結晶をもらいにでも行くか。」
コアクマが薬と言ってたからな。結晶をもらいに行くにしても王がいないからな。政治は面倒だな。
なんで俺はあの時断らなかったんだ。嫌ってたアルブトに言われたのになんで俺はここでこんなに悔しがってるんだ。
「今向かっても意味ないじゃん。」
そうだけどよ、全く嫌なもんだな。
「チッ、全く王様もムカつく性格してやがるな。」
「なにを言ってるベアードわかってるだろう。だからこそコアクマが動いた。」
違うか、笑って言うマグスを見て羨ましいと嫌悪感にさいなまれたベアード。
「これだからお前と馬があうのも意味わからねえな。」
「どうしてそう考えたんだいベアード。」
「お前がこの状況を楽しめるマゾだってことだ。」
「お前Sで馬があうのはわからないね。」
「そうだ、それでお前はどうするべきだと思うマグス。」
政治はお前が一番だからな。アルブトも言ってたぞ。
俺たちはバゼブト様に見いだされて幹部の部下になったのにな。
アルブトに手駒にされる現実が疎ましい限りだ。




