第7話 暴走と信者
キルトを連れてゾイフィア帝国にやって来たセレナとバゼブト。
三人はアルブトがいると思われる城へ向かうため城の近くの町にやって来た。
そこに町に火を放ちながら火の手から逃れるために逃げる町人を殺して回るアルブトの姿があり、まさに狂人だった。
「アルブトがあんなに動き回れるなんてな。」
アルブトを病弱と認識していたため暴れ回ってることに驚いているバゼブトとセレナ。
キルトは面倒なことをしてくれて、あれやったのどこだれ。となにか知っているキルト。
「あれはマシドって薬の影響だね。髪が青くなってるし力が強くなるけど正常じゃなくなる。」
「それで治せるのかキルトさん。」
「厳しい、精神異常まできてるのなら怪しい。もし巨大化まで進んでいたらもう後戻りできない。その時は覚悟を決めないといけない。」
「それでも治せる方法があるなら教えてくれ。」
「・・・わかったから焦らない。今はまだ大丈夫だから。アルブトはまだ治せるから方法はシンプル。エルト結晶を直接体内に入れればいい。どうわかった難しいって。」
キルトは優しくそして意地悪をするようにそう言った。
「ああ、エルト結晶はこの国にはないからな。」
「そうね、あるのはナスターク帝国。」
近くなのになぜ一個もないのか不安になるバゼブト。誰かの陰謀なのかと。それに誰がアルブトに薬のマシドを与えたのか色々気になることがあるが今はアルブトを治す方法を考えるのが先だな。
「今から1日はかかるのにこれで大丈夫なのかな。」
「そうよね。倒すしかないわよ腹をくくりなさい。」
やっぱりだめなのかな、諦めたくないな。
「双子の兄弟をそんなことする気はないんだからな。悪いが気絶するまでにする。」
「それが難しいから倒すしかない。」
それでも方法はあるはず、ここなら宝石商もいるはず探せばあるかもしれないな。
探して来るなとバゼブトが意気込みそう言って立ち去ろうとした時セレナが声を出した。
「待ってなの、それなら大丈夫なの。護衛の証明がそれなの。」
キルトが紫の水晶が柄に付いた剣と勲章の八芒星の頂点から延びる線があるメダル。
そのメダルの線の一個を指差しこれがエルト結晶だと言うセレナ。
キルトが取り出し、これがエルト結晶。と疑問を口にする。
「そうなの。」
「ならなんとかなる。」
「やってみような。」
バゼブトとキルトの二人がアルブトに向かう。
アルブトに二人は斬りかかったがなにをされたのかもわからず吹き飛ばされた。
「嘘、バゼブト様がアルブト様にやられたの。」
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時は遡りミモザ砦。
「これを飲めばあなたにも誰かを守る力が得られます。」
そう言って白ローブの信者に紙にスプーン一杯分の青い粉、マシド薬を渡される。
「使えば僕誰か守る力もらえる。」
「そうだ、これを飲めば君も誰かを守る人間となれる。」
誰かを守る。
アルブトが薬を口に入れる。
信者が水を渡し薬を飲むアルブト。
それが災厄をもたらす危険な薬だとも知らずに・・・。
薬を飲んだアルブトは苦しみ出した。髪の色が青く変色する。
そこへ村の女が一人やって来た。
状況を見て信者に問いただす。
「あんたなにをしたの。」
面倒だなと思ったのか女は信者に刺された。
アルブトは信者に蹴りを入れる。
すると信者は吹っ飛ばされ2つ家の壁を貫いた。
ほほう、ここまでとはと信者は思った。適正者は素晴らしいと感心する信者。
アルブトがやって来て、彼女を治せと言うが信者は聞く耳を持たない。
信者は放置し女の元に走るアルブト。
「大丈夫か。」
「ありがとう、アルブト様。あなたは侵略者ですが略奪者じゃなかった。本当にありがとう。それと最後かもしれないので私とキスしてください。」
アルブトは突然のお願いに驚きと戸惑いにさいなまれたがキスをする。
「ありがとうございますアルブト様。」
「ひとつ聞かせてくれ。」
「なんでしょう。」
「名前はなんと言う。」
「ミアです。」
「そうか、ミア。すまなかった。」
「お取り込み中すまないが君にはやってもらわねければならないことがある。」
いい雰囲気を邪魔する信者に睨みをきかせ思いっきり殴りつけるアルブト。
また吹っ飛んだ信者はもう立つことも体を動かすこともなかった。
そしてミアもまた動かなくなってしまった。
アルブトはミアの名前を呼び続けた。
二日間ずっとその時にはミモザ砦の形は残っていなかった。
アルブトが振り返り自分のやったことに後悔し城に行き王様と王妃に殺してくれるように頼みに行ったが逆に殺してアルブトは城を抜けて町へとさまよっていた所とバゼブト達が来たのだ。その事にアルブトが喜ばないはずはなかった。
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「・・・バゼブト……助けてお願い。兄さん。」
バゼブトの名前とセレナを見て少しだけ正気を取り戻すアルブト。
「アルブト、助けてやるから我慢しててくれ頼むからな。」
「わかった。兄さんが一緒なら頑張れる。」
「そうか。」
バゼブトはキルトから結晶を受け取りアルブトの近くに向かう。
アルブトの前まで来たバゼブトは無理やり飲ませた。
飲み込み倒れそうになるアルブトを受けとめるバゼブト。
その二人を襲う白いローブを着た男。
その男はキルトに取り押さえられる。
「アキリン神は間違っている。
ウノーラ神こそ真の神だ。彼こそこの世の全てを与えてくれる神だ。全能のウノーラ神に栄光あれ。」
そう言ってなにかを投げるキルトに押さえつけられている白いローブを着たウノーラの信者。
子袋は火へと向かうが勢いが全然足りず地面に落ちそれをセレナが拾い上げる。
中を確認しようとするセレナを押し倒して子袋を受け取り炎に全能ウノーラ神に栄光あれと叫んで突っ込んでいく一人の男。
「栄光あれ!」
炎の中で叫び続ける信者。
「嘘、なんであんなことができるの。」
炎に突っ込んでいく信者を信じられないと見るセレナ達。
「そうよねーー。まったくもってその通りよーー。あれじゃあウノーラがかわいそうよねーーセレナ。」
アキリンが突然現れたことにセレナが驚き呆然と立ち尽くす。
・・・
バゼブトに誰だか聞かれ、生き返ったセレナはアキリンに尋ねる。
「なぜここにアキリン様がいらっしゃるの。」
「確認に来たのよーー。」
確認ってなんだよな。それにアキリンってどう言うことかわからないな。セレナ教えてくれよな。
「教えなさい、子袋になにが入っていたか。」
「教えるか。聞いたところで貴様になにがわかる。ウノーラ様は絶対神様だ。」
こいつもスゴイな。こいつらがなにを考えてるかわからないな。
「それがウノーラがかわいそうって言ってるからーー。あんた達のそういう態度がウノーラのプレッシャーになってるからーー、わかってるーー。」
突然割り込んで来たアキリンに驚くキルト。
ウノーラの信者はアキリンを見てどこか嬉しそうだったがアキリンの言葉にだんだんと怒っていった。
「ふざけるな!ウノーラ様がそんなこと考えるわけないだろ。」
「それはそうよーー、信者にそんなこと言うわけないじゃなーーい。」
セレナに誰だかもう一度聞くバゼブト。
「セレナ、あれは本当にアキリン神なのかな。」
「そうなの、アキリン様なの。」
「そう、あれがアキリン様。それでもわざわざ来ていうほどのこと神様。」
「たしかにな、そうは思わないな。」
そんな二人の会話も耳にしてかしてないのかアキリンはセレナに一言言って早々に消え去った。
「言いたいことも言ったし帰るねーー、バイバイ、セレナーー。」
「はい、バイバイなのアキリン様。」
突然のことでいまだに整理できずにいるセレナとは対照的に、早くこのローブの信者に子袋の中身を確認しないとと考える現実主義なバゼブトとキルトの二人。
「変わった神様もいるんだね。」
「そうだな、まるで雷だったな。」
「そうなの、バゼブト様さすがなの。アキリン様本当に雷みたいだったの。それにあれだけで帰れるのがすごいの。それに・・・」
セレナが泣き出してしまった。
キルトが対応しつつバゼブトを睨みつける。
バゼブトは大丈夫だからなと言ってセレナを近くの家の花壇の縁に座らせる。
バゼブトはキルトの元にやってきて小声で話す。
(それでこの信者はどうするかな。)
(牢に閉じ込めるの怖いから別の場所の方が良いんじゃない。)
(牢獄だったらどこからか信者が脱出させるかもしれないな。どこに閉じ込めるのかな、キルト。)
まさか、一番面倒なところじゃないよな。
もしかしたら証拠隠滅するかもな・・・ はぁ。
(決まってるじゃない、この国の城の地下。)
(決まってないな、それこそ管理が無理だな。)
地下の方が大変な気がするけどな。
そもそもそこまでやらないほうがよくないかな。
こいつはどうでもいいからな。情報は進んでいくからな。過去には捕らわれる意味ないからな。
(ならどうするの。)
(普通に泳がせればいいじゃないかな。この国の兵士としてな。)
戦争したいやつは兵士にでもしとけばいいよな。
(どういうこと、バゼブト。)
(言葉通りだな、この国の王族として王政を果たさないとな。)
(そう、がんばって私はセレナ姫の護衛としてナスターク帝国にいるから。)
ずるいな、責任なくてな。それにセレナとずっといられるってことだよな。
やりたくないな、またアルブトが壊れたら困るからいいんだけどな。
(アルブトと二人でやっていくから大丈夫だな。)
(あ!セレナ姫との婚約どうするか考えないとだよ。)
(それは今考えてるからな。)
セレナと色々話し合わないとな・・・。
キルトはバゼブトの顔を見てずるいと思うのだった。
・・・
ゾイフィア帝国に二人の新王が生まれた。




