第6話 牢獄のキルト
ナスターク帝国の応接室で待っていると許可が下りたと兵士が一人入って来てキルトのいる場所へ向かう。
「それでなぜキルトさんは牢獄にいるのですか。」
それも城の地下の牢獄にな。
「それは帰りたくないと暴れまして兵士に暴行を加え逃げ出したのでこのような対応となりました。」
ゾイフィアが戦争を始めて帰りたくはないな。
それより殺すわけじゃないんだな。
「それだけでここにいれたの。」
セレナの素直な疑問に一瞬嫌な顔をしたが仕方ないと思ったような顔をして話し始めた。
「これは我ら警備兵の落ち度なので話したくないのですが百人ほどの兵士が彼女に倒されたのです。」
キルトさん、ここでも武勇伝言って作ってるのかな。武勇伝って言えるのかな。
「なるほど、さすがはキルトさん。騎士団長となっただけはあります。」
「それはお強いわけだ。」
そんな話をしていると目的の場所までやって来た。
「ここがキルトの牢になります。」
「お久しぶりですかな、キルトさん。」
「バゼブトなんのよう。私はお前に用はないよ早く家に帰りな。」
10年ちかく経ってるのによく誰だかわかったな、キルトさん。
「そう言わないでくださいな。キルトさんに会いに来たんですからな。それにしてもよくわかりましたな。」
「私を久しぶりという若いのはお前しかいない。それでなにしに来たバゼブト。まさか、私を返すために来たんじゃないだろうな。」
返すために来たとも言えますがそれは話を聞くに無理そうかな。それで護衛でもしてもらいたいかな。
この国にいても命の危険がありそうだからな。
「それでもいいかもなとは思いましたがそれは嫌そうなので違う形を考えてますな。」
「どういうこと。」
それはこの国にいてほしいってことだけどな、キルトさん。
「俺、この人と婚約することになったからよろしく。」
隣にいる女に肩を手をかけて引き寄せながらそう言うバゼブト。
「あなた誰。」
わからないからセレナのことを聞くキルト。
「ナスターク帝国の第2王女のセレナ・ナスタークと申します。」
セレナでナスタークってことは、と察したがバゼブトと婚約したのかわからないキルト。
「ゾイフィアに渡ったお姫様、それがなぜ婚約話が出たの。」
「この国に亡命しようと思ってな。」
そう、あんたが国を捨てるとはね。もう私には関係のない世界だから帰ってほしいわねと思ったキルト。
キルトさんに自慢してるのが恥ずかしく感じるバゼブト。
「無理なのか、頼めばもしかしたらな。でもな、戦争の件もあるからな。どうなるかはわからないな。」
キルトも誘うためにそう言うバゼブト。
「頼む、バゼブト。国に帰りたくないその辺は何とかしてくれ後は大丈夫だから変な気は起こすなよ。」
嫌そうだな、キルトさん。でもキルトさん頼りたいな。
「仕方ない、それじゃまたキルトさん。」
「またじゃないもうお前とは会わないよ。頑張りなバゼブト。」
キルトさんも意固地だな。
「わかった。それじゃあなキルトさん。」
「お会いできてよかったです。あのもしよろしければバゼブトの話をお聞かせもらえますか。」
満面の笑みでそういうセレナにキルトはどれだけバゼブトのことを思っているか知った。
やっと自分の番もと話し出すセレナ。
「申し訳ないがそれは無理だ。もう君たちは帰る私みたいなものに構ってる暇はないだろう。早く私のような過去に囚われず未来に行きなさいセレナ姫。」
満面の笑みでそう答えるキルトに圧倒されるセレナ。
「キルトさんは俺たちとあまりいたくないようだ。行こうセレナ。」
「そうね、わかったの。」
おいめを感じなからも渋々帰るセレナとバゼブト。
「これからどうすればいいのかな。」
「案内しますのでこちらにお越しください。」
そう言われて宿へとやって来たバゼブト達。
ナスターク帝国に亡命できたバゼブトはキルトに護衛を頼むがなってくれず断られ続けた。
また、ナスターク帝国を堪能しつつセレナと中を深めていく。
・・・
一方アルブトはミモザ砦へと戻ってきた。
「兄さんいない。僕大丈夫。わからない。」
アルブトは部屋にこもり無力感にさいなまれていた。
「あの、食事をお持ちしました。」
女が部屋にお盆を持ち入ってきて声をかけた。
声を聞き食べ物をもさぼり食うアルブト。
「あげない。」
見つめ続ける女に食べ物を盗まれると思ったアルブトはそう言うと感想を聞きたいの。どうですかと問われた。
「美味しい。もっと食べたい。」
「わかりました。」
アルブトの返事に女は笑顔を見せ外へと出ていった。
アルブトは泣きながら食事をする兄さんと言いながら……。
そんなある日信奉者と名乗るローブを着た者がやって来た。
「あなた達には喜ばしい天命を受けました。あなた方を救いに来ました。あなた方を苦しめるものを私が排除しましょう。案内していただけますか。」
そう言うローブの信者に疑問を持ったが救いと言う言葉に釣られアルブトの元に案内する村人達。
それがこの後の災厄に繋がるとは思ってもいなかった。
その日、ミモザが陥落した。
・・・
バゼブト達の元に知らせが届いた。
ゾイフィア帝国の王と王妃が殺されたと言う知らせだ。
誰がやったかわかっているのかな。とバゼブトが思うと知らせに来た男が犯人はアルブト。彼がやったそうです。と言った。
そうか。アルブトがそんなことをしたか。
バゼブトは笑いが止まらなくなった。
「大丈夫なの、バゼブト。」
心配そうに言うセレナに大丈夫だからな。と抱きついた。
「ありがとうセレナ。」
それだけ言い残してバゼブトは地下へと向かう。
一歩一歩バゼブトが来る音は牢に入れられている者達には獣が放たれたような恐怖心があり閉じ込められている自分に少しだけホッとしていた。
あれと敵対したくないと悟ったのだ。
キルトの牢にやって来たバゼブト。
「キルトさん、頼む。力を貸してはくれないかな。本当にお願いたからな。」
土下座して頼み込むキルト。
「はぁ、そこまでされたら話を聞く。どうした。」
「俺の病弱な弟が両親を殺したそうなんだがな、それはあり得ないんだよな。あいつは嫌いなやつでもそこまでするようなやつじゃないからな。だから頼む一緒にゾイフィア帝国に行ってくれよな。あんたがいれば大抵のことはなんとかなると思うからな。」
照れながら土下座してそう言うバゼブトに笑いそうになるのをこらえながら少し怒っていたキルト。
「買い被りすぎ。」
「頼むからな。」
キルトはバゼブトの方を見て微笑んだ。
「いつもの姫様はどうした。」
「置いてきた、彼女には関係ない俺たちゾイフィア帝国の人間の問題たからな。」
「そう、ならそっちのけじめをつけてからにしな。」
後ろを向くように指で指示するキルト。
音でわかるだろうになんでわからないんだいバゼブト。
「どうしてかなセレナ。」
バゼブトはわからない顔をし、セレナは恥ずかしそうに腕を交差していた。
「ごめんなさい、気になってついてきたの。私も一緒に行くの。アルブトが心配なの、なにかあったのかもしれないの。お願いなの行かせてなの。」
バゼブトの手をとりお願いするセレナ。
「ダメだな。アルブトとゾイフィア帝国だけの問題だからな。お前には迷惑をかけられないからな。だから行かせてくれよな。」
手を離しキルトの方を向くバゼブト。
「ダメなの、アルブトは私の家族なの。一緒に行きたいの。それに……それに……バゼブトが……死ぬかもしれないのが怖いの。お願いなの。」
そうお願いするセレナを気を使うバゼブト。
「わかったからな。これで涙を拭けよな。」
「うん、よろしくなの。」
「よろしくな。」
キルトはため息を吐いた。
「それで護衛を頼めないかな。」
「いいけどあんたじゃなくてセレナ姫の護衛としてならいいけど。」
そんなに頼まれても誰がゾイフィアの者の下に付きたくないのに付くものですか。
「それで頼めないかな。」
「ならここから出してくれ。」
そんなこと言うなら牢から出しな。と当然のことを言うキルト。セレナが手続きしてはいないだろうから王様に会ってこないとな思ったバゼブト。
「手続きしてくるから待っていてくれよな。」
やっぱり勢いで来たんだね。と納得したキルト。
「かけはしでやってきな。」
「はい、キルトさん。すぐに戻ってきますから待っててくれよな。」
そう言って駆け出すバゼブト。私もと一緒に行こうとするセレナの腕を取り居座らせるキルト。
「あいつに伝えることがあったのかい。」
「はい、一緒に言った方が手続きしやすいと思ったの。」
それならよかった、もう出れるなら出たかったけどセレナと話をしたいから。
「手続きしてないならいいじゃない。少しだけここにいてお願い姫様。」
バゼブトのことそんなに見つめるなんていいな。
「はいわかりましたの。」
「それであいつのこと好き。」
ちょっと直球すぎ。
「え!それはその……はい、好きなの。」
笑顔が眩しいと思うキルト。
いいものね、恋って私もしたかったな。私はもう枯れちゃたけど。
「そう、いいわね恋ができて湯水のように毎日楽しいんじゃない。」
「そうかもしれませんの。」
赤くして可愛らしいセレナと思うキルト。
「ふふ、羨ましい。私も恋したかったな。」
セレナみたいに王子様に会いたかった。
「キルトさんはしてないの。」
「あったけどここに来てからは一度も、ナスターク帝国に来てからは一度もないわ。私より強い人いないから。」
「キルトさん、女なのにそんなにこの国弱いの。」
「どうだろう、ゾイフィアでも一人だけだったからいないのが自然じゃない。」
そう言って自分の夢が儚く消え去った気がしたキルト。
「それでセレナはなんでそんなにあいつのこと好きなん。」
「あの人は恩人なんなの。私がゾイフィアに行っても一人だったの。でもバゼブトが一緒にいてくれたの。それが心の支えだったの。」
「優しさが好きになったきっかけってこと。いいわね。ズルいわ。私も恋したい。」
「頑張ればできますのキルトさんにも。」
それが辛い。