第5話 ゾイフィア帝国からの亡命
アルブトが杖を使い水攻めをしてその混乱の中をバゼブトが押し倒していきミモザ砦を攻め落とした。
砦を兵士に任せられる程になってきたため砦をしばらく開けると行って出てきたバゼブト。
アルブトはバゼブトの行動を不思議に思いついていく。
バゼブトはアルブトがついてくることを好ましく思わなかったが許可して一緒に向かう。
・・・
バゼブトとアルブトが目的地に着いた。
そこはゾイフィア帝国の城。
城内に入り自室へとやって来たバゼブト。
その不自然で不思議で異質な行動に理解できず反感し、抗議するアルブト。
正装に姿を変え出掛けてくると言って部屋を出ようとするバゼブト。
「どこ行く兄さん。」
それ何回目かなと思ったバゼブト。
来る途中に10回は聞いてきてから城に来るって教えたけどな。この後どうするかは教えなかったな。
「ナスターク帝国かな。」
そう言って薄ら笑いを浮かべるバゼブト。
その不可思議な笑みに疑問を抱き聞くアルブト。
「なにしに。」
「謝ってこようかな。」
ナスターク帝国に謝罪してくるというバゼブト。
「ふざけてるの兄さん。」
アルブトは怒っていた。
敵国に正装して行くと言う不可思議な兄に不安しかないからだ。
「どうかな。」
アルブトの思いもしらずそっけない態度をとり自室の椅子に座るバゼブト。その態度に苛立ちを隠せないアルブト。
「兄さんふざけてる。わかってない。ナスターク帝国行ったら兄さん死ぬ。」
死ぬのかな、そうかもしれないな。とバゼブトは思ったがそれでも行かなければならないと思った。
「そうかな。」
「そう、兄さん。」
アルブトはここまで言っても曲げないバゼブトが心配になった。
「俺達のせいでミースは戦場となったからな。砦一つ落とせば父さんと母さんは納得すると思うけどな。」
会うことはないけどな。と思うバゼブトにはやらなければならないことがあった。
「そうかもしれない、意味不明ふざけてる。」
「俺はこんなこと認められないだけだからなアルブト。」
それでもアルブトには意味不明、理解できなかった。
それは両親の言葉に反感を持っていたのに素直に聞き実行していたからだ。
「意味不明、負けなかった。」
「それは……父さんと母さんがなにするかわからないからな。」
アルブトの言葉を聞いてバゼブトは立ち上がり部屋をぐるぐると徘徊を始めた。それを見てアルブトは気づいた。
「本当違う目的ある。」
「そうだな、本当はただあの両親にとやかく言われたくないだけだな。ナスターク帝国に亡命しようと思ってな。」
「意味不明、兄さん期待自信持ってるすべて捨てる。」
「そうだな、でも俺はもうこの国にいたくないからな。」
「本当にそれいい兄さん。」
これ以上問い詰められるわけにはいかないと思ったバゼブトは部屋を出ようとした。
「悪いなアルブト。もう決めたことなんだじゃあまた会えたら会おうな。」
「兄さん。」
扉の前で振り返ったバゼブトの顔を殴るアルブト。
「ふざけるな。僕、僕兄さん憧れてた。すべて壊す兄さん知らない。」
そう言って部屋を出ていくアルブトと鉢合わせたセレナ。
アルブトは驚きながらも逃げるように走って行ってしまった。
セレナが部屋に入ってきた。
「セレナか、アルブトに会ったよな。」
「喧嘩でもしたの、アルブト様怒ってましたのバゼブト様。兄弟喧嘩はダメだと思いますの。」
「いいんだよ。これで俺達はいいんだよ。」
アルブトは才能がある、後は他者との接し方だけだ。
才能あっても期待に耐えられないやつより期待されたいやつの方が王族は向いてるに決まってるからな。
後は頼んだからなアルブト。
そう思って部屋を出て馬車を引いてナスターク帝国へとやって来たバゼブト。ゾイフィア帝国方面からやって来たことで不審がられたが食材を売りに来たと言ったらすんなり通ることがだきた。
馬車の中にはセレナがいた。
「故郷に返ってきた感想はどうかな。」
「嬉しく思いますのバゼブト様。本当にありがとうなの。」
「そっかならよかったな。俺も今日からこの国の住人になるからな。よろしく頼むな、セレナ。」
「私に任せてなのバゼブト様、大船に乗ったつもりでいてなの。」
バゼブトがここに来た理由はもちろん戦争の終結だが、それよりも他国に人質として出されている人を救うためにやって来た。
それはもちろんセレナだが、それはナスターク帝国がゾイフィア帝国と不可侵の締結のためでありゾイフィア帝国からも人質として渡っている人を自由にするためにナスターク帝国へとやって来た。その志を胸にセレナの後に続き王城に向かう。
・・・
謁見の間にすんなりと通されたバゼブト。
身体検査を受けて武器を持っていないか確認されると思っていたがそんなことはなくただ通された。
疑問を抱えながらも謁見の間で王の言葉を待っバゼブト。
「セレナ、セレナ、セレナーー!無事でよかったよーー。」
「ちょっとあなた客人もいるのよ。」
「そうそうパパ。心配だからってそんな風にしてたらセレナに嫌われるから。」
私のセレナが男つれてきた、妹をたぶらかしたあの男だけは許すまじ。
拍子抜けな謁見の間の空気にすこしだけ慣れてきたことで殺気を向けるセレナの姉シーエンスに視線を向けるバゼブト。
「そうなの、早くしてなの。」
「二人とも面を上げよ。此度はどのような件で参った。」
「僭越ですが私が話させていただきます。」
三人に睨まれ呼ばれてないのは百も承知だが話を始めるバゼブト。
「私は此度のゾイフィア帝国の進行に反感があるのです。その謝罪として参った所存です。そして、人質としていたセレナ様をお返しいたします。」
これでいいかな、とセレナを見るとセレナは驚いた顔をしていた。
俺だって気を使うことくらいできるからな、セレナ。
「なるほど、つまりセレナを嫁にほしいということか。」
ん、あれ。どこで間違えたのかな。
「そうよね。そう言うことよね。」
「そう言うことだったの、優男みたいな顔してるのに本当はただの野獣だったてわけ。そんな人にセレナをあげるわけないじゃない。ね、お父様、お母様。」
二人は気まずそうにしたが父親がカッと赤くなり叫びだした。
「セレナーー。嘘だといってくれーー。セレナーー。」
「ちょっと待ってください。私はそう言うつもりで来たわけではありません。」
そうそう。
「ただ、少し……なんでもありません。」
「やっぱりそうなのよ、セレナを誑かして遊んでるだけのふつつかものよ。お父様、お母様。」
「話が進まなくなるからヘレニムは退室なさい。」
「何を言っているのです。こんな時だからこそあんなものを置いておいていいわけありません。」
「護衛兵、ヘレニムを自室に閉じ込めておきなさい。」
ハッ!と敬礼し護衛の一人がヘレニムを退室させた。
「改めて聞きますがあなたはなぜここへ来たのですか。」
「セレナ様を帰国へ返還することと我が国ゾイフィア帝国の人質をもしよろしければ回収いただけないかと思い帰国に参りました。」
セレナの母はわからなかった。
バゼブトが嘘は言ってはいないのはわかったがわからなかった。
それは戦争の立役者がなぜここにいる。
まさか、セレナが誑かしたのか。
と思うほど訳がわからなかったのだ。
・・・
「お母様どうかしましたか。」
セレナの声を聞き我に帰り今だに現状を把握できずにいるセレナの母。
「セレナ、こちらに来なさい。」
「は、はい。お母様。」
王達が座るところに行くセレナ。
「どうしましたか、お母様。」
セレナに抱きつくセレナの母。
「少し落ち着いたありがとう。セレナ。」
「ははい。」
理解できなくて立ち尽くすセレナ。
そんなセレナをお構いなしにバゼブトに質問を投げ掛けるセレナの母。
「一つ尋ねたい、バゼブト。」
「何なりとおもしつけください。」
一連の流れを見ていて微笑ましいと感じていたバゼブト。自分に話をふられたことに驚いたが冷静に答えた。
「そなたは此度の戦争の立役者だ。そんなものがなぜそのようなことをする必要がある。」
理解されていない自分の発言を理解したバゼブト。
「それは、私は父や母に言われ今回の戦争の立役者となりましたが理解できなかったのです。こんなことはあまりに理不尽です、不可侵条約をしていたのにたかが子供が成人したからと戦争としかけたことに。」
「そうか、しかしそれはお主の感想ではないか。」
感想と言われたら返す言葉がないバゼブト。
それでもと気持ちを伝える努力はやめないと決意するバゼブト。
「そうかもしれません。しかし、私は少しでも貴国に謝罪をしたいのです。それとこの国に来ている人質とされている人に会いたいのです。」
バゼブトの気持ちを再確認しこの国を信頼しており、自国にはいたくなさそうだと理解したセレナの母だったが面倒事が増えたと感じた。
「そう、それでセレナ。」
「は、はい。なんでしょうか。お母様。」
はい、と疑問を浮かべながら母の言葉を待つセレナ。
「彼があなたの好きな人。」
直球の質問にセレナは驚いた。
「お、お母様!」
「どうなのセレナ。正直にいいなさい。」
母の圧に負けて顔を赤くしながら素直に答えるセレナ。
「……はい、そうです。」
「そう、ならよかったわ。それであなたは彼がこの国に来た目的は知ってるの。」
これが肝心なことよと思うセレナの母。
「この国に住みたいと言ってました。あ!違います亡命しに来たと聞いてます。」
裏取りしてるのかな。本当に信用ないな。国が国だから理解できるけどな。心配だな。とネガティブになっているバゼブト。
「そう、それは何でかも聞いているの。」
「それは両親への反感と戦争の謝罪としか。」
「なるほどね、殺されてもいいってことね。わかったわありがとうセレナ。バゼブト貴殿に言い渡す。」
突然の方向転換にこの人すごいなと感心するバゼブトとセレナ。
「は、どんなことでも受け止める次第です。」
覚悟はできてるってことわかったわ。そうしてあげる。
「そう、ならあなたはセレナと婚約しなさい。それがこの国にいる理由よ。以上これにて解散。バゼブトはもういっていいわよ。」
バゼブトは呆然としたが何度も聞き直してそれが現実だと理解し部屋を出ていった。
「はい、失礼します。」
・・・
「なにを言っている、お前はいつも勝手じゃワシのセレナを嫁に出すなどふざけるでない。」
そこまで黙って様子をうかがっていた王が口を開く。
「なに、私の決定に反対なの。いいけどまだ公認じゃないわ。また後で詳しく考えましょ。ね。」
口出ししなかった自分のミスでもあることを理解してるためグーの値もでない王様。
「し、仕方ない。しかし、ヘレニムになんと言う。」
巧妙を見いだしたと閃いた顔をした王様。
「だから言ってるじゃない。考えましょ。」
「わかった。」
王はバゼブトが出ていった部屋の入り口を見る。
「バゼブトさん、こちらへお越しください。」
そう言われて案内された応接室。
しばらくするとセレナと護衛がやって来た。
「なんでこんなに厚待遇なのかな。」
「私もここにいることが決まってたからなの。それでバゼブトはいいの婚約の話はなの。」
「いいんじゃないかな。」
「そう。」
顔を赤くするセレナとバゼブト。