第124話 逆鱗と戦
ベビロトという1kmの巨人と相対するサキ達。
その姿を見る影が二人いた。
「これはまずいの。逃げるのキザト。」
「なに言っている、彼女達を置いて逃げることなどできない。逃げるなら彼女達と一緒だ。」
キザト、あなたはそう言うと思ったの。
「わかったの、ここに残るの。」
キザトとパピザトの二人はその様子を見守っていた。
「クラノス、やっぱりアサナの言う通りです。あれは無理です。諦めて逃げるです。」
「そうよ、クラノス。逃げるのよ。」
剣を構えてじっとしているクラノス。
「クラノス、どうしたのです。」
「どうしたのよ、クラノス。早く逃げるわよ。」
「あれで最大だと思ってたのにこんなに大きくなるなんて聞いてないだけど。ふざけてるだろ。」
そう言うとクラノスはベビロトに突っ込んでいった。
「「クラノス。」」
「あの人度胸あるの。」
パピザトはクラノスを見てそう思った。
キザトはクラノスをかっこいいなと思った。
「あいつ、加勢しに行こう。」
なぜか加勢に行こうとするキザト。
「ダメなの。」
パピザトはサキ達の元へ行こうとするキザトを必死で食い止める。
クラノスがベビロトに一太刀加えた。
ベビロトは痛そうにクラノスに与えられた胸の傷をさすると血が少し流れたがさすっていた手が傷口から離れると傷は治っていた。
サキ達はベビロトのその再生能力に驚く。
その驚いていた時にベビロトの一撃でクラノスは地面に叩き潰された。
「「クラノス!」」
「まだまだ。」
血まみれになりながらも奇跡的に立ち上がるクラノス。
そしてベビロトを睨みつけるサキとアサナ。
「そうだぞ、僕を見んだぞ。」
「サキ様、クラノスを置いて逃げましょ。」
「なに言ってるですアサナ。あんな状態のクラノスを置いて逃げるなんてできないです。」
クラノスを見るように託すアサナ。
ハエでも追い払うようにサキ達に向かって手の甲を振るクラノス。
サキ達を追い払おうとしているのだ。
「あんなかっこいい姿見たらここに留まることなんてできないのよ。」
クラノスが傷だらけの血まみれになってでもここで食い止めようとしてるです。
だからと言ってです。ここで助けないのは仲間としてありえないです。
「でもですアサナ、助けないのです。」
「無理よ。」
「でもです。」
「無理なのよ、あんな巨体に今いる勢力だけで助けるのは無理なのよ。無駄死にするだけなのよ。」
「そうかもです、無理言ってごめんなさいです。」
「わかってくれたなら逃げるわよ、サキ様。」
「はいです。逃げるです。」
サキはクラノスを見捨てる覚悟を決めてその場を去る。
「ごめんなさいです。クラノス、後は任せるです。」
「頼むわよクラノス。」
アサナとサキはベビロトから逃げようとする。
「逃げようとしてるんだぞ。僕から逃げることは許さないんだぞ。」
「ふざけてるのはおまえだ。突然現れて好き勝手言いやがって、俺はあの人達に毎日無視されてんだ。それぐらいでそんなに怒るんじゃない。」
と怒鳴りつけるクラノス。
「うるさいんだぞ、おまえ。」
そう言ってベビロトはクラノスを何度も地面に叩きつけた。
その音を聞きながらもサキ達は逃げた。
「使えないんだぞ。」
そう言ってクラノスをサキ達の前に投げつけるベビロト。
クラノスはズタボロの雑巾のような姿となっていた。
生きてるなんて絶望的だった。
「クラノス、クラノス。息をして。お願いよ。」
「クラノス、嘘です。クラノス。」
サキ達の前にベビロトが現れた。
「俺の実力わかったかなんだぞ。」
ふざけないでよ。
ふざけないでです。
なんでもうここにいるのよ。
時間稼ぎにもなってないです。
「わかんないわよ、あんたのことなんて何にもわからないわよ。」
「アサナ、どうしたのです。」
「うるさいのよ、いいのよ。」
「アサナ。」
「わかったんだぞ。そこまで言うならやってやるんだぞ。」
そう言うとベビロトはクラノスを掴む。
「なにするのよ。」
「なにってこうするんだぞ。」
そう言うとベビロトはクラノスを空に投げた。
ベビロトはクラノスの上までその巨体をジャンプして持ち上げる。
「嘘よ、嘘よ。やめなさいよ。」
「やめてです。やめるです。」
サキがそう言うと額の七芒星が虹色に輝き出した。
するとサキはベビロトを吹っ飛ばした。
「どうなってるです。」
「どうなってるかわからないわよサキ様。」
サキの手にはクラノスが握られていた。
「それクラノスよね。」
「そうです。」
「無傷よ。」
「呼吸もしっかりあるです。」
サキはお姫様抱っこしているのは無傷の状態のクラノス。
「重いです。」
「そりょそうよ。ほら地面におろしていいわよ。」
そう言うとアサナは服を脱いでクラノスを置く場所を作った。
「良かったです。」
「良かったのよ。」
パピザトとキザトの二人はベビロトが飛んで行った方向へ向かう。
「あの巨体を吹っ飛ばすってすごいよな。あのこ。」
「そうお、恐いの。あんな強い人と対峙しなくちゃいけないの。」
それが恐いの。あのこを倒さないといけないって現実が恐いの。
「大丈夫だ、パピザト。俺様がパピザトは戦わなくてもいいように仕向けてやる。」
どの口が言ってるの。
パピザトはそう思ったがそう言ってくれるキザトのことが少しだけかっこ良く見えた。
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一方、ウノーラから逃げ出したナタレはというとロダランペラトル荘興国へと向かっていた。
「ナタレさん、今のすごい音なんだと思いますか。」
「わからないのね、隕石が堕ちてきたような音だったからね。」
「見に行かない。」
「行ってみるだけ行くのね。」
「いってみるだけです。」
「そうね。」
ナタレとミズキは音がした方へと向かう。
そして、ナタレとミズキが聞いたのは巨人が落下してきた音だった。
サキに吹っ飛ばされたベビロトが落ちた音だった。
「なんなのでしょう、この人。」
「巨人なのね、つまりは敵だと思うのね。」
「そうかもしれません。」
「そうなのね。どうすれば言いと思うのね。」
「殺してしまうのが言いと思います、ナタレ。」
「そうなのね、それでいいのね。」
「なにかないのね。」
「もう力は残っていません。すみません、ナタレさん。」
「そうよね。」
・・・
「やっぱり逃げるのね。」
「そうしましょう、ナタレさん。残念ですけどそうしましょう。」
そうしてナタレはベビロトの元を去った。
ナタレ達がベビロトの元を去って少し経つとベビロトは目を覚ました。
パピザトとキザトがベビーロトと合流した。
その時にはベビロトは普通の人の大きさに戻っていた。
「大丈夫ですの、ベビロト様。」
こんなに吹っ飛ばされたのに傷がないの。本当に化け物なの。さすがはハバロト様の双子の兄弟なの。
「見た感じ傷一つないし大丈夫だな。ベビロト。それで今回のことを上に報告しに行こう。」
ここまで強い人がいるなら報告すべき案件。
「そうなの、もうここにいたくないの。」
もう逃げるの。
「なにを言っているんだぞ。僕はまだここにいるぞ。」
力の差を理解しない人に構う暇はないの。
「ベビロト様お一人でここにいてくださいなの。」
「またな、ベビロト。」
そう言ってベビロトの側から逃げるパピザトとキザト。
「待つんだぞ、このベビロト。そんなこと許さないんだぞ。」
「わかった、パピザト。上に逃げよう。」
「そうなの。」
パピザトの瞬間移動の力とキザトの空を飛ぶ力の二つを使いベビロトを無視して星の外にある艦へと逃げ延びた二人。
「なんとか帰ってこれた。」
「ここにこれたの。」
艦の中に帰ってきた二人。
「あらパピコザト、キザト。ここでなにをしているのかしら。」
そう言うのは副艦長にこの艦団の軍司、アン。
「申し訳ありませんの、アン様。ご報告したいことがありますの。」
「報告とはなんのことかしら。言い訳じゃないかしら。」
「はい、アン様の言う通りあなた様達に増援を願いたくここにやって参りました。お願いします、アン様。」
「もうかしら、まだあなた達だけで十分だわ。増援は見込めないってことでいいかしら。」
「そうっすか。アン様がそう言うならもう少し頑張ってみます。報告書を書いてきます。」
「ふーん、そんなことする必要あるのかしら。」
そう言うアンは紫色の髪から白髪へと変わり九尾の狐の姿へと変わった。
「報告書なんて生ぬるいわ、今ここで鍛え直してあげる。二人構えなさい。」
「一つだけアン様に質問があります。」
「質問、そんなこといいから構えなさい。」
「いつからネックレスしなくなったんすか。」
ネックレスって今そんな話してる暇ないの、キザト。
そもそもアン様がネックレスなんてしてたときないの。
「なぜあんたがそんなこと知っているのかしら。」
動揺してるのアン様が、どういうことなの。
ネックレスってなんなの。
「これはあんたの娘のシズクの形見じゃないのか。」
「なんであんたがそんなこと知ってるのかしら。」
「こんな絵馬のネックレスしてる変わったやつに興味があったから良く遊んでた。まさかあんなことになるとは知らなかった。すまなかった、アン様。」
「あの日、シズクは友達と遊んでくるって言ってたでも男友達かどうかは否定してた。」
「それは心配させたくなかったんだと思うの。男友達と遊んでるのがバレたら怒られると思うの、それに心配されるって思うの。」
「そうかしら、嘘をついたとはいえないじゃないかしら。」
それが真実じゃないの。どうするの、キザト。
「遊んでたのは今言った通り本当。あの日乗っていた飛行船が墜落したのは俺のファンが起こしたことだ。すまなかった。」
あんたにファンなんていたの、知らなかったキザトファンに会いたくはないの。絶対に話し合わないの。
「つまりあなたのせいでシズクは亡くなったと言いたいのかしら。」
これヤバイの。
地獄の鍛練しないと行けないの。




