第118話 防衛者
塔は灯台のようになっており、内部は螺旋階段があり上のほうに全体を見回せる展望台の場所があり天井が5m上にありそこに階段で上がれる構造になっている。
サキ達は展望台の一周下にいた。
アサナは自分と同じぐらいのカバンを背負いながら先頭で後ろをたまに見ながら上に上がっていく。
サキは右手を壁に触れながら階段を上って行く。
そして、テンギネトラは前の二人を見ながら下を警戒する燃え盛るあのバッタが来ないか……。
展望台のような場所にやってきたサキ達。
そこは灯台であれば光を外へと届かす道具がある場所である。ここにはなにもない。
「ここってなんなんですアサナ。」
「ここは元々灯台だったよ。」
「灯台だったの、ここには必要ないと思うの。」
「それが必要なのよ。ここからなら山に光が送れるのよ。」
「そういわれるとここからならあの山に送れるの。」
「「それでどうなるの、です。」」
サキとテンギネトラの声が被った。
「あの山に文字が浮かぶのよ。それでメッセージを送ってたってお母様が言ってたわよ。」
「そうなの。」
「そうだったですか、なるほどです。」
「そんなことよりよ、今は燃え盛るモノ達を滅ぼすときよサキ様。」
アサナの言葉にサキとテンギネトラは絶句していた。
そして、つい笑い出してしまう二人。
「そうなのです早く上に行くです。」
「そうなの、早く行くの。」
階段を上がり天井を抜け屋上へとやってきたサキ達。
アサナは背負っていたカバンをおろしチャックを開ける。
中に入っていたのは狙撃銃であった。
「アサナさん、それ使えるの。」
「昔の私物よ。昔ナタレ様の下で働いていた時に使っていたのよ。」
「そうなの、サキさん。」
サキはテンギネトラの疑問に首を振って肯定の意味を表現する。
「それでサキさん、なんで私もここにいるの。」
「護衛です。」
「そうなの。」
「そうです。」
「サキさんはなんでここにいるの。」
「良くわからないです。」
「そうなの。変なこと聞いてしまったの。ごめんなさいなの。」
「いいんです、私が考え無しなだけです。」
「サキさんが考え無しとは思ってないの、心配して来たのかもしれないの。いつも心配してくれる人のために来たかも知らないの。」
「そうかもしれないです、信用してくれる人を見殺しにはできなかったです。」
「ちゃんとした理由があったの。」
「そうだったです。」
話し込む二人に注意を引くため咳払いをしたアサナ。
「どこにいるのよサキ様。」
「奥にある青い家との対角線のどこかにいるはずです。」
アサナは面白くないようにサキに言われた場所をレンズ越しに見るアサナ。
「見てみるのよ。」
「いましたの。」
アサナが見つけるより先にテンギネトラが見つけた。
「六人と座っているのが二人いるの。」
「それがそうです。」
サキが答えたその時アサナがため息をつきサキを見ながら声を上げる。
「見つけたわよ。どうするのよサキ様。」
アサナはサキにどうするか聞いたが申し訳なく思った。
サキに人殺しの片棒を担がせるように感じたからだ。
テンギネトラはアサナの言葉に残酷なことを言うのと思った。
「怒ってるですかアサナ。」
二人の不安を余所にサキはけろっとしていた。
「怒ってないわよ、それよりどうするのよ。」
しかし、サキは殺しの片棒を担ぐことの重圧を感じていた。
「・・・」
「いいです、全員殺してです。アサナ。」
アサナはサキの言葉に涙を流しそうになりながらも引き金を引いていく。
「うるさいの。」
「そういわれるとそうです。」
「耳栓してるわよね。二人ともしてるわよね。」
「してないの。」
「してないです。」
「・・・ごめんなさいなのよ。」
「「冗談なの、です。」」
「「ちゃんとしてるの、です。」」
「そんな紛らわしい冗談はやめてよ。」
話をしながらもアサナは引き金を引く。
燃え盛るバッタを生むもの達は混乱の中次々と倒されていった。
あとは座っていた二人だけとなったアサナは緊張が和らいでいた。もう少しで終わるという安心からくるものであるが一人は撃ち殺すアサナ。
もう一人は撃ちもらしたアサナの前にその者は来るがサキが守護の樹木で自分達を覆い被せて防御しテンギネトラが着物を上だけ脱ぎ左手を振り放った一本の葉っぱはサキの防御の隙間を突き進みその者の胸に当たり死に至らしめた。
安心したのもつかの間、凄まじい衝撃がサキ達に轟いた。
二人がサキの作り出した防御に蹴りを入れたことによるものであった。
「まだいたです。」
「無理。」
「これでもダメなのかよ。いいけどよ全部燃やせばいいんだからよ。」
まずい殺されると思ったサキ。
「逃げるです。」
「そうよね、逃げるわよ。」
「わかっててるの、アサナ行くの。」
アサナが先頭で下へと続く階段に向かう。
そんなサキ達を二人組は炎弾を放った。
「なるほどなの。」
「なにがなるほどなんです、テンギネトラ。」
「なんとかなるかもしれないの。」
「嘘じゃないわよね、テンギネトラ。」
「なんとかなるならしてほしいです。」
「やってみるの。」
テンギネトラは着物を脱いだ。
するとテンギネトラに葉っぱの翼が生え炎弾を放った二人組に葉っぱを放つ。
「そんなのでなんとかならないわよ。」
「そうです、一旦退却するです。」
そんな二人の声も届かずテンギネトラは二人組を攻撃し続けた。
アサナはサキに声をかけロダラン荘興国へと戻って行った。
テンギネトラも二人の後を追ってロダラン荘興国へと進んでいく。
炎弾を放っていた二人はテンギネトラの葉っぱにより倒れたが起き上がった。
サキ達はロダラン荘興国にいる人達にここは危険だからとどこかは逃げようと言い出した。
重症者とその人達を治療する人たちを置いてロダラン荘興国を地下通路を通じて後にするサキ達。
「なんで残ったの、テンギネトラ。」
「気になることがあるの、イレンも行ってもよかったと思うの。」
「ローザ様から任されたんだもの、最後までここにいるの。」
「そうなの。じゃあ出かけてくるの、イレン。また会えるといいの。」
「また会えるのテンギネトラ。」
別れを伝えてテンギネトラとイレンも別れた。
イレンも治療する人達に加わりに行くのだった。
テンギネトラはロダラン荘興国の屋敷内をくまなく探し隠し通路を見つけた。
ナタレがここに来たなら隠し通路を探してローザに会うことね、って言ってたの。
隠し通路を通じて進むと森に出たテンギネトラ。
森は霧に覆われており不気味な雰囲気で息を飲むテンギネトラの目の前にお墓が一個あった。
姫と書いてあるのはわかるの、名前の部分は欠けてて読めないの。
墓をテンギネトラが見ていると声をかけられた。
「あなたは誰、見かける顔をしてるのはなぜかしら。」
「あなたはローザさんですの。」
「そう私の名前はローザ、死んでいるけどこうして幽霊として存在してるわ。」
幽霊のローザは意気揚々と話すことに驚いたがテンギネトラはローザが驚くようなことを言い出した。
「あなたに力を貸して欲しいの。」
「どうすればいいわけ。」
「私を殺してください。」
なにをいっいるかわからずもう一度問うローザ。
「どうしてなのか聞いてもいいわよね。」
「そうすればこの体をローザさんが好きなように使えますの。イレンと同じ力を持つ人なら絶対にいいの方に向かうと思うの。だからお願いなの、殺してなの。」
「そうなの、それもいいと思うけど反対するわ。」
そう言うとローザはテンギネトラに口づけを交わす。
するとテンギネトラの中に実ができそこに自分の意志が入ってい供養な感覚に襲われた。
緑色の着物に白のボーダーが入ったものからピンク色の着物にボーダーが入ったものに薔薇の花びらが舞うようなデザインとなっている。右胸に一輪薔薇が刺さっている。
「これでいいわよね。」
「すごいの、こんなことできるなんてすごいの。」
テンギネトラが興奮して話すがそれはローザにしか聞こえなかった。
「あなたを殺すよりもこうする方がいいと思うわ。」
都合がいいと思うわ。
「ありがとうございます。ローザさん。」
「いいわ、お礼なんて言わなくていいわ。」
ローザは右胸にある一輪の薔薇を取り出し枯らせる。
するとテンギネトラは実から解放される。
「ローザさんいいの。」
「いいわ今さら実態には興味がないわ。それでどうしてここに私がいると思ったわけ。」
「ナタレさんに教わったの。」
そうナタレが教えたのね。あのこも大変なことになっているわね。
「そうなの、死者はそっとして欲しいのもだわ。」
「すみませんの。」
ナタレなあったらどうするかわからないから謝らないで欲しいわ。
「謝らなくていいわ、ただそう思っただけだから気にしてないでいいわ。それで手伝って欲しいことってなにかしら。」
「そうだったの、ロダラン荘興国が攻められたの。それでサキ達に助けてもらったけど治療すべき人が覆いの。それを手伝って欲しいの。」
ロダランの危機ならイレンが何とかするわ、サキ達がいるならなんとかなると思うわ。
「それだけならあなたはそんな顔はしないと思うわ。本当はどうしてなのか聞かせてくれる。」
それだけなら行きたくないわ、イレンに会いたくはないわ。
「ゾイフィア帝国の覚醒者が帰ってきたの。それを倒すにはあなたの力が必要なのローザさん。」
「わかったわ。死んでも静かにしてられないほど大変そうなことになっているみたいだしあなた達もいるってことは相当大変そうだからいいわ。手伝ってあげる。」
そのゾイフィア帝国の覚醒者もそうだけどここら残りがあるから手伝うわ。
そうして、ローザの意志が付いたテンギネトラはロダラン荘興国に戻っていく。