第113話 本当の本当と嘘2
「ナタレよかったのですか。」
城を出ていきなりミズキがそんなことを口にする。
「なにがね。」
ナタレはこのままでいいね。と言うべきか迷ったが疑問を口にした。
「ペルマム王国にもう出て行って本当にそれでいいのですか。」
「いいのね。」
ミズキは必死に語りかけるもナタレには響かなかった。
「コラル王にしっかりと報告できてないのに出て行っていいのですか。」
「いいのね。」
コラル王に報告が甘いと言われてギョッとするナタレ。
「抱き締めてくれた人はナタレにとって本当は特別な人だったと思うのです。あれが最後の別れになってしまうかもしれないのです。それでもナタレはいいというのですか。」
ナタレの反応を見て畳み掛けたミズキ。
ナタレはミズキの言葉にしばらく黙り込む。
ミズキの言葉を咀嚼し自分の中に落とし込むために。
「いいのね。」
「本当にいいのですか。本当に最後のお別れになるかも知れないのです。」
「うるさいのね。いいって言ってるのね。」
ナタレはハクタクのことをそんなに知らないミズキの過剰な言葉についカッとなってしまった。
「そう、なのですか。すみません、ナタレ。出過ぎたマネをしました。」
「いいのね。」
城を出てすぐのところでそんな言い合いをするナタレ。
そこへ一人のメイドが走ってやってきた。
「よかった、まだいました。」
「サフラン、どうしたのね。」
そんなに慌ててね。
「これの審議を確認してはくれませんか。ナタレお母様。」
「お母様ね、サフランもまだかわいいわね。」
サフランに渡された封筒の中にある紙を読むナタレ。
そこにはミネンがナタレに刺殺されたと書かれていた。
ナタレは首を傾げた。
「ミネンを殺したね。」
「はい、実際どうなんですかナタレお母様。」
「殺してないからね、サフラン。見たのは毒殺されてたくらいね。」
サフランの率直な質問に素直に答えるナタレ。
「刺殺って書いてありますけど、毒殺って本当ナタレお母様。」
サフランは死んだ瞬間を見てああなったと、なるほど。
「そうね。」
「本当に殺していませんか。」
納得できない。演技である可能性もあります。
ナタレお母様は、殺しても家族のためなら、そう割りきれる人だから。パラレ、元気にしてるかな。ナタレに聞いても分かりませんか。
「本当ね、ミネンを殺してないね。」
「本当に殺していませんか。」
「そうね。」
疑うわね、サフラン。前はあんなにかわいかったのにね。今では働いてる大人なのよね。
「違うみたいで安心しました。違うみたいですよ。」
誰かに向かってそう言うサフラン。すると影から一人出てきた。
「ナタレ、久しぶり。前は抱きついて悪かった。心配したが大丈夫そうだ。」
よかったとハクタクは嬉しさを露にした。
「そうね、もういいね。」
ナタレはハクタクを見るとそそくさと去ろうとする。
「待ってくれ、なぜ噂になった。毒殺ではなく刺殺で。」
ナタレは立ち止まった。紙にかかれた文はナタレ自身気になることであるから。
「ナタレさん。本当に毒殺されたのを見たのですか。」
「そうね、死んだかはわからないけどね。毒を盛られたのは本当ね。」
そうね、毒を飲んだと思うね。あれは毒だったね。
「そうでしたか。」
「大丈夫だったか。」
「見てわかるよね、大丈夫ね。」
ハクタクの言葉に冷たく対応するナタレ。
「そうだったか、よかった。それで本当にやってないのか。」
冷たく対応されたことにショックを受けながらもナタレのことを心配する
「やってないね。」
ナタレはハクタクにショックを受け落ち込む。
「そうか。」
そんな三人に一人のお調子者がやってきた。
「二人共ーー心配性ーーナタレちゃんはーー殺してなーーい。それはーー真実ーー。」
「アキリン。どうしたのねこんなところに来てね。」
やってきたお調子者のアキリンを見て笑顔になるナタレ。
「ナタレちゃんにーー会いにーーやってーー来ましたーー。」
そうなのね。
サフランは驚いてるわね。
ハクタクは両手を合わせて立て膝をして祈ってるね。
信仰神がいるんだからそうよね。
「彼ーーアキリン教の信仰者だったのーー。」
アキリンはハクタクが信者であったことに驚く。
「そうね、ハクタクは信仰者でね神父の一人ね。」
「えーー、あの宗教の神父ーー。ありえなーーい。」
「ちょっとね、アキリン言いすぎね。」
「そうーーごめんなさーーい。」
全然反省してないねアキリン。
「本当にナタレがミネンを殺してないのなら誰がやったのですか。」
ミネンをだれがやったかなんて分からないね、サフラン。
「使用人の誰かか外部の人間のどっちかね。」
必然だけどね、それ意外になにがあるのか気になるね。
「それはそうではあるのですがそこもっと詳しく考え、犯人を割り出したいのです。」
「なんでーー。」
「犯人を捕まえればコラル王様に給料あげてもらえます。」
ナタレとハクタクはサフランらしいと思った。
「サフランはーーそんなことーー考えてたのーー。犯人を捕まえたらーーナタレちゃんがーー給料あげてくれるかもーー。」
アキリン、それはないね。
「そうかも知れないのですナタレメイド長。犯人を捕まえた暁にサフランの給料。いいえ、使用人全員の給料をあげてください。お願いしますナタレメイド長。」
「それは無理ね。」
コラル王に頼めばもしかしたらできるかもしれないね。でもそれはね、サフランだけの話ね。メイド全員をあげるのは無理ね。
「そ、そんなこと言わないでお願いします。ハクタクさんからもなんか言ってください。」
「無理だと思う。」
「裏切り者。ここに連れてきたのは誰だと思ってるのです。」
自分できましたとハクタクは思ったがなにも言わない。
「サフランに連れてきてもらったのね、意気地無しの変態ならそうよね。」
そうね、ここまでハクタクが来る用事なんてないものね。
「違っ・・・」
「そうです、この人は城の裏門の前まで来ていたのに中に入らないでいたのです。それをここまで連れてきたのです。」
そうだったのね、それってあれがあったから来たのよね。
「へーー、そうなのーー。なんでーーそんなとこにハクタクがいたかーーナタレちゃんは分かるーー。」
「し、知らないね。」
「本当ーー。」
「本当ね。」
あれなのは分かるね。でもね、なんであんなことされたのかとね、あそこにいたのか分からないね。
「そうなのーー、でもーー知ってることはあるじゃなーーい。心当たりぐらいはーーあるんじゃなーーい。」
「心当たりもないものはないね。」
「そうーー。バイバーーイ。」
そう言って帰っていくアキリン。
なにしに来たのね、アキリン。
もしかして、本当に会いに来ただけなのね。
消化不良なナタレとサフラン、ハクタクは少しだけ安堵した。
「それでね、なんで裏門なんかにいたね。」
「ナタレに謝ろうと思ったが決心がつかなかった。」
そうなのね。
「ごめんなさいね、ハクタク。」
ハクタクを抱き締めるナタレ。
「心配させたね。」
「じゃあね、ハクタク。またね。」
そう言ってナタレはペルマム王国を後にする。
「ハクタクさん。もう、行くのです。」
サフランがハクタクに声をかける。
「行くってどこへ。」
ナタレの後をついていくのか、無理だと思う。
そうサフランに疑問視するハクタク。
「もちろん、ナタレメイド長の疑いをはらしに行くのです。」
サフラン自身か、城の誰かに頼むことだと思うハクタク。
サフランはなぜ、ハクタクに声をかけたのか。
「なら一人でやればいいだろ。城の中にいる他の誰かだっていいその人に任せればいい。」
ハクタクとナタレは似てる所なんてない。ってナタレさんがいったけどあるのです。
この人に頼むのです。
もしかしたらわかるかもしれないのです。
ナタレさんが探してる人も見つかるかもしれないのです。
「そこに半日も立ってる人がいたのです。その人を思って申請してきたのです。いらないのなら分かったのです。返してくるのです」
ナタレさん、ごめんなさい。無理だったのです。
「待ってくれ。わかった頼む。やらせてくれ。」
最初にそう言えばよかったのです。
・・・
ミネンの屋敷。
屋敷内な静かなものであった。
そこは血の海となっていた。六人いるミネンの使用人は全員殺されていた。
屋敷の中で水色のドレスを着た女性がサフランとハクタクの前へとやってきた。
その顔が分かるほど近づいてきた。
彼女はアキリンであった。手には血まみれの刀を持っている。
アキリンの姿であることもそうだが屋敷の有り様に騒然とする二人。
ハクタクがアキリンに叫ぶ。
「なにをしている。ここの者を皆殺しにする必要はなかっただろう。」
ハクタクが怒っているのかと疑うサフラン。
しかし、ハクタクは怒っている。怒ることにハクタクがなれていないだけである。
「なにがーー行けないのーー。こんなにも楽しいのにーー。」
右隣から声が聞こえた。
右を見るとそこにはサフランの胸からアキリンが持っているの刀が突き出ていた。
サフランは言葉はなにもできなかった。
サフランがアキリンの刀が抜かれ倒れた。
「サフラン、サフラン。しっかりしろ。サフラン。」
体を揺らして叫ぶ続けるサフラン。
そこへアキリンがハクタクの反対に座り笑顔で話しかける。
「その人はーーあなたのーー大事な人ーー。」
サフランを抱き締めながら睨み付けるハクタク。
「うるさい。」
「そうなんだーー。」
ハクタクの正面で座っているアキリンは立ち上がり剣を取る。
ハクタクはナタレの顔を思い出していた。
「うるさい。貴様のせいだろ。」
アキリンは袈裟斬りを放つ。
「スペアリンク。」
そうするとサフランは消え去り代わりに丸い半円を描くような刀が出現した。
その剣を持ちアキリンの刀を受け止めるハクタク。
アキリンの刀を流して首を取りに行く。
アキリンは分かっていたかのように避けた。
そうして距離を取ったハクタク。
ナタレ、ごめんなさい。あなたにもう一度だけ・・・。
「観ちゃいけない者をーーあなた達はーー見たーー。だから死ぬのーー。」
死ぬ覚悟でアキリンへ剣を構えるハクタク。




