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世界は一度終わっている  作者: 小松ちゃん
第二章世界樹 7節木獣とマルテトフ
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第112話 本当の本当と嘘

ペルマム王国へと帰ってきたナタレはミネンと剣を突き合わせていた。


ゾイフィア帝国に今もなお根に持つ二人であるがための対決であった。


初手はナタレであった。

ミネンの首に剣を突くがかわされてしまう。

そのまま下に斬り伏せようとしたがミネンの剣が自分の横腹に向かってやってくる。


それを無視して剣を下ろす。


キーンと金属が重なる音が響く。

ミネンがナタレの剣を食い止めたのだ。


剣を十字にして少しのにらみ合いをする両者。

ナタレはただ下へと振り下ろしていく。

徐々にミネンの顔めがけて剣が下がっていく。


ミネンは後ろに後退しナタレの剣から逃れる。


ナタレは突くために前傾姿勢でミネンへと飛びかかっていく。


ミネンならさっきと同じことをするねと安心しながら突っ込んでいくナタレ。


ナタレがミネンの間合いに入った時、ミネンが変わった動きをした。


下からの逆袈裟斬りをするミネン。

ナタレは驚きながらも左下から来るそれを左手で剣を持ち受け止めミネンの顔めがけて右手で殴り付けた。


刃を水平にしてミネンの顔めがけて突きつける。

そうすることで剣を固定できると考えたからだ。


ミネンはそのまま切り上げて回避する。

ナタレは後ろに下がる。

両者の睨み合いが再びされる。


一歩前進し、少しずつ距離を詰め寄ろうとしたとき、扉をノックする音が聞こえた。

「ミネン坊っちゃま、紅茶をお持ちしました。」

ナタレとミネンは剣を腰にしまい、ナタレとミネンはソファに座った。


ミネンがノックしたものに入るように託す。

扉から執事がやってきた。

扉をノックしたのがこの執事だとナタレは悟った。


「坊っちゃまこちら紅茶になります。お客様とお飲みになってください。」


そう言ってポットとコップをおいて執事は出ていこうとした。

「坊っちゃま、ここに立て掛けてあった剣を見ませんでしたか。」

「それならね、持ってるね。」

ナタレは自分が腰に差していた剣を見せて言った。

その剣をもとあった壁に置きソファに座り直すナタレ。


しかし、その目の前にはミネンが剣を指したまま座っていた。

ナタレはミネンを見つめる。敵意を露にしながら。


ミネンも剣を元あった壁に戻しソファに座り直す。


「お二人が持っていましたかでは私はこれで失礼いたします。」

執事はそう言って扉から出ていった。


二人の目の前にあるテーブルにある紅茶をミネンが二つあるカップに注ぐ。


入れ終わりミネンが一口紅茶を飲んだ。


「美味しいぞナタレ、お前も飲みなさい。」

ナタレはコップを持ち上げ匂いを嗅いで口に当てた所でテーブルの上に置いた。


「可哀想ね。」

そう言ってミネンの元を後にした。


城の前までやってきたナタレ。

「ミズキちゃん、あのまま続けてたらミネンとどっちが勝ったと思うね。」


「わからない。均衡だったから、でも今、生きてるのはナタレだからナタレが勝ったんじゃない。」

「そうかもしれないわね。」


城を見上げるように眺めるナタレ。


そんなナタレを誰かが後ろから抱きついた。

「やめてね、離してね。」

と抵抗する。

「嫌だ、離れたくない。」

そう声が聞こえる。ナタレにとって聞き覚えのある声だった。


ナタレは一瞬驚いたが抱きついてくるその手を振り払って城へと駆け出した。

ナタレが後ろを振り返ることはなかった。


一切後ろを振り返らなかったナタレの後ろ姿を眺める人が一人いた、それはハクタクがだった。

ナタレの夫であるハクタクが。そこにいたのだ。



城へと駆け出したナタレは城にあふる自室のメイド長室へと入っていきベットで枕を抱き締めていた。


そんなナタレの部屋にコンコンコンコンとノックする音が鳴り響いた。


ナタレは起き上がって扉の施錠を確認する。

「今行くから少し待っててね。」

声をかけてから顔を洗って服を着替えてメイクをしてから扉の施錠を外して外へと向かう。


そこにはコラルがいた。コラルはこのペルマム王国の王様である。


コラルに連れられ食堂へとやってきたナタレ。


朝食をコラル王と一緒に食べる。

基本的に従者は主とは一緒に食事はいないがナタレも例外ではない。しかし今日に限っては別である。

コラル王が勧めたためナタレは食べた。という印象である。

あまり食欲はわかないがメイドの中でも二番目に使えている時間が長く料理上手なウサギが作ったというので朝食を無理矢理にでも食べるナタレ。

そこへ横槍を入れるコラル王。

「順調か。」

ナタレは順調ね、と返した。美味しいというタイミングをとられて少しムッとした。

そういえばと思い立ってそのまま話を続ける。

「ベロニカにソリタゴ聖王国であったね、なにか使いでも頼んだのね。」

ベロニカ、と名前を言ってもいまいちピント来ない様子のコラル王。


「朝食、美味しいわね。誰が作ったのね。」

そうやって話題を変えるナタレ。


「喜んでいただけて嬉しいです、メイド長。」

ウサギが嬉しそうに言うがどこか他人行儀な態度に少し戸惑ったがメイドとして入りたての一番下の娘が喜んでいるのがわかり納得するナタレ。

その娘はウサギの娘の南であったからだ。


朝食を食べ終えたナタレはそれが真実かウサギに小声で確認するもはぐらかされたので本人に確認する。

「南がこれ作ってくれたのよね。美味しかったね。」

「そう南が作ったの、頑張って作ったから全部食べてくれて嬉しい。」

「.ありがとうね、南。」

頭を撫でながらそう言うとナタレはウサギに笑顔を向け食堂を退室した。


「ウサギ、南が言ったことは本当か。」

「申し訳ございません。」

ウサギはコラル王に向けて頭を下げる。


「なにをそんなに怯えている、別に怒ってるわけではない。」

本当と思ったウサギが頭をあげると笑みを浮かべて怒っているコラル王の姿があった。


怒ってる、コラル王怒ってますー。

ナタレメイド長ーカムバッーク。

そう思いながらも謝り続けるウサギ。

すみませんを三回言った所でコラル王が大声をあげて盛大に笑いだした。


「ワーハッハッハ、いやーすまなかったなウサギ。そんな怯えさせるつもりはなかったんだ。」

そんなコラル王を見る顔は一人もいなかった。

「今のあんたのせいで一人泣き出しちゃったわよ。」


「す、悪かったな南。大丈夫だ怖くない。」

他のメイドの影に隠れた南に必死にそう言うコラル王。


「本当。」

影に隠れていたらウサギに託されて声を出す南だがそこには不安の色が残っていた。

「ホントホント。」

「本当の本当に本当。」

「ホントのホントのホントにホント。」

「本当の本当の本当の本当に本当。」

「ホントのホントのホントのホントのホントにホント。」

ホントのとなかなか終わらない維持の張り合いをただ呆然と眺めるメイド達。

そんな中、ウサギに事態の収集をしてもらおうと一人のメイドがウサギに小声で声をかけた。

「あの二人、いつまでやる気だと思うウサギさん。」

「わからないけど、一日中やってるかもしれない。」

最初は優しく見守っていたメイド達であったが十分間もやっていられるとさすがに疲れてきたのであった。


「それは遠慮してほしいわ。」

「そう、面白くていいじゃない。」

ウサギの言葉に扉の向こうでクスッと笑う人が一人いた。

「どこが、早くやめてほしいくらい。もう二人ともなんの話してたか忘れてると思うし。」

「それは言えてる。でもあれどうやってやめさせればいいの。」

なに言ってるの、と冷たい視線を感じるウサギ。

「あんた片方の母親でしょ。それぐらいわからないの。」

「わからないから言ってるの。」

もうなにを言えばわからずメイド達は口を開けてポカンとしていた。


「冗談、です。」

「そ、そうよね。」

いつもはこんなことしないのにどうしたの南。



「ホントのホントの・・・ホントのホントにホント。」

「本当の本当の・・・本当の本当に本当だよ♪」

少しラップ調になったコラル王に恐怖を感じ、南の肩を叩き声をかけるウサギ。

「南、もういいでしょ。ご飯食べましょ。」

「うん、食べる。ありがとうおじさん楽しかった。」

「そうか、なかなかよかったぞ。」

「なに子供と張り合ってるんですか、そんな暇あったらブロッコリー食べてください。片付きません。」

三人の間にラフランが割って入ってきた。

好き嫌いせずに食べきらないとウサギ出ていけませんから。と思いながら早くしてとせかすラフラン。

「まだ、食べ終わってなかったの、あんなことしてるからてってきり。」

ウサギも呆れながら話をすすめる。

「食べ終わってる。」

「ブロッコリー残ってますけど。」

「食べ終わってる。」

「好き嫌いダメってママが教えてくれた。」

「はい、食べます。」

南の言葉でやっとしぶしぶブロッコリーを食べるコラル王。

コラル王が食べ終えるとメイド達に出すために部屋を出ていくウサギと南の二人。


「ナタレさん、どうしてまだいるの。」

「ちょっとね、ごめんなさいね。怖い思いさせてね。あいつには私が痛い目にあわせとくから頑張ってママみたいになってね。」


「うん。がんばる。」

「じゃあね、ウサギ。世話になったね。みんなにも感謝しといてね。絶対ね。」

そう言ってナタレは城を後にした。


メイド達は食堂ではなく侍女室で食事をとるためナタレを見たがそそくさと去ってしまう者がほとんどであった。

メイド達が食事も済ませ掃除をしていると訃報が届いた。


ミネンがナタレに刺殺されたという情報である。


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